猟という根源的なものを描く=岡本健太郎「山賊ダイアリー」1〜3(イブニングコミックス)

2015年6月26日金曜日

アウトドア

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岡山に住む猟師兼マンガ家である岡本健太郎の私小説的猟師マンガで、アウトドアブーム、狩りブームと魁となったといえる「山賊ダイアリー」の第1巻〜第3巻。

「山賊」のいわれは主人公(筆者)が東京在住時、都会の彼女とデート中に、「いつか地元で猟をやりたい」と都会のフツーの女の子には禁句に近い言葉を発し、喧嘩の末、彼女から発せられた「さようなら、山賊さん」という捨て台詞が謂われのようです。


第1巻 東京からのUターン男子、岡山で猟を始める


第1巻の収録は


 第一矢目 初猟Ⅰ・空気銃

 第二矢目 初猟Ⅱ・ハト

 第三矢目 猟友会

第四矢目 猟友会Ⅱ

第五矢目 カラス討伐

第六矢目 スネークイーター

第七矢目 カラスを食べよう

第八矢目 共猟Ⅰ

第九矢目 共猟Ⅱ

第十一矢目 プチ遭難

第十二矢目 ヌートリア

第十三矢目 Sniping

禁猟期 栄養補給編


の14話。


東京から岡山にUターンし、狩猟免許をとって、猟デビューをして、という猟師生活の始まりの部分。

創業物語の一番面白いところは、「事業を立ち上げて軌道にのっかるまで」というのが私の持論で、こうした始まりの物語はどういう展開にせよ新鮮である。



おまけに「猟」をとりあげた本で、解体の時の動物の姿なども描かれているのだが、どことなくクールなタッチで、血生臭さや肉肉したところを感じさせないのが良いところ。



で、その生活は、というと毎日の罠の設置や空気銃での猟など、なにやらのびのびとしていて、「猟」というイメージがもつおどろどろしさは感じられません。しかも、獲った鳥などを美味しく食しているあたりは羨ましくはあります。


ただ、苦労は近所や家族の理解がないところ(当たり前か)で、解体もこそこそやらないといけないし、奥さんを始めとした家族の獲物を見たときの拒絶反応とか、まあ一般人なら普通そうだよな、という反応と戦わなければならないのは、「猟師」をやる以上当然の責務と謂うべきでしょうか


「猟」の本というと鳥や動物の解体写真やイラストなどちょっとどうかなー、と敬遠する向きもあるかもしれないが、ある意味、ゆるーい「猟師日記」なので、動物や鳥の苦手な人でも抵抗は少ないと思う猟師本であります。


第2巻 猟開始後の一ヶ月間の猟の相手はキジ、イノシシ


収録は


第十四矢目 ジョンとキジ猟

第十五矢目 イノシシ解体

第十六矢目 ヒヨドリ猟

第十七矢目 罠 Ⅰ

第十八矢目 罠 Ⅱ

第十九矢目 罠 Ⅲ

第二十矢目 スズメバチ駆除 Ⅰ

第二十一矢目 スズメバチ駆除 Ⅱ

第二十二矢目 深緑の霊鳥

第二十三矢目 銃砲店にて

第二十四矢目 実猟の射撃

第二十五矢目 三ツ足

第二十六矢目 鳥獣判別

第二十七矢目 ギン、逃げる

第二十八矢目 師匠


で、第十四矢目が2009年11月で第二十八矢目が2009年12月となっていて、ほぼ一ヶ月の話。猟師仲間も増え、始めはキジバトぐらいだった猟果もイノシシ、キジ、ヒヨドリ、カモ、カラス(?)と種類も増え、空気銃に加え、罠猟も始めるという初年度から飛ばし気味の猟師生活である。猟ばかりでなく、駆除を頼まれたスズメバチ(もっともハチノコを食しているから、これも猟といえば猟か・・・)のおまけつきでもあります。


こうした狩猟にせよ釣りせよ、「収穫」話が楽しいものなのだが、収穫成功譚を詰め込んだこうしたコミックを読んでいると、自分も、不思議と簡単にできそうな気がしてきて、おもわず心が揺れ動くのだが、いやいや、待て待てとあわててブレーキをかける。

「旅行にしろアウトドアにしろ、計画を立てているときが一番楽しいものなのだ・・」と自分を言い聞かせているところ。


まあ、こうした「狩猟生活」というのは、なにやらワクワクさせるもので、狩猟、釣りといった趣味が、綿々と続いているのは、人間の根源的な「原始本能」に根ざしているところがあって、同じ自然生活といっても、菜園とか農業とかの「育てる」ものとはまた違うものであるような気がします。


第3巻 鹿を狩って年を越し、年初の猟はヌートリア、鳩、カラス



収録は

第二十九矢目 探索
第三十矢目  シカ
第三十一矢目 シカの解体と調理
第三十二矢目 外来種を食べよう
第三十三矢目 狩猟免許
第三十四矢目 銃猟所持者の心得
第三十五矢目 踏み出し
第三十六矢目 燻製を食べよう
第三十七矢目 新年
第三十八矢目 ヌートリア
第三十九矢目 午後の出猟
第四十矢目  ハト南蛮
第四十一矢目 カラス討伐Ⅱー1
第四十二矢目 カラス討伐Ⅱー2
第四十三矢目 カラス討伐Ⅱー3
禁漁期 栄養補給編Ⅱ

となっていて、この巻の最後のほうでやっとのこと年を越します。


猟の腕前は、さすがに出猟日数が多いので着実に上達しているようである。この巻の最後のほうではカラスの駆除を頼まれたりしているし、獲物は罠によるシカ、キジなどな、肉をどう食すかというあたりも増えてきているのが、その証拠でしょう。

途中、ブルーギル、ヌートリアという「猟」の範疇とはちょっと外れるような外道っぽいのが混じるのも、「猟」ということに「慣れて」きたせいかも。


午後の出猟のところでは、トラブルにあって夜の冬山に取り残されることにも遭遇。他の本を読むと夜の山中は不思議な出来事が起こるようなのだが、そんなこともなく帰還できたのは僥倖というべきかもしれません。


ほとんどが「猟」「猟」「猟」たまに「獲物の料理」といった内容なので、薬味を続けて食しているような気がしてくるのが辛いが、最近の「狩猟」や「鳥獣被害」といったものを抵抗なく読まさせてくれるのは絶好のコミックではあります。

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