織部正は「豊徳合体」に向け、秘策を繰りだすのが・・ = 山田芳裕「へうげもの 十二服」(講談社文庫)

2019年4月8日月曜日

へうげもの

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 茶人大名「古田織部」を主人公に描かれる歴史マンガ「へうげもの 十二服」(講談社文庫)では年代的には1606年8月から1608年3月までの約2年間がとりあげられる。

 関ヶ原の戦から6年後、大坂冬の陣の6年前ということで、大きな歴史的な事件はないものの、陰では、豊臣家側と徳川幕府側が、主導権を巡って争っていた時代を描くのが今巻で、時代の閉塞感が漂う中、織部正の怪しげなたくらみと「へうげ」の数寄が炸裂していきます。


【収録と注目ポイント】


収録は


第百七十一席 KIMIGAYO

第百七十二席 卒業[feat.YUKI-S]

第百七十三席 SEA SIDE BOUND(Go bound)

第百七十四席 I still love O

第百七十五席 失恋餐館

第百七十六席 若くなくて純真じゃない時代

第百七十七席 史上最大のTABOO

第百七十八席 死して屍拾う者なし

第百七十九席 Jana Gana Mana

第百八十席  有楽斎で逢いましょう

第百八十一席 旅姿一人男

第百八十二席 僕の好きな老師

第百八十三席 SEXY SEXY KING

第百八十四席 We feel FREE

第百八十五席 泣くなベイビー

第百八十六席 けだもの来たりて


となっていて、天下を揺るがすような出来事はないものの関ヶ原で西軍が敗北し、徳川幕府の二代目の秀忠に譲位され、徳川主導の歴史の流れは否定しようもなく、「真面目」で「へうげ」嫌いの徳川家康、秀忠親子の考えが静かに浸透をはじめていて、その分、秀吉好みの「派手さ」にどっぷりつかった人々の鬱憤がたまりつつあるのは間違いない。


それが噴出したのが、織田有楽斎の次男・左門率いる「皮袴組」などの「傾奇者」たちの乱暴狼藉で、このあたりの傾奇者同士のいざこざを鎮めたり、自分の勢力下におこうとする古田織部の息子の動きなどは、当方の若い頃に流行った「本宮ひろ志」のマンガを思い出させる展開でありますね。


そんな中で、時代が「くそ真面目」な方へ変わっていくのを、ただ座して受け入れる「織部正」であるわけもなく、大どんでん返しの企みとして、「豊徳合体」である。それも、豊臣家二代・秀頼に、将軍秀忠の娘を嫁がせるといった生半可なものでなく、徳川家康とお茶々をくっつけてしまう、という奇想天外な企みなのであるが、これがうまくいくかどうかは歴史的な事実はおいといて、「茶の湯」に対する、豊臣と徳川の考え方の違い、具体的には、本書中の「林羅山」の

茶室はそれを学ぶ修行道場となるべき 

つまりは「茶の湯」」などという曖昧なものでなく

「茶道」と化すべきかと

という言葉に対し、「織部正」は

変幻自在、融通無礙

かような「茶の湯」で良いのでござる

と応じています。両者の主張がそれぞれ全く相容れないところをみると、豊臣と徳川は、「水と油」のように交わらないどころか、「水にセシウム」のようなことになってしまうこと間違いないような気がしてくるのだが、どうでしょうか。


【レビュアーから一言】


戦乱から遠ざかりつつある時代なので、この「へうげもの」シリーズで特徴的な、「えっ」と驚くようなえげつないエピソードが無理やり挿入されてくる回数も減ってしまうのだが、病気で気が弱くなった近衛信尹の快気祝いの席で供されるのが、「現代のカレーライスであった」といった事実かどうかわからぬ逸話が、「ほいっ」と挿入されてくるあたりは、まだまだ「遊び心」が健在です。


通説的史観ばかりにふれていると、頭がカチカチになってくるのでいけない。「へうげもの」の山田芳裕的「史観」を混ぜ込んだほうが、バランスが取れてくるような気がいたしますね。

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