信長軍は播磨、本願寺を降し、いよいよ一統への道へ = 「センゴク天正記 」11・12

2019年11月16日土曜日

宮下英樹ーセンゴク天正記

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 落ち武者から国持大名へ、その後、戦で大敗北して改易。そこから復活して、徳川将軍家の相談役まで昇進した戦国一のジェットコースター人生をおくった「センゴク」こと「仙石秀久」の半生記が描かれる宮下英樹の「センゴク」シリーズのSeason2「センゴク天正記」の第11巻と第12巻。


前巻までで三木城の離反、荒木村重の謀反といった、織田の西国攻めの足元を揺さぶる事態に苦戦を強いられていた織田勢なのですが、一転して攻勢に転じることになります。


【構成と注目ポイント】


まず、11巻の構成は


VOL.100 不合理な戦略

VOL.101 武功の機

VOL.102 風雨の中の夜襲

VOL.103 上津の領主

VOL.104 力攻め

VOL.105 理想の国

VOL.106 一蓮坊への約束

VOL.107 肚の中の約束

VOL.108 不合理な生き物

VOL.109 稀代の軍師


となっていて、センゴクは羽柴秀次隊とともに上津城攻めに向かいます。上津城を守るのは坊主上がりの井上一連坊という人物だが、彼が意外に骨のある武将です。


半兵衛は病気療養をしているのですが、秀吉に彼の理想の国とする「惣無事の国」を語ります。これが後に秀吉の政策の中心となったような気がします。


上津城攻めのほうは、この城に三木城の城主・三木長治の長子が匿われていることをセンゴクがつきとめ、この子、兵、民衆の安堵を条件に城を明け渡すよう井上一連坊と交渉するのですが決裂し、一連坊は還俗し、秀吉と対峙します。センゴクと一連坊が、その闘志の火を互いにつけあったという構図でしょうか。

このため、城に籠もる城方とセンゴク勢との間で、がっぷり組んだ攻城戦が展開されます。もちろん、三木城の干殺しの戦法を体験した秀吉軍の攻め方なので、力押しに押すだけではなく、青田刈りを含めた兵糧攻めも併用した総合戦ですね。この戦の最中に秀吉軍は重要な人物を喪ってしまうのですが、そこのところは原書で。


これに続く12巻の構成は


VOL.110 不惜身命

VOL.111 城主の本懐

VOL.112 蘇る鉄血

VOL.113 恨みもあらず

VOL.114 十年の合戦

VOL.115 先見の明

VOL.116 合戦か和平か

VOL.117 流転の民

VOL.118 愛別離苦

VOL.119 石山本願寺の最後


となっていて、前巻の上津城攻め以降、包囲陣を敷くセンゴクのもとへ、上津城の守将・一連坊から、自らの命と引き換えに、別所長治の長子、民衆、兵の命を助け、城を明け渡す、という申し出がやってきます。なぜ、センゴクの当初の降伏勧告を断り、今回、降伏を受け入れたかは、原書のほうでご確認を。そして、センゴクは、このまま上津城を預かることとなります。


その後、織田軍は、信長包囲網を寸断し、とうとう荒木村重は城と家族を捨てて逃亡。本シリーズではおびえて逃げた様子になっているのですが、「へうげもの」シリーズでは、茶器の名品等を抱えて、風流に殉じての逃亡のように描かれていたように思います。まあ、逃亡には変わりはないわけで、数年後に秀吉のお伽衆として復活するのですが、武将としてはもう終わりですね。


そして、三木城の兵糧も尽き、城兵と民衆の助命と引き換えに、城主・長治が一族もろとも命を絶ち、三木城は陥落することとなります。もともと三木一族を謀反に誘導した重臣の三木賀相は最後まで抗戦を訴えるのですが、こうした精神論優先の人物が先導しても、あまり良いことはないような気がします。


この播磨の攻略を成功させた後、信長は、最大の仇敵「本願寺」へ矛先を向けます。ここで、なぜ信長が多くの犠牲を払いながら、本願寺と加賀を支配下にいれようとしたかのカラクリがわかります。それは

北陸、石山の一向衆の駆逐は

織田家にとって

はるか唐より北陸〜大坂までを結ぶ

大水運の完成も意味していたのである

ということのようですが、彼の戦争が、まさに「経済のための戦争」「銭をまわすための戦争」というものであったことがわかります。この点では、荒木村重が謀反を起こす前に指摘したことはあながち間違っていない気がします。


さて、本願寺攻めのほうは、光秀の朝廷工作を通じて和睦の使者を出させるのですが、それまでの朝廷や公家たちに対する扱いがかなりいい加減になってきます。どうやら、信長はこの時点ではすでに朝廷の利用価値に見切りをつけていたような感じですね。

 そして、和睦の使者を受けて、本願寺内は、和睦に傾く顕如と、徹底抗戦を主張する教如の勢力に真っ二つに分かれます。しかも本願寺の民衆の声は

外んでて、根無し草になって枯れ死ぬより

ここで玉砕したほうが、ナンぼかマシでさ

といった感じで、信長へ降伏することには反対です。この顛末がどうなったかは、原書のほうでご確認を。


【レビュアーからひと言】


12巻の最後のほうで、朝倉義景が織田勢に滅ぼされた後、義景の娘の侍女として、本願寺に身を寄せていた「お蝶」が再登場します。本願寺の降伏で、また落人になる境遇になります。

彼女は主人である義景の娘を

えることは

一度より二度目、二度より三度目

状況は変わらずとも

痛みには慣れて

和らいでいくものです

と慰めています。

考えてみれば、彼女は当初仕えていた斎藤家の稲葉山城が信長によって陥落され、その後、朝倉、本願寺と彼女が行く先々が、織田勢に蹂躙される運命を辿っていて、あまり運の良い女性とはいえないですね。彼女が、これから逃れる先にも、織田勢の影が差してくるのでしょうが、なんとか幸せをつかんでほしいものです。

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