静子は武田信玄軍を迎撃する新式銃器の開発を進める=「戦国小町苦労譚」14・15(アース・スター・コミックス)

2024年2月17日土曜日

歴史コミック

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 現役女子農業高校生が、戦国時代にタイムスリップして、持ち込んだ21世紀の器具や技術を駆使して、織田信長の治める尾張・美濃の農業生産や織田軍の武器のレベルをとんでもなくUPさせて、信長の「天下統一」を助けて大活躍する時代改変もの『夾竹桃・平沢下戸・沢田一「戦国小町苦労譚」(アース・スター・コミックス)』の第14弾から第15弾。


前巻で延暦寺の焼き討ちを行い、さらに小谷城へ立てこもる浅井勢に対し弓矢一本で城門を破壊して城兵を恐怖に陥れた静子だったのですが、今回は信長包囲網による圧迫が続く中、いよいよ甲斐の虎「武田信玄」が動き出そうとする先手をとって、静子の武田兵隊対策が動き始めます。


あらすじと注目ポイント


第14巻 静子は、武田信玄の上洛を前に、武田軍対抗策を考え始める



第14巻の構成は


第六十六幕 偵察

第六十七幕 革新

第六十八幕 刀剣

第六十九幕 不動

第七十幕  伝統


となっていて、冒頭では史実ではおよそ1年後に三河に侵攻してきて、徳川家康を戦死寸前まで追い込んだ戦いの地「三方ケ原」を視察している静子の姿から始まります。ここで武田軍は3万の兵を展開し、城から打って出た徳川家康軍を待ち構えるというのが史実なのですが、彼女は起伏の激しいこの土地で大軍を展開できる場所を探して入念に測量を始めています。


さらに、元込め型のライフル銃の開発・量産にとりかかるとともに、反射炉の建築を開始し、銃弾の改良にもとりかかっています。この当時、鉛玉を発射し、50~100mぐらいの射程距離の火縄銃が最新兵器であったのですが、一挙に鋼弾の連続発射でき、射程距離800強のるライフル銃を実戦投入する腹づもりのようですね。


目標製造数は、1年後に1000丁以上を目指しているようで、もし実現すれば、長篠の合戦前に、日本一の銃撃隊が出現することになります。


銃の製造自体は当時では想像もできない「分業制」によって製造されているので外部にもれる心配はなかったのですが、三方ヶ原の測量など変わった動きは他の有力戦国武将の注意を引くのは当然で、武田信玄も、上杉謙信も、静子を中心にした織田勢の状況の内偵を活発化させています。


そんな中、堂々と織田領にやってきて、「ありのままの静子殿の見分にきた」と広言してやってきたのが、「与六」こと、後年、上杉景勝の謀臣として、豊臣秀吉にも喧嘩をうった武将、直江兼続です。直江兼続は陰気な印象がつきまとう上杉景勝の側近として彼を支え、秀吉・家康に対抗して上杉家を守った知将あるいは「義」を重んじた人としてファンも多いのですが、家督相続の際の「御館の乱」では、北条家から養子に入っていた上杉景虎を追い落とし、武田家滅亡の種をまいてしまったことなどから後北条家ファンからは評判があまりよくない人ですね。


で、そんな彼が飲み友達となった前田慶次のもとへ泊まり込んで、上杉謙信の「目」となって静子の人となりや情報把握を始めることになります。


第15巻 武田信玄出陣に備え、静子の迎撃準備は着々と進む



第15巻の構成は


第七十一幕 共存

第七十二幕 威圧

第七十三幕 暗躍

第七十四幕 真珠

第七十五幕 意気


となっていて、前田慶次の屋敷にやっかいになり、静子の治める地の情報を細かに集め始めた与六は、当時の常識とはかけ離れた、主人と臣下同席の食事や、街道の舗装と整備、宿や街の情報を記した冊子の配布などの政策に驚愕する、という設定になっています。まあ、ここらはフィクションの良さというところなのですが、与六のもたらした情報が上杉謙信の統治にどういう影響をもたらしたか、はまた次巻以降になりそうです。


で、信長の天下布武のほうは信長包囲網に武田信玄が参画したことで反信長派が勢いづいていて、あとは信玄の旗揚げを待つばかり、といった様子なのですが、武田軍迎撃の準備を進める静子のほうは、プロペラ船の開発や、新型銃の生産、反射炉の建設による新型銃弾の開発・製造、と着々と準備を進めていっています。


そして、奇妙丸こと織田信忠の具足始の儀式を終わらせた後、浅井家の居城・小谷城攻めへと向かいます。この時、浅井勢から救援要請を受けて、いつもは腰の重い朝倉義景が1万5000の兵を率いて近江に参戦するのですが、干戈を交えることなく睨み合いの状態が続いていきます。


武田信玄の出陣が遅れる中、浅井・朝倉勢と織田勢との小競り合い的な睨み合いが続いていくのですが、この間に、静子の方は宣教師オルガンティーノに養殖真珠をプレゼントしています。この頃、ヨーロッパの王侯貴族の間では貴重宝石として人気ナンバーワンであったようで、オルガンティーノを通じて、ヨーロッパの宝石市場に食い込もうという作戦のようなのですが、単純な「商売」だけが目的とも思えません。当方としては、これから始まり武田勢、石山本願寺などとの決戦に備え、火薬の材料に必須の「硝石」の大量入手を目論んでいるのでは、と思うのですがいかがでしょうか。


レビュアーの一言


今回は第二次信長包囲網が形成され、武田信玄の出陣が期待される中、それを迎え撃つ体制を整えていく織田勢、特に静子と足満による新兵器開発がメインとなっていくのですが、合間合間に戦国期の「捕鯨」や、静子が養蚕業の改革や出産に関する意識啓蒙に励む姿が描かれています。


とりわけ鯨の舌をシャチに食わせる「鯨供養」のところは興味深いですね。鯨漁は日本各地で縄文時代から行われていたそうですが、大型の鯨を銛や矛でついて仕留める突き取り漁は1570年代の三河湾から行われたようで、静子の目撃したのはその魁のようなものだったかもしれません。

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