家康は豊臣を着々と追い詰める。織部正どうする? ー 山田芳裕「へうげもの 22服」(モーニングKC)

2019年7月14日日曜日

へうげもの

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 いよいよ、大坂冬の陣の豊臣方と徳川方の戦闘が始まった1614年12月から、冬の陣の戦後処理が終わった1615年3月までが描かれるのが本巻。

史実でご承知のように、大坂冬の陣で和睦条件をのんだ豊臣方を騙して、外堀だけでなく、二の丸・三の丸の内堀を徳川方で埋めてしまうという悪辣なやり口で家康の不人気を確定させた戦後処理なのですが、この陰に秀忠の苦悩があったり、豊臣方が叛意を失っていなかったり、と歴史に埋もれてしまった「秘史」が描かれている巻でもあります。


【構成と注目ポイント】


構成は

第二百三十一席 SURVIVOR
第二百三十二席 巨人軍の譜
第二百三十三席 HITORI
第二百三十四席 2人の新世界
第二百三十五席 JUST DO IT.
第二百三十六席 Art School Men
第二百三十七席 A HAPPY LAND
第二百三十八席 桂ドリームランド
第二百三十九席 ラブレターズ
第二百四十席 男どアホウ乙紙面
第二百四十一席 父よ貴殿は強かった

となっていて、まずは真田丸での攻防戦からスタート。

ここらはが真田軍の「蝦蟇の戦車隊」をはじめ、茶々の方も籠城戦での心構えと気概も「わらわは幼き頃より、籠城戦を肌で知っておる」といった風に十分意気盛んで、ここらだけをみると「豊臣やるじゃん」という感じなのですが、徳川方の大筒の砲弾を天守閣に打ち込まれてしまいます。

流石この場面に至っても、お茶々の方は

この程度で臆しておっては

家康亡き後の天下とて仕切れぬわ

天守にフランキ砲を備えるがよい

といった風に強気な様子を見せるのは、賤ヶ岳に始まって戦国を生き抜いてきたファーストレディーの「面目躍如」というというところです。しかし

襟足が乱れておる。母上・・・

決して人前で乱した事なき襟足が

と秀頼に内心の動揺を見抜かれてしまい、これが徳川との和睦のきっかけになるのは史実どおりなのだが、豊臣方の女性が怯えて、ということではなく、母親や周囲の女性の気持ちを慮った秀頼の優しさ故、とするのは、「へうげもの」ならではの解釈でありますね。

ただ、このあたりを秀頼の行動を「野暮」とするか「へうげ」とするかは、古田織部でなくては判断できないところでありましょうね。


この徳川と豊臣との和睦の条件の一つが、国替えなどでなく、城の堀の埋め立てなのですが、本書によれば

何故、秀頼の国替えや茶々の人質を求めなんだかわからぬのか?

いずれかを求めれば

国の選定や屋敷の普請を理由に、一年二年と待たされると察したからよ

といった解釈がされています。


もし豊臣秀頼が大和とかへの転封を承知したり、茶々を人質として江戸へ滞在させておけば、豊臣家存続もあったのでは、という説もあるのだが、豊臣家の引き伸ばし策を封じ込めるため着々と自軍の手で堀を埋め立てたり、前巻で、すべての「武人」と「ひょうげもの」を始末すると言っているので、存続はちょっと無理な話であったのでしょうね。


もっとも、秀忠と古田織部は「明くる年はひょうげた年になるよう、それがしも負けてはおられませぬで」と、「ひょうげ」の世界を共有してきているので、家康がほんの少し早く死んでいたら歴史は変わっていただろう、という説は頷けますね。


【レビュアーから一言】

本巻の最後で、俵屋宗達の「ぼかし」を駆使した墨絵の見事さに打ちのめされた岩佐又兵衛が、新境地を開くために、大阪城へ入ろうと京都の織部屋敷を抜け出すシーンで、又兵衛の父親の荒木村重の姿を伝え

残念だが、お前に父の生き方は無理よ

敵にへつろうとでも己が欲に従い、

傑作を描くまで生き延びるは・・・な

というあたりは、織部正の何があっての生き抜いて「へうげ」を実現するのが第一という芸術感、人生観を現していますね。

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