「ヤノハ」は九州諸国を自由自在に操る女王となる=「卑弥呼ー真説・邪馬台国伝」6

2021年5月27日木曜日

卑弥呼

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 古代史最大の謎「邪馬台国」を舞台に、日向の巫女の娘が、権謀術数の限りを尽くして、生き残り、女王として成り上がっていく漫画版・卑弥呼物語『リチャード・ウー・中村真理子「卑弥呼ー真説・邪馬台国』シリーズの第6弾。


前巻までで種智院の元巫女・イクメやその父のミマト将軍の助力を得て、「山杜」独立を果たし、さらに聖地「千穂」の鬼退治を成功させ、「日向」の地を統合した「日見子」こと「ヤノハ」の政権に九州の他の諸国と彼女が一旦、身を寄せながら飛び出した国「暈(クマ)」との国同士の駆け引きがはじまるとともに、かつて日向を治めていた「サヌ王」の子古族が「ヤノハ」の妨害をしかけてくるのが今巻です。


構成と注目ポイント


第6巻の構成は


口伝39 密談

口伝40 結界

口伝41 答え

口伝42 拝顔

口伝43 冷戦

口伝44 貢ぎ物

口伝45 死と誕生

口伝46 現在と未来


となっていて、冒頭では、九州の他の諸国「那」「伊岐」「津島」「伊都」「末盧」「都萬」、そして現在の下関から長門のあたりを領する「穴門」といった諸国の王が集まって、日向の地を統合した「ヤノハ」たち「山杜」勢に対し、どういう対応をするか協議するシーンから始まります。


彼らの総意としては互いに同盟を結び、新しい「日見子」を擁する「山杜」を自勢力内にとりこみたいのですが、懸念は九州南部に大きな力を有する「暈(クマ)」の国の動向です。


本シリーズでは「暈」は熊本県から鹿児島県にわたる広大な地域を領している大勢力なので、ここの動きが大きな影響をもたらすようで、仮に「暈」と同盟を結ぶようであれば、「山杜」とは敵対関係となる雰囲気なのですが、片や「暈」のナンバー2「鞠智彦」は「ヤノハ」と和議を結ぶ気はあるのですが実質的には「属国」化しようと企んでいるので、「ヤノハ」にとっては、かなり難しい政治的な綱渡りが要求されるところです。


ここで、「ヤノハ」の下した決断は、九州諸国より先に「暈」の「鞠智彦」と面談するというものなのですが、その真意は、「暈」と同盟関係を結ぶのではなくて「暈との戦を布告したかったのです」という筋立てで、「ヤノハ」のしたたかな政治的な駆け引きが光るところですね。ついでに、彼女が交わす「鞠智彦」との密約は、後で「暈」国でのクーデターへと発展していきます。


国内的には、「ヤノハ」は「ミマト将軍」の息子である「ミマアキ」を気に入っていて、彼に「昼の王」としての統治をしてみないか、との誘いをかけます。彼は「ヤノハ」の倭国統一という野望を実現するため、武力で九州や四国、本州の国々を従わせるのではなく、中国大陸の「漢」を利用することを考えたり、漢の使者に倭国を「漢」と並ぶ広大な島であると誤解させるための策を考えたり(どうやらこの策が、魏志倭人伝の邪馬台国への行程となって、邪馬台国の場所推定を混乱させているというのが筆者の推理ですね)、さらには九州諸国にそれぞれの利益となる交換条件を提示したり、と相当なキレ者なのですが、それがかえって命取りにならなければよいのですが・・


もうひとつネタバレしておくと、前巻で「ヤノハ」の命を狙った「サヌ王」の古族・五支族の末裔「穂波」の大夫・トモは、航海術に長けた「阿閉島(今の福岡県の「相島」でしょうか?)を支配する「ワニ」族と接近し、サヌ王の子孫の治める「日下(ヒノモト)」へと行くことを計画しています。ここが畿内にある「ヤマト」との再接触の始まりかもしれません。


レビュアーから一言


本書の特徴の一つは、魏志倭人伝で、今の唐津あたりと推定されている末盧国に着いてから、やたらと長い距離を移動することにになっている邪馬台国の位置は、もともと漢の侵略を避けるための攪乱であった、と推理されていたり、「ヤノハ」の幼少期、後漢の霊帝の時代の官憲の追及から逃れた黄巾の乱の残党が九州まで流れ着いていたり、と中国大陸や朝鮮半島との関係性が色濃く描かれているところです。

邪馬台国の話は、どうしても九州と畿内といった国内視点になりがちなのですが、本シリーズは、当時の東アジアの国際的な視点で考えることが欠かせないことを教えてくれているようです。


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