ローズはアントワネットゆかりのドレスで、挨拶戦争を終結させる = 磯見仁月「ローズ・ベルタン 傾国の仕立て屋」4(バンチコミックス)

2021年4月23日金曜日

ローズ・ベルタン

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 フランス革命期に、ルイ16世の王妃・マリーアントワネットのモード商を務め、40年間にわたってフランス宮廷、すなわちフランスのファッションをリードした平民出身の女性ファッションデザイナーの元祖「ローズ・ベルタン」の成り上がり物語を描く『磯見仁月「ローズ・ベルタン 傾国の仕立て屋」』シリーズの第4弾。


前巻で、フランス・ブルボン王朝のルイ16世のもとへ嫁いできたオーストリアの皇女・マリー・アントワネットに婚礼の儀式の際に仕掛けられた罠を、その機転で救ったベルタンが、ヴェルサイユ入りを目指してどうう策略をうってくるか、とアントワネットのフランス王宮での不満が溜まっていく様子が描かれます。


構成と注目ポイント


構成は


16針目 礼儀

17針目 グラン・コール

18針目 籠り姫

19針目 挨拶戦争

20針目 友情


となっていて、前巻でのマリー・アントワネットの花嫁衣装の窮地を救った足し布を誰がやったのかが、王太子妃付きモード商・フィリドールと人気店トレ・ガランの経営者でベルタンの雇い主のバジェルとの間で話題になっているところからスタートします。


足し布をした花嫁衣装が、トレ・ガランのデザインによく似た見事な出来であったことから、バジェルはおそらく、ベルタンの仕業と推測します。この当時のファッション界を代表する二人がその腕を認めてはいるのですが、「女性がモード商になるには、結婚か、名前貸しをしてくれる男性が必要」という制約が当時のフランスにはあったため、ベルタンの野望の障害となっているようです。しかも、結婚したらしたで

「既婚女性は夫の許可なしでは出廷できない」

つまり、男がいなければモード商になれないのに

男がいれば自由に商売できない

ということのようなので、まあ、かなり不自由な話ですね。当時、モード商だけでなく、様々な場面で活躍するのが、ほとんど「夫人」であるのは、こうした事情からなんでしょうか。これをどう克服するかが、今巻での課題となります。


一方、結婚し、フランス宮廷で入った、マリーアントワネットは、早速、宮廷内の勢力争いに巻き込まれるとともに、夫であるルイ16世の無関心さに悩むこととなります。


勢力争いのほうは、ルイ15世の公妾である、デュ・バリー伯爵婦人「マリー・ジャンヌ・べキュー」と、ルイ15世の王娘である三姉妹とのいがみ合いに巻き込まれ、三姉妹の代理として戦わされているという設定です。ただ、アントワネットの味方であるはずの三姉妹も実は、オーストリアの勢力がフランス宮廷に入り込むのを嫌っていて、コルセットをつけないよう唆してアントワネットの評判を落としたり、乗馬をすすめて不妊にしようと企んでいたり、といった状況で、もう誰が味方で、誰が敵かわからない状況です。


もっとも、デユ・バリー夫人嫌いは、マリー・アントワネットによってはかなりの部分で本音に近いものであったらしく、彼女の後ろ盾であった「ショワズール公爵」がデュ・バリー夫人のルイ15世への讒言で失脚してから冷たい対応が続いていて、デュ・バリー夫人に出会っても、アントワネットが無視して、声をかけないという、宮廷らしい”陰湿”な「挨拶戦争」が始まります。

マリー・アントワネットの母親のマリー・テレジアは、夫のフランツ一世とは仲が良いことで有名な夫婦でありましたから、二人のもとで育ったアントワネットには、公の「妾」という存在が許せなかったのかもしれません。


自分の寵妃を無視し続けるアントワネットに、ルイ15世の機嫌も悪くなる一方なのですが、アントワネットのほうも強情で、近臣たちの忠告も効きません。

このままでは、アントワネットは王太子妃から廃され、それが原因でフランスとオーストリアとの戦争が勃発か、といった状況になります。

もし戦争となれば、当時の大国同士の大戦争となり、どちらも疲弊することは間違いありません。喜ぶのは、イギリス、スペイン、プロシアといった周辺諸国で、七年戦争で敗北してカナダなどの広大な植民地を失い、その後、国内的にもパリ高等法院と国王との対立が続いているフランスによって好ましいことでないのは間違いありません。


この一触即発の危機を回避するのが、デュ・バリー夫人の邸宅に招かれたベルタンです。彼女は

貴方に今、必要なのは王太子妃に

挨拶をさせる衣装です

と告げ、その衣装ををつくるというのですが、詳細は原書のほうで。


デュ・バリー夫人は第三階級の出身、アントワネットは外国人ということで二人ともヴェルサイユの中では「少数派」同士なので、手をとりあうという戦略もありえたかもしれませんが、一応の和解後もあまり仲はよくなかったようです。


レビュアーから一言


「挨拶戦争」で、デュ・バリー夫人のために一肌脱いだことで、ベルタンは夫人から

貴方の店の権利書よ

支援者を募っていると聞いたから

男の庇護など、私の後ろ盾でどうとでも

貴方にはもっと高みに行ってほしいのよ

というプレゼントをされ、ヴェルサイユに向け飛躍をしていく基盤を勝ち取ることになります。ローズ・ベルタンの生涯を書いたミシェル・サポリの「ローズ・ベルタン マリー=アントワネットのモード大臣」には、ベルタンが婚礼衣装を仕立てたパンティエーブル公爵の娘アデライードの庇護で、サン=トノレ修道院の向かいに自分の店をもったとあるのですが、アデライードだけでなく、デュ・バリー夫人の庇護もあれば「怖いもの無し」だったことでしょう。

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