エトナ山の噴火の調査の後、カティアの町滞在中に、皇帝ネロによってローマに呼び戻されたプリニウス一行、居心地の悪さを感じながら送るローマでの生活が描かれるのが本巻。
当時、世界有数の大都市であったローマの街の様子が細かに描かれているので、そのあたりも今巻の魅力であろう。例えば、最先端技術であった「水道」であるとか、プリニウスの従者・フェリクスの家族の住む「インスラ」と呼ばれた高層アパート、あるいは盛り場の裏道に死体が転がっているなど、当時の雰囲気のある描写が続きますね。
【構成と注目ポイント】
構成は
8.チェトラ
9.フェリクス
10.トラステヴェレ
11.ゲルマニア
12.プラウティナ
13.インスラ
14.ポッパエア
となっていて、ローマへ召喚されたプリニウスが、皇帝・ネロの主催した音楽会で「大あくび」をして不興を買うのだが、そのプリニウスの前で
「私の存在を煙たがる人間を排除していくことでしか自由を感じられないんだ」
とうそぶきつつも、
「人間などしょせん矮小なものだという事を私に知らしめてくれぬか」
と弱音をはくあたりに、傀儡として皇帝となったネロの孤独を感じさせます。
さらに、このあたりの鬱屈が、ローマ大火やセネカを始めとした側近の処刑などの「粛清政治」を生むもとになっているものと推測されます。アルメニア戦線の指示を聞かれるところで、「ブリタニアでの戦」はセネカがいたから良い判断ができた、と怒鳴るあたりに積もり積もった賢い側近たちへの「コンプレックス」を感じます。
そして、今巻の注目ポイントは、これから「ネロ」の精神に大影響を及ぼし、キリスト教徒への憎悪を作り出した原因ともいえる、ブリタニアの女性奴隷「プラウティナ」が登場。
彼女の「儚げ」な感じが「ネロ」の本当の好みなんですかね。プリニウスの書紀・エウクレスも一目惚れなので、一般的に「男」はこういうタイプに弱いのかもしれんですね。
ネロの后で、貴族の女性の典型であるポッパエアとはかなり雰囲気が違います。こちらのほうは大輪の「牡丹」という感じで、これはこれで惹かれる人は多いとは思います。ただ、ネロの正妻でもある「オクタヴィア」の殺害を企んでネロを唆(そそのか)すなど、かなり「毒」も持っているので、注意が必要ですね。
【レビュアーから一言】
本巻の最期のほうで、フェリクスへ再び従者を頼んで、プリニウスが、再びローマから出ようとする。ローマの空気が喘息によくなくて病状が悪化しているというのだが、「博物誌」的な放浪癖が再燃したというところもあるのでは、と邪推する。
フェリクスが、再びたびに出ることを渋る彼の家族に、プリニウスが彼の留守中、プリニウスの家に住むよう便宜を図るが、これが吉と出るか凶と出るかは次巻以降の展開です。
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