勝頼は上杉の家督相続で下手をうち、ケンは本願寺への潜入を企む = 「信長のシェフ 27」

2020年7月28日火曜日

信長のシェフ

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 現代からタイムスリップをしたフレンチのシェフが、織田信長の専属料理人となった上に、彼の命を受けて信長の前に立ちはだかる様々な難題を「料理」によって解決していく「信長のシェフ」シリーズの第27巻。


前巻で、自分と同じタイムスリップしてきたコックの望月の手がかりを探して、毛利の村上水軍のもとへ潜入しつつも、何の手がかりも得ることなく帰還したケンであったのですが、新たな手がかりをつかむため、本能寺へ逃れている、現代では恋人同士であった「ようこ」への再接触をするための計略を巡らし始めるのが本巻。                          

【構成と注目ポイント】


構成は


第222話 本当の自分

第223話 南蛮の思惑

第224話 家康への褒美

第225話 勝頼の苦悩

第226話 ケンの入る家

第227話 猶子(ゆうし)の条件

第228話 香りの一皿

第229話 講話の使者


となっていて、今巻の最初は天正6年の上杉謙信亡き後の越後で起きた跡目争いである「御館の乱」のところからスタートします。


上杉謙信の姉の子である景勝と、北条家から養子に入った景虎との争いですが、ここに武田勝頼が絡んできます。もともとは北条家に頼まれて上杉景虎への加勢に来たはずなのですが、景虎と和睦し、自分の妹を輿入れさせることによって景勝が勝利する糸口をつくることとなります。


さらに、徳川家康の跡取りである「信康」を武田寄りに引き込んでいたのですが、家康の妻の築山殿が家康の家臣によって殺害、信康は謀反の疑いをかけられて切腹、という「信康自刃事件」が起きます。この事件は、信長が家康の勢力を弱めるために画策したという説も有力で、「信長を殺した男」あたりは、これを支持するのですが、「信長のシェフ」のほうは、武田の調略にかかった信康を家康と彼の家臣が未然に始末した、という考えですね。嫡男を始末して落ち込む家康の心を慰めたのは、信長に派遣された「ケン」の「空秋鮭と根菜のオジャ」だったという筋立てです。


武田勝頼は、信玄没後、遺領をまとめて再び力を蓄えることに成功しつつあったのですが、この二つの事件で下手を打って、北条、徳川という二大勢力を敵に回してしまったことが、後の武田家滅亡の端緒となったように思います。


一方、丹波を平定して、信長の信頼をますます厚くする光秀。この丹波の土地は昔から地侍の勢力が強い上に、京都にも近いため平定と統制が難しいところなのですが、光秀は丹波の福知山を治めて、名領主と領民から慕われています。彼の軍事だけでなく、政治家としての才能の優秀さを知らせてくれるところですね。


で、この平定後、光秀は九州の貿易商・堀田から、イスパニア・ポルトガルが日本にやってきている本当の理由を知らされます。倭寇として「海の王国」をつくっていた中国人・王直が南蛮人たちの手によって滅ぼされたところで、光秀は「生の情報」を知ったのだと思います。


そして、その「生の情報」には、キリスト教の布教という名目でやってきている宣教師たちの隠されたもう一つの目的も知ったはずなのですが、このあたりは本書のほうで。このへんの隠された南蛮人の目的が、本能寺の変の原因につながっていくような気配です。


さて、後半部分は、ケンやようこと一緒に戦国時代にタイムスリップした現代人・望月を探すための手がかりを得るため、再び「ようこ」に会うため、本願寺の内部にケンが潜伏しようと画策します。このための便宜を図ってもらうよう信長にお願いするのですが、まんまと信長の「本願寺との和睦」をするための先兵とされてしまいます。やはり、策略では、信長のほうが一枚も二枚も上手ですね.


【レビュアーからひと言】


「本願寺」に潜入するために、ケンは信長によって、公家の「猶子」にさせられてしまうのですが、その時に公家側から出されたテストが、いくつかの香木を焚いて香り当てをする「組香」という雅やかなゲームです。ただ、これに使う「香」が単純に香木の「粉末」を使うのではなく、漢方薬や香料を練り合わせたものを使うあたりが、公家衆の教養自慢と底意地の悪さを感じてしまうのは当方だけでしょうか。もっとも、この危機も、ケンが「料理人」の才能で切抜けていくあたりに相変わらずの爽快感を感じることができます。


なお、この「組香勝負」で縁組に反対する勧修寺家をおさえて、ケンを猶子にするのが「近衛前久」です。この人は戦国武将たちと張り合って、朝廷や公家の権威を上げようとしていた、当時の公家の中の風雲児で、信長の天下統一や本能寺の変にも深くかかわった人物らしいので要チェックですね。

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