関が原は、茶人大名をどう変えていったか ー 山田芳裕「へうげもの 十一服」(講談社文庫)

2019年4月6日土曜日

へうげもの

t f B! P L

 数寄大名として戦国末期から江戸初期にかけて一世を風靡した「古田織部」を主人公にしたマンガの講談社版の文庫の第11弾。

 千利休といった先人の死や、戦乱を乗り越えて、風格を増してきた「織部」なのであるが、関ヶ原という時代の景色を大きく変える事態を迎え、そのスタンスもなにかしら、権力者の望む姿と離れていく姿を描き始めているのが今巻である。


【収録と注目ポイント】


収録は


第百五十四席 September Rain

第百五十五席 横綱トリッパー

第百五十六席 Flying Sohsho

第百五十七席 グリーンスパイダー

第百五十八席 ぼくたちは失敗

第百五十九席 H jungle with T

第百六十席  星屑の記憶

第百六十一席 千年のごとく

第百六十二席 名物は買わない

第百六十三席 イシダイシダ

第百六十四席 Forget Me not

第百六十五席 アイ・ラブ・ユー、OF

第百六十六席 パラダイス京都

第百六十七席 Samurai,Pottery & Violence

第百六十八席 feels So-AN good

第百六十九席 TOUCH BOYS

第百七十席 North windy lady


となっていて、時代的には、1600年9月14日から1605年6月までの間の物語なので、関ヶ原の戦、徳川家康の征夷大将軍の就任、二代目徳川秀忠が征夷大将軍位を引き継ぐといった、安土桃山時代から、江戸時代へと移っていく時代である。

時代が変わっていく時は、いつも負けた人々に多くのものを残すようで、関ヶ原に乗じて天下をうかがっていた黒田如水が、東軍勝利で徳川の支配が揺るがないと見ると、「良い土」のでる土地の領有して、そこで「良器」を焼いて利を得ることを目論む場面で

戦なき世の武器とは数寄ぞ

多くを見方につけたくばよう心得ておけ

と徳川の時代での「新しい勢力の伸ばし方」を示唆したり、東北の支配を企んだ伊達政宗が引き続き攻め続けることを選択し

徳川に対抗していくにはよぉ

あの大久保長安って野郎も巻き込んで

うなるほどの金銀銅を持つ事だたぁ思わねェか!?

と徳川の時代でなお、天下を狙ったり、西軍についた毛利輝元が

「己が領地を守り天下を望むなかれ」・・・・

元就公よりの家訓に背き、大阪にて指揮まで執ったことが・・・

今度の敗因よ

と、自家の現在の「力」を超えた背伸びの反省をしたりと、様々なこれからの生き方を見せてくれていて、先行きの見えない現代における生き方においても、なにやら示唆的ではありますね。


そして一番示唆的なのは、刑死した石田三成から遺志を託されそうになって、

負けぬわ

断じて負けぬ

石田兄弟に義理なぞない

重責伴う豊臣の行く末なぞ誰が背負うか

と激怒するも、織田有楽斎から

(石田三成が)斬首される直前に放った言葉を覚えておるか

「干し柿は痰の毒」と申し、役人を笑わせた由

あの男が最期に数寄を解しておったことを窺わせん

言葉の裏まで案ぜよ

その干し柿とは、美濃産のお前(織部)の事ではないのか? 

と指摘される古田織部の姿が、危険を感じつつも、古き時代を背負わざるを得なくなった「文人大名」の「悲しさ」を見るようでありますね。


【レビュアーから一言】


「へうげもの」の時代観は筆者独特のものがあるのだが、通説が切り捨ててしまった「怪しげな」ところと併せて、「力強さ」も未だ遺しているのは間違いない。

 教科書的なものを期待してはいけないが、この時代の持っていた「熱さ」と数寄者大名・古田織部の覚悟のほどの「数寄」にかける熱情を感じ取れますね。 

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