図書館舞台のふんわかとした話の数々。当然、殺人はなし。 ー 埜納タオ「夜明けの図書館」1〜3(双葉社)

2015年6月9日火曜日

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 「図書館」は、ミステリーの舞台になることは結構あって、例えば「れんげ野原のまんなかで」 (創元推理文庫)とか「図書館の死体」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)などなどあるのだが、コミックで図書館を主の舞台として取り上げているのは、寡聞にして「図書館の主」ぐらいしか頭に浮かんできません。


このへんは、静的な有り様が常である「図書館」という一種、聖域的な存在が、「文章」による叙述の舞台としては向いていても、「絵」による表現の舞台としては動きが少なくて描きづらいということに起因しているのかもしれません。


そこのあたりを踏まえながら、図書館の新米司書を主人公に前述の「れんげ野原の・・」のような静謐で心なごませるような物語を紡いでいるのがの埜納タオ「夜明けの図書館」シリーズです。


ひとまず1巻から3巻までのところをざっくりとレビューしておくと


第1巻の収録話は


「記憶の町・わたしの町」

「第2話 父の恋文」

「虹色のひかり」

「今も昔も」


第2巻の収録話は


「ありがとうの音」

「男子の自立」

「こおろぎや」

「笑顔のバトン」


第3巻の収録話は


「はじめてのレファレンス」

「ヨウコの迷言」

「石森さんの腹の内」

「第二の人生を歩く」


となっていて、舞台は地方都市暁月市の市立図書館が舞台。


数年の就職浪人やアルバイト生活を経た後、やっとのことで図書館司書となった「葵ひなこ」を主人公にして、職場の同僚、上司と図書館に訪れる人の様々なトラブルや困り事の解決をしていきながら、司書として成長していく物語、といった感じでまとめてしまうと、ありきたりの少女の成長物語になってしまうのですが、彼女の性格ゆえかトラブルもまあ、ほんわかとした仕上がりになっています。


もともと図書館が舞台なので、凶暴であったり、凶悪犯罪を企んでいたり、といった危なげな人物は登場することは想定されていなくて、ここらあたりは文化的でハイソなところがステージであると、やはり穏やかな筋立てになるのは無理もないところなのでしょうか。


そして、軽めの謎解き物には、巻を重ねるにつれ単発の話をひねり出してくるのが辛くなるのか続き物の話になることが、多くて閉口することがあるのですが、それぞれに話がほぼ独立して構成されているのは高評価ポイントです。


掌編ミステリーの筋立てをあれこれ書くと営業妨害になるので、それぞれの話は本書を買って読んで欲しいのですが、登場する町の人々も、よくある町のいつもの人たちで、図書館の人たちもそこらの公務員。ではあるのですが、なにかほっとするような話が展開しているので、少し心が「ささくれて」いる時におすすめのマンガです。

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