こうして光秀は反逆者になった = 藤堂裕「信長を殺した男」8

2020年11月6日金曜日

信長を殺した男

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 「本能寺の変」は、明智光秀が、信長のイジメに逆恨みしたか天下が欲しくなったかした後先考えない衝動的な犯行で、その後、信長の仇をとって天下を平和に導いたのが、豊臣秀吉であった、といった通説に真っ向から反論している明智光秀の子孫を名乗る「明智憲三郎」氏の著作をコミカライズした、「信長を殺した男〜本能寺の変 431年目の真実〜」シリーズの第8弾で最終巻。


前巻で信長を斃した「本能寺の変」の後、織田の宿将たちの反撃が起きるまでに、朝廷や畿内の混乱を収めようとする光秀と、秀吉のまさかの「中国大返し」やイエズス会の宣教師たちに動きがえがれていたのですが、いよいよ、畿内に取って返した秀吉軍と討ち死にした織田信忠の弟たち、神戸信孝ら豊臣・織田連合軍との大激突となる「山崎の合戦」など、光秀最後の戦いが描かれます。


構成と注目ポイント


第8巻の構成は


第42話 山崎の合戦

第43話 天王山

第44話 敗走

第45話 明智光秀

第46話 戦国時代

最終話 歴史の継承


となっていて、まずは、日和見で有名な筒井順慶の「洞ヶ峠」のところから始まります。


光秀は裏切りにあう


本書では、秀吉の嘘と甘言で光秀を裏切ったことになっているのですが、今村翔吾さんの「じんかん」によると大和国を手に入れるため、裏切りと謀略を重ねた武将という側面ももっていて、単純な解釈は気をつけないといけないですね。当方としては、戦況判断のほかに、興福寺や延暦寺といった寺社勢力の影響も考えたいところです。延暦寺の焼き討ちには、光秀の関与も大きかったことがこのシリーズでも描かれていて、寺社勢力は光秀を警戒していたような気がします。このへんが戦国の世を終わらせ、平和な世の中をつくるため、本能寺の変までは信長の右腕として、「旧勢力」と戦ってきた光秀の弱点でもありますね。


光秀の大逆転は大誤算


しかし、細川幽斎、筒井順慶、中川清秀(この人の息子が豊後に所領をもらったのが、佐伯泰英さんの「吉原裏同心」の神守幹次郎の旧藩である岡藩ですね)などの裏切りにも関わらず、光秀は起死回生の逆転打を用意しています。それは「大山崎」の集落で、織田軍を裏切る予定の高山右近と協力した大逆襲だったのですが・・という筋立てです。


しかし、ここでも大誤算。右近は光秀に味方することなく、光秀方の斎藤利三軍は手痛い敗北を喫してしまいます。このへんは、「宣教師黒幕説」をうけた推理になってるのですが、ここは「陰謀の日本中世史」の記述とあわせて読んだほうが公平かもしれません。


光秀、謀反人になる


この敗北がもとでずるずると退却を迫られ、最後は、土民たちによって討たれてしまう、というのは史実にあるところなのですが、本書では、破れたとはいえ、家康の参陣を待って反転攻勢を考えている光秀を討ったのは、近隣の土民ではなく、待ち伏せをしていた細川勢ではないか、という推理をしているのですが、少々「陰謀論」っぽい臭いもするのですが、面白い推理ですね。これが真実なら、秀吉の策略はたいしたものです。


さらに、光秀は期待していた徳川家康の援軍も、北条氏政が混乱に乗じて旧武田領であった甲斐へ介入する動きがあったため、この牽制で出兵が遅れます。なにやら北条勢が悪者のように描かれているのですが、ここは家康のほうが、もともと火事場泥棒的に、本能寺の変で混乱する織田軍の河尻秀隆のところへ兵を送り込んでいたのですから、それはないでしょ、と思う次第です。このへん、ちょっと伊東潤さんの著作の影響で「後北条びいき」になってるかもしれません。


光秀の敗因は「民の心」の読み違い


巻の後半のほうは、光秀の思いや、彼が後世に託したかったものなどの話が続くのですが、ここらはお好みのままに読んでくださいね。当方としては

明智光秀は、天下泰平を願い・・・、民の安寧の為に戦い・・、民によって殺された

と描いているところが印象的で、ここは宮下英樹さんの「センゴク一統記」の6巻から7巻あたりに書かれているように、「民の性向」を読み間違えた、というところがあたっているような気がします。平和な世を願いつつ、自分は人より儲けたり、抜きん出ることを望んでいる、複雑なところを読み違えたのが最後の敗北の原因のような気がいたします。

このあたり秀吉の

てめえの理想だけじゃ

この乱世は変えられねぇんだよ・・

という発言が印象的です


レビュアーから一言


シリーズの最後のところで、織田家の跡継ぎの天下の支配のやり方を、織田家の有力家臣たちが集まって決めた「清須会議」の1週間前に、秀吉、細川幽斎、家康の三人が密かに集まって、「本能寺の変」を光秀一人の責任にすることに合意する「裏・清須会議」のことが書かれていて、ここで家康は光秀の謀反に加担したという誹りをうけたくないため、これに加担したとされているのですが、この後の「小牧・長久手の戦い」であるとか、秀吉の動きを牽制して、母親や妹を人質同然に関東入りさせたあたり行動をみると、ちょっと純朴すぎる感じがするのですが、皆さんはどう思われますか。

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