いよいよ設楽原で織田と武田激突。その結果は = 宮下英樹「センゴク天正記 」4

2019年10月30日水曜日

宮下英樹ーセンゴク天正記

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美濃・斎藤家の落ち武者から国持大名にまで出世したのに、自らの突出によって島津との戦に敗戦して改易。一家離散のどん底から再び国持大名まで出世。さらには徳川二代将軍のときには「秀忠付」に任命されるなど徳川幕府の重鎮となった「センゴク権兵衛」こと「仙石久秀」の戦後時代一のジェットコースター人生を描く「センゴク」シリーズSeason2の第4巻。


前巻で織田と武田との勢力図を大きく変えることとなった「長篠の戦」が開始。酒井忠次の奇襲作戦が不発に終わる中、いよいよ織田信長と武田勝頼が雌雄を決する「設楽原」の戦闘が今巻では描かれます。


【構成と注目ポイント】


構成は


VOL.30 逆さ魚鱗

VOL.31 山県隊突撃

VOL.32 真田の本懐

VOL.33 鉄砲戦術

VOL.34 大殿の行方

VOL.35 仙石真田激突

VOL.36 治左衛門の願い

VOL.37 ハタボコ

VOL.38 一斉射撃

VOL.39 敵なし源四郎


となっていて、まずは信長軍が武田軍とした設楽原で対峙する場面からスタートするのですが、武田を指揮する勝頼がとったのは、鶴翼の陣に模した魚鱗の陣である「逆さ魚鱗の陣」。山県、馬場が囮となってそこへ集中する敵中央の守備を中央突破して包囲する、というものです。この策にのって山県昌景へ全兵力を集中させた徳川家康や馬場信春に対峙する佐久間信盛に向かって武田軍の牙が剥かれます。


ここで、戦国時代後期から安土桃屋時代にかけて癖のある動きをする真田家が歴史の表舞台に登場。今巻では大河「真田丸」の主人公・真田幸村のおじさんとなる真田信綱が登場ですね。彼らの標的は我らが主人公「センゴク」です。  


戦闘のほうは、武田軍随一の強さを誇る「赤備え」の山県隊が出動。明智光秀の考えた、設楽原の田畑を利用した天然の障子塀を使った殺し間などの秘策を講じるのですが、天下の赤備えには通じません。さらに真田信綱も猛攻もあり、センゴク隊は、将来の奥さんの父親・野々村の鉄砲隊の加勢があるが押しまくられる状況が止められません。ここで真田の攻めで落馬したセンゴクは

来いや、真田ぁ

と昔ながらの蛮勇を取り戻すのですが。これが彼の真骨頂ですね。


最初の乱戦のさなか、信長は単騎で陣中を視察して「若手寄騎衆が全滅したとて、けして助けてはならぬ」というセンゴク隊などの先陣を見捨てるような命令を鉄砲五奉行のみに出すのですが、このへんの真意は原書で確認をしてください。全体勝利のためのかなり冷酷な判断ではあります。


武田の真田隊はその勢いのまま、信長本陣へ向かっていきます。本書の感じでは、かなり「熱い」武将のようなので、信長の冷徹な戦略に乗せられた感はありますね。もっとも、その踏み台に使われたセンゴクたちこそ、いい面の皮ですが・・・。

ここで、藤吉郎はその時、信長の本陣近くの「ハタボコ」に布陣しています。

さらには、記録には残っていないが、光秀も長篠の戦に参陣していると筆者は推測していて、その光秀は織田の鉄砲五奉行と同じところに布陣。伸び名が本陣をめがけて丘を乗り越えた侵入してくる武田軍を、織田の鉄砲部隊が見下ろすように待ち構えている、という感じですね。


信長軍の狙いは、信長本陣を囮に、センゴク達の先陣を撒き餌にして勢いをつけさせ、くぼ地へ誘い込んで高所からの一斉射撃による殲滅戦で、おびきよせられた武田の真田、内藤隊は、秀吉、光秀、鉄砲五奉行の一斉銃撃により壊滅するか、味方が犠牲になっている隙に逃亡せざるをえなくなります。


丘陵に阻まれて自らの目では確認できないのですが、真田・内藤隊の異変を感じとった山県は、勝頼のもとへ向かいます。

山県は勝頼にある言葉を伝えるつもりであったようなのですが、その彼を根来衆の銃弾が打ち抜いて阻止します。


狙ったほうの根来も、山県の勢いに恐れをなしてのおっかなびっくり狙撃したのが鞍に跳ね返っての着弾なので、このへんの武田軍の運のなさが表れているかもしれません。この山県昌景が何を伝えたかったかは、原書でしっかり堪能してください。結構感動的であります。


【レビュアーからひと言】


設楽原での敗戦を目の前にして、信玄を支えた四将・山県、馬場は

わからぬか、若武者よ

そうよの、常勝の汝らにはわかるまい

我ら老臣の失敗は・・・

若者に失敗をさせなかったことよ・・・

といった反省をもらしています。

これは偉大過ぎた「信玄」が招いたものでもありますね。信玄は勝頼の統治者・武の棟梁としての成長の可能性を見誤っていたのかもしれませんが、勝頼が陣代ではなく、大将としての指揮が可能になる体制ができていれば、この長篠の戦、設楽原の戦闘も別の結果があったかもしれません。

ただ、常勝武田軍がかえって次代の足かせになるとは誰も予測できないことではありますね。

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