秀吉の中国攻めのさなか、本能寺の変前夜へ= 宮下英樹「センゴク一統記」1・2

2019年11月22日金曜日

宮下英樹ーセンゴク一統記

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 落ち武者から一国持ち大名になりながら改易、それからさらに復活という戦国時代随一の復活劇を演じた仙石秀久こと「センゴク」の一代記を描いたシリーズのSeason3「センゴク一統記の第1巻と第2巻。


前のシリーズで、戦国時代一の強兵軍団の武田家を攻め滅ぼした織田信長なのだが、いよいよ、戦国時代の最後を飾る「本能寺の変」とその後が描かれるのが本シリーズなのだが、この第一巻と第二巻は、本能寺に至るまでのお膳立て、といった位置づけである。


【構成と注目ポイント】


構成は、第一巻が


VOL.1 仙石権兵衛秀久

 VOL.2 秀吉の視界

 VOL.3 大綱数百本

 VOL.4 舟の上にて

 VOL.5 光と影

 VOL.6 淡路国主

 VOL.7 三職惟任

 VOL.8 隙間三町


となっていて、まずは本シリーズのセンゴクの登場シーンから。彼は、現在、備中高松の冠山城攻めに取り掛かっていて、このセンゴク隊に伊賀の忍びの残党が加わることになります。前シリーズでも根来の鉄砲打ちや、淡路の海賊であるとか、今回の伊賀の残党であるとかが味方してきたように、つかみどころのない輩がついてくるのがセンゴク隊の特徴でありますね。


 冠山城の攻め方は「水の手を切る」という方法を採用して、本来は、城内の水を干してしまおうというものだが、反対に水がセンゴク隊側にあふれてくるという失態が発生。まあ、この水の道を使って城内へ攻め入ることに成功するので結果としては成功なのですが、予期しない戦闘になるのが、センゴクの持ち味というところかもしれません。


信長の日本統一のための次なるターゲットは「毛利」で、毛利を東から織田、西から大友、島津で攻めるというものなのですが、この作戦の場合、四国からの邪魔が入らないことが必須となります。このため、淡路を抑えておくため、センゴクが淡路の国主(見習い)に抜擢されることに。


センゴクは、とうとう一国の大名となる道をつかんだということで、大出世の開始ですね。


毛利へターゲットを定めていることに並行するように、朝廷は信長に将軍位を進めてきますが、信長は断ります。断られて安土から帰ってくる公家たちへの光秀の言葉が小綱湯的ですね。


信長は朝廷の役職には高い優先度を感じていません、織田の「高転び」を防止するためには、新たな「戦場」「マーケット」をつくるため、日本の統治は息子・信忠に任せ、自分は日本を出る意向なので、その足かせになりそうなことは排除しておきたい、ということでしょうか。その信忠の補佐役に、家康を就けるつもりなのですが、スカスカになった日本統治の補佐役に就くことを家康が喜んでいるかどうかは疑問の残るところですね。このあたりの信長の朝廷対策と海外雄飛の詳細は原書で確認してくださいな。


そして、続く第二巻の構成は


VOL.9 饗応の間

 VOL.10 高転びの因果

 VOL.11 清水宗治の使命

 VOL.12 備中高松城水攻め

 VOL.13 淡路国海賊衆

 VOL.14 行く道のその先

 VOL.15 払うべき犠牲

 VOL.16 衝動

 VOL.17 信長上洛


となっていて、ここでは、信長・光秀の、織田の高転びを防ぐ方法と、それに対抗する黒田官兵衛の考案の対比が注目されます。


信長と光秀の「高転びをしない方策」分析によると、彼らは、大内、尼子に着目しています。大内が博多をおさえ西国一の勢力へ成長したのに対し、尼子は美保関をおさえ台頭したのだが、当初は「大内」優位。その後、大内が衰退し、尼子が後を継ぐも衰退の道をたどった理由を、日本国内だけではなく、広く中国文化圏の中の「銭の流通」の面から、解き明かしているのが興味深いですね。詳しいところは原書でご確認よろしく願います。


これらの反省の上にたった「織田の貨幣(銭)政策」は

 ・精銭令を徹底し、銭の品質を安定化させる。これにより、金・銀の相場も安定する

 ・ただ、日本全国の金・銀の流通量はまだ少ない(これは当時一番栄えていた朝倉の一乗谷も同じ状況。他の地方はもっと流通していない)

 ・日本を統一すれば、中国貿易などで銭が流出し、銭が回らなくなる。

 ・銭を回すためには「外征」しかない


というもので、これが豊臣秀吉の唐入りのもととなっている感じがありますね。


これに対し、黒田官兵衛が秀吉に上申する経済政策は高転びを回避し、外征も不要にする策で


・銭不足に対し、「米」を銭貨とする

 ・大名の入れない土地の検地、武士の所有する刀以外の武器の没収による、米の増収と安定統治を実施

 というもので、こちらは徳川家康の政策に似通っていますね。

 この段階では、豊臣秀吉も信長・光秀の外征案ではなく、官兵衛の案に賛同しているので、ここらは「天下人」になって考えに変化があったのでしょうか。


話のほうは、秀吉の備中高松城攻めが本格化してきます。ここの備中高松城主・清水宗治も、「渇え殺し」の鳥取城主・吉川経家と同じで毛利から派遣された主将で、この地の有力国人・三村親成は「彼は何かを隠している」と宗治を信用していない状況にあります。ここらは、鳥取城と同じ感じで、織田のような権限集中型でない分、つけこまれる余地は残っていますね。

 隠しているのは、毛利の謀将・小早川隆景が授けた「毛利の滅亡を防ぐ秘策」なのですが、これを受けて清水宗治が三村ほかの国人衆を操る手口は見事です。


戦のほうは、秀吉は、城の周囲の高地の隙間を埋めて砦をつくり、高松城全体を取り囲む「堤」を完成させます。長引く雨で増水する足守川の水を引き入れて水攻めにするつもりです。史上有名な「高松城の水攻め」ですね。


意図を見抜いた毛利軍は秀吉との決戦を決断するのですが、実は、ここにも秀吉の謀略が隠されていて、といった展開なのですが、その詳細と四国に渡ったセンゴクの戦果は原書の方で。


【レビュアーからひと言】


秀吉が備中高松城攻略を進める中、信長は中国攻めに自ら乗り出すために、京都・本能寺に入ります。信忠は本来であれば、家康と一緒に「堺」に行くはずだったのですが、森乱丸の進言で、京都に居残ることにします。

 このへんが、信長に家康暗殺の意図があったといった説が出てくる理由でもあるのですが、本能寺の変で、信忠も討たれ、織田宗家が廃絶状態になる原因にもなっています。真相のところは「森乱丸」に聞かないとわからないのでしょうが、彼の進言がなければ、織田家の命運も変わったものになっていたかもしれません。

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