「対馬」の戦、終わる。元軍の前に対馬勢、壊滅 =「アンゴルモア 対馬篇」5~10

2021年7月12日月曜日

歴史コミック

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日本を「カミカゼの国」として認識させ、それ以後の国防に関する考えに大きく影響を与えた「元寇」のうち、最初に中国・元から侵攻を受けた文永の役で対馬を舞台に押し寄せる元・高麗の圧倒t気多数の軍勢を相手に最後まで戦い抜いた、元鎌倉の御家人・朽木迅三郎ほかの流人部隊と、安徳帝の子孫・照日姫率いる対馬勢の戦いを描いた『たかぎ七彦「アンゴルモア 元寇合戦記」(角川コミック・エース)』シリーズの第5弾から第10弾。


今回は、攻め寄せた蒙古・高麗軍のもとにあっけない敗北を喫した対馬勢が、古来から対馬の地で国防の最前線にいた「刀伊祓」の気づいた「城」を基地にして蒙古の軍勢に立ち向かいます。


第5巻 照日姫と迅三郎は古代の防人とともに蒙古と戦う


第5巻では前巻の最終場面で登場した「安徳帝」によって、源平の戦の最終決着をつけた「壇ノ浦の合戦」の様子と、その時、源氏の軍勢の総大将であった「源義経」の様子が語られます。


「平家物語」などでは平家に擁立され、彼らの意のままに操られる「幼帝」の典型として位置づけられている「安徳帝」が意外にしっかりと自分の意思をもった「天皇」として描かれています。平家に限らず、「帝」の意思を無視したり、捻じ曲げる政権は長続きしないという教訓でもあるようですね。


で、この安徳帝の口利きによって、安徳帝の子孫でもある照日姫ほかの対馬勢と、迅三郎他の流人部隊は、古から、この対馬の土地で国防にあたっていた防人の子孫「刀伊祓」の根拠地に受け入れてもらい、彼らとともに、元軍と戦うこととなります。刀伊祓が根拠地としている「金田城」は山をぐるっと石垣で囲んだ巨大な山城で、かなりの防御力をもつものですね。


しかし、元軍のほうもしっかりと策は講じていて、金田城に入り込んだ味方の中に、蒙古への内通者をしっかりと忍び込ませています。このあたりは、戦争によって中国からヨーロッパに至る大帝国をつくりあげた蒙古軍団に抜かりはないですね。


第6巻 対馬勢の中に紛れ込んだ「内通者」を見つけ出せ


第5巻の後半で姿を表した蒙古への内通者・男衾三郎は、仲間に引き入れようとした白石和久によって殺され、内通者の証拠である「銀牌」を奪われてしまいます。


白石には東国からきた武士に所領を奪われた末に離散した一族を再結集して再び九州のどこかに所領を確保する望みを抱いていて、こういう目的のある裏切り者が一番手強い「敵」となっていくのが通例ですね。


そして、この「金田城」の弱いところに気づいた「白石」の手引で、蒙古軍の先遣隊が城の内部に入り込んで、城の主郭にむけて攻め込んでくるのですが、これに対して、「刀伊祓」の古老たちの「火攻め」が炸裂することになります。


第7巻 内通者の最期はいかに


白石の内通によって入り込まれた敵を、古老たちの火攻めの秘術によって撃退したことを契機に、迅三郎たちは「ウリヤンエデイ」軍の動揺をついて敵本体へと攻め込んでいきます。


このあたりが、迅三郎の「戦場勘」というものなのでしょうが、相手方にも戦場を駆け抜けてきた強者はいるらしく、元軍本体の最終目的が九州攻撃にあることと照らして、自軍の消耗をできるだけ避けることを進言。一時の感情で総攻撃を始めかけたウリヤンエデイも最終的にはこれに従います。迅三郎たちの急襲に恐れをなしてところもあるのですが、蒙古族の王族としての「侵略の勘」は彼も鈍ってはいないようです。


この後、元軍は退却し、取り残された「白石」は一族再起の願いも虚しく、裏切り者として処刑されていくこととなります。


第8巻 日本を攻める「高麗軍」の悲哀


照日姫と迅三郎、そして刀伊祓の長嶺判官たち対馬勢は古代の山城・金田城での最終の籠城戦で元軍を迎え撃とうとしているのですが、ここで、場面は佐須浦で高麗艦隊の指揮している高麗軍の大将・金方慶へと移ります。彼は高麗が元に降伏するまでの三十年間、抵抗軍の指揮をとっていたのですが、現在では元の日本攻めの先鋒として高麗軍を指揮しています。彼によって、元へ国使として朝貢した際に、元への降伏が遅かったため、劣位の扱いを受けた屈辱を晴らすため、元に下僕のよう仕えて地位向上を図ってきた高麗の王・忠列王の半生記が語られます。


高麗国の元帝国内での地位を高めるため、皇帝の親衛隊となり、同じ高麗人である元への抵抗勢力「三別抄」を攻め滅ぼし、日本遠征軍の先鋒となり、さらには風俗も蒙古風に改めて皇族の娘を妃としつつも、なお「モンゴル」とは同列に扱われなかった彼の半生は何を象徴しているのでしょうか・・・。元帝国が滅びモンゴル高原へ還るのは、この100年後のことです。


対馬の戦いのほうはいよいよ金田城を包囲する元軍と、籠城して援軍の到着を待つ対馬勢との最終決戦へと向かいます。

彼らは援軍を連れてくると約束して九州へ戻った鎌倉武家の名門・少弐景資の言葉を信じて援軍の到着を待っているわけですが、実は、この巻で、少弐家と大友家の勢力争いのはざまで、景資の援軍派遣の献策は退けられ、対馬は見捨てられてしまったことが読者には明らかになります。


第9巻・第10巻 最終決戦始まる。


第9巻から第10巻は、対馬勢と元軍との金田城を舞台にした最終決戦が描かれます。


ただ、「決戦」とはいっても、兵力・物量ともに勝る元軍の総攻撃に対し、対馬勢と古来からの防人「刀伊祓」、そして迅三郎たちの流人軍が、攻め込まれ、摺りつぶされていく、というのが実際のところです。この2巻では元軍に対して斃されてても、立ち向かっていく「日本」勢の滅亡覚悟の総力戦を読んでください。最後の迅三郎の最終抵抗と劉復亨との一騎打ちは少しスカッとする展開ではあります。


ここで注目しておくべきは、対馬の住人の略奪をめぐって、蒙古、高麗、女真、漢人と互いに争い、殺し合いも始めているシーンもあり、「元軍」がけして一枚岩ではなかったところですね。特に、迅三郎が劉復亨を追い詰めるところでは、最初、劉復亨を護衛する気配の部下たちが迅三郎の迫力に押された道を開け始めるあたりに、元軍の底によどんでいる民族同士の対立を見るようです。


レビュアーの一言


この元の対馬侵略は圧倒的な「元」勝利に終わるのですが、元軍が九州・博多へ向かった後、照日姫をはじめ島の住民たちが生き残っています。

照日姫の

対馬は、まだ終わってはおらぬ

という言葉のもとに再建を始めようとするのが、「救い」のあるところです。

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日本の人口最少県の住人。なりわいは行政書士。読書好き、ガジェット好きの昭和人です。

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