美濃・斎藤家の落ち武者から国持大名にまで出世したのに、自らの突出によって島津との戦に敗戦して改易。一家離散のどん底から再び国持大名まで出世。さらには徳川二代将軍のときには「秀忠付」に任命されるなど徳川幕府の重鎮となった「仙石久秀」のジェットコースター人生を描く「センゴク」シリーズの第4Seasonの第5巻
秀吉の「西国平定」の大きな節目の一つである「四国平定」が描かれるのに加えて、秀吉の関白就任のエピソードが中程に挿入されるのが本巻。
織田信長と張り合い、長期戦が予測されていた四国攻めが、長宗我部のあっけなともいえる「降伏」で決着した「理由を解き明かしてくれる「目からうろこ」的な仕立てが楽しめるとともに、秀吉の関白就任は、もともとは公家の間の主導権争いが発端で、秀吉が漁夫の利を得た的な印象があるのだが、実は秀吉の「日本統一」を目指す中で重要な「戦」であったことを教えてくれる、歴史秘話的な仕立てにもなっているのが本巻の特徴ですね。
【構成と注目ポイント】
構成は
VOL.32 宿命
VOL.33 網場
VOL.34 餌
VOL.35 解
VOL.36 関白
VOL.37 海部
VOL.38 評定
となっていて、まずは豊臣秀長を総大将とする14万の大軍が四国へ上陸するシーンからスタートするのだが、注目しておくべきは、これを迎え撃つ長宗我部元親・信親が轡を並べて語るシーンで、「かつて、細川京兆家は天下で隆盛を極めた。その理由がこの瀬戸内を制したゆえだ」「畿内との貿易ですね」と語らった後
そこに南海路をつなげたらどうであろう。
畿内、四国、九州、果ては明まで繋がりまする。
そう、四国は大高坂を中心とする貿易大国となる
ということで、どうしても農業や工業を中心とした生活をしていると「地面」を中心に考えてしまいがちなのだが、「四国」を大貿易国として彼らはとらえていたのか・・・と膝を打ってしまいます。たしかに、長宗我部の出身地である「土佐」の立地を考えると山地にへばりつくような田畑よりも大海原に乗り出すことを考えてしまうのでしょう。その発想の自由さに感心してしまいますね。
で、そんな長宗我部元親が考案する「対豊臣」の戦略は
羽柴・毛利勢はあまりに強大
小さな「箱網」に追い込むこと能わず
此度に網は、より大規模な「網場」に追い込むことを想定してもらいたい
といったイメージのもの。具体的には
各将が堰となり、敵を網場へ流し込み
予が白地城より兵を出し、各個撃破する
川狩りにて、羽柴・毛利の翼をもいでいく
というもので、各砦で羽柴・毛利軍を食い止める城将たちを犠牲にしながら、順番に元親の近くに攻め込む毛利・羽柴軍を各個撃破していくというもの。それぞれの城将は長宗我部軍の後詰めもなく滅亡覚悟の戦いをするわけで、長宗我部本体のために自らを犠牲にするもので、元親への信頼が厚くなければとても成立しない作戦である。さらに、その犠牲のあり方も、砦で頑強に抵抗して全軍討死というものから、
幾らか粛清すれども
まだ説得しきれておらぬ
願わくば、もう一日
と、裏切る風にみせかけて降伏交渉を長引かせ豊臣軍を引き止めたり、さらには実際に裏切った態をとって豊臣軍を長宗我部軍が待ち構える地点まで誘導しようというものまで、多種作用な「犠牲」の作が練られ、仕掛けられているのだから、これは豊臣軍の軍師・黒田官兵衛も堪りませんな。
で、この長宗我部のしかける「罠」から豊臣軍を救うのは、センゴクのあまり深く考えていない発言の数々で
どんなもこんなも
とにかく引地の合戦の時ゃ
攻め取ったはずが、気付いたら囲まれとった
といった言から白地城へおびき寄せる「網場の計」を、さらには、裏切った東条関兵衛の先導で本国土佐を攻め入る南下策も
途上の支城をすっとばかしていくってことは
海から中入りすると?
という発言で、実は長宗我部の貿易の拠点で商人兼海賊の根拠地「海部」へおびき寄せ一挙に襲う作戦と堪兵衛が見抜いています。そして、こうした考え抜いた策が次々と崩壊したのが、長宗我部が無条件降伏をした原因でもあるので、四国征伐の一番の功績者はセンゴクかもしれないですね。
そして、都のほうではこれと並行して「公家」との戦いが勃発しています。発端は、秀吉の「関白」就任で、これを機会に彼を取り込んだり、劣等感を抱かせて、朝廷の権威を借りた公家たちのパシリとして使おうという企みなのだが、ここは身分とかに関係なく実力でのし上がった「秀吉」の剛腕が発揮され、エラそうに献上してきた宮中の官職に関する解説書に対して
平仮名にしてくれるかいの
読めんかったら
たき火にくべるしか、役に立たにゃーで
とかましてみたり、宮中の席次争いに見事な裁定を下したりして
秀吉政権は形骸化した関白職に
軍事的裏付けを加え
実の伴う権力へと発展させる
と、軍事政権からの脱皮を見事に果たすわけですね。ただ、このあと、戦場で功績をたてた馬廻りの武将とあわせて、石田三成、大谷刑部などの文官についても昇進させているのだが、秀吉にしてみれば、紀州勢や長宗我部との戦いも公家との戦いも同列という意識なのだろうが、現場と本社との亀裂を生んでいく兆しがこのへんに現れてきているように思えるのですが、いかがでしょうか。
【レビュアーから一言】
四国と京都のふたつの「戦場」でのそれぞれの戦いが描かれる本巻なのだが、注目しておくべきは、長宗我部の企みに気づいた黒田寛兵衛と蜂須賀小六が、宇喜多秀家に長曾我部軍から逃げるよう勧めるところでの
小六と勘兵衛には暗黙の同意があった
この両将は「出世しすぎること」の危険性を熟知している
といったシーン。どちらの武将も、織田、豊臣、そして徳川へと続く政権交代を生き延びていくことに成功するのだが、このへんの嗅覚が発達していたことも関係していたのかもしれないですね。センゴクのように猪突猛進で進んでいくことに不安を覚える方々は、この二人の用心深さを学んでおくのも、ビジネスの世界で生き延びていく手のの一つになるかもしれません。
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