大阪夏の陣前夜。織部の願い虚しく豊臣方の陣営乱れる ー 山田芳裕「へうげもの 23服」(モーニングKC)

2019年7月16日火曜日

へうげもの

t f B! P L

 大阪冬の陣が終了し、戦後処理にあたって和約に反して堀を徳川方が埋め立てるなど、次の戦争に向けて着々を手を打っていく徳川家康。今巻では1615年3月から1615年4月までのほぼ2ヶ月間が描かれる。たった2ヶ月間であるのだが、大阪夏の陣の勃発戦となる「道明寺・誉田合戦」が5月に起きているので、最後の大戦前夜、といった風情であろうか。


【構成と注目ポイント】

構成は

第二百四十二席 夏なンです
第二百四十三席 カム・トゥゲザー
第二百四十四席 俺たちのGOLD
第二百四十五席 岩の庭
第二百四十六席 僕の瞳はマリンブルー
第二百四十七席 男のこころ
第二百四十八席 クーデター倶楽部
第二百四十九席 不敵なラブリーボーイ
第二百五十席 ジェラシー
第二百五十一席 さだめ河

となっていて、まずは徳川方が次の戦に持ち込むための策を着々を講じているところからスタート。

前巻のレビューの最後のほうで、仮に徳川家康がもう少し早く死んでいたら、豊臣家の命運も変わったかもね、ということを書いたのだが、

こちらの思わく通りに、動いてくれたわ

私の足腰がなまらぬ内に・・・な

といった家康の言を見ると、とにかく時分が生きているうちに片付けてしまおうという意思がありありで、豊臣家はむしろ家康にうまく嵌められていった、というのが正確なんであるな、と世間の説に納得する。


豊臣方も、この家康の腹づもりがわからないほどのバカではないのだが、傾奇者を集める「旗頭」として期待していた、織田左門が父の織田有楽斎から

お前には、俺の地が流れておるのだ

貫くを嫌う血が・・・な

己を野暮と知る家康の方がお前より余程粋人よ

と言われ、自分の「へたれ度」の大きさに気づいて戦意喪失してしまうなど、先陣の乱れがどんどん大きくなってしまいますな。
さらに、織部正は、家康・秀頼対談をまだ諦めたいないという具合に、なんとか豊徳融和を図ろうとしているのだが、息子は徳川方への叛意を抱き始めるという具合で、豊臣方の亀裂はどんどん大きくなっていく。
ここらあたりは、三河以来の結束を誇る徳川方との「思想」の違いがよくわかるところなのだが、最近の「大阪府構想」などを始めとした動きをみると、「豊臣」というよりは「大阪」の持っている乱雑なエネルギーが原因なのかもしれないですね。


さらに、こうしたエネルギーの暴発は

エゲレスでは女子の王が窮地を救ったという

秀頼が心許のうなくなるまでは・・・

この衣の猛獣が如く、一縷の弱みも見せぬわえ

という茶々の様子にも現れていて、彼女が身にまとっている豹柄の打ち掛けが、「大阪のおばちゃん」のファッションと重なって見えるのは当方だけではないはず。


話の方は、織部正に頼まれた秀忠、高台院(北の政所)、西国大名たちの説得で、家康・秀忠対談が実現しそうになるのだが、これをぶち壊しにしたのが、織部正の息子・古田山城守の「家康が出陣する直後を狙い、これを襲撃する」という企みであったところは「親の心込知らず」といったところでしょうか。

これが原因で、織部正本人に家康暗殺の謀略の一員である疑いがかかるのだが、もともと織部正が嫌いな家康としては、大喜びというところでしょうね。


【レビュアーから一言】

正史では、ここまで豊臣方をとことん滅ぼしたのは、家康が徳川幕府の安泰を強く望んだためということになっているのだが、ちょっと異説的なところでは、本巻で明智光秀ゆかりの寺を訪れて、彼が、織部正を評価していたということを知って「断じて認めぬ」と激昂するあたりに、本音のところが隠されているかもしれない。

「へうげ」が性に合わない家康としては、織部正の「へらっ」とした笑い顔を象徴する「安土桃山文化」をとことん消し去りたかったのかもしれないですね。

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