迅三郎は博多へ向かう蒙古軍を追撃する = たかぎ七彦「アンゴルモア 博多編」1・2

2021年7月13日火曜日

歴史コミック

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 日本を「カミカゼの国」として認識させ、それ以後の国防に関する考えに大きく影響を与えた「元寇」のうち、最初に中国・元から侵攻を受けた文永の役で、対馬、壱岐が壊滅的な敗北と略奪を受けた後、九州本土へ押し寄せてきた元軍を日本の鎌倉武士が博多で迎え撃つ姿を描いたのが『たかぎ七彦「アンゴルモア 博多編」(角川コミックス・エース)』


対馬戦で、元軍の副大将である劉復亨と死闘を戦った後、残された対馬の民を冬の飢餓から守るため、朽木迅三郎が九州本土へ向かうのが「アンゴルモア 博多篇」の第1巻から第2巻です。


あらすじと注目ポイント


第一巻 元の大艦隊は壱岐を屠り、博多を目指す


博多篇の第一巻では、蒙古によって島中が大略奪にあったものの、生き残った照日姫ほかの島人たちが山中に隠れ住むところから始まります。ここで島民たちを襲い始めるのが、食料不足です。


もともと、中世の頃は冬になると穀物も枯渇してくる上に寒さによって死ぬ人間も多い時期なのですが、元来、耕地が少なく、穀物が不足しがちな上に、蒙古による略奪を受けた対馬では飢餓の危機はより深刻です。このため、朽木迅三郎が、追討死の危険を承知で、援軍を約束していた九州の少弐家へ食料支援の要請へ渡海することとなったわけですね。


ちょうど、近くの入江に、故障した帆の修理のために停泊していた高齢海軍の旗艦に密航して博多を目指すこととなるのですが、ここらはちょっと出来すぎ設定かもしれません。


そして、物語のほうは、博多に押し寄せてくる「元」の艦隊を迎え撃つ鎌倉武士団へと舞台が移ります。


日本側では、それまで元や高麗からの服従を勧める使者も何度か来ている上に、元の大艦隊派遣の情報や、対馬、壱岐壊滅の情報もあり、九州を根拠地としている少弐、大友といった武将たちのほか、関東からやってきた、島津、小代、宇都宮、千葉といった坂東武者たち、さらにはもともと古代から九州に地盤をもつ菊池などの九州勢など多くの武士団が集結しています。

ただ、内情をみると、それぞれが功績をめぐって牽制状態にあり、元の艦隊や兵力の総数や、彼らの戦法などについても情報を集めようともしておらず、おまけに日本軍の目には、味方は多く、敵は少なく映っていたようで、かなりの「緩み」が見えるところですね。


第二巻 天草の女武将、高麗水軍へ立ち向かう


日本側の味方同士の相互牽制の隙をついて、元軍のうちの高麗勢は、博多湾岸の麁原山を占領し、さらに湾内の防衛の要地である「赤坂山」も占拠し、ここに足場を築き始めます。


この動きに対し、少弐、大友といった九州勢や、島津などの坂東勢は様子見といったところなのですが、ここで功名をあげて家の隆盛を築くチャンスと見て、肥前の竹崎季長とか白石通泰といった小さな御家人衆が動き始めます。すでに源平合戦以後、不遇をかこっていた菊池武房たちも先駆けをはじめていますので、鎌倉政権下で陽の目を見ることの少なかった勢力が気炎を吐きはじめた、といったところですね。


一方、朽木迅三郎が密航している本隊の蒙古船に遅れていた高麗の旗艦が壱岐に近づいた頃、女性も乗った一艘の小舟が近づいてきます。この高麗船が壱岐に着いたときには、すでに壱岐平定は終わっていて、蒙古艦隊は博多に向かった後ですので、かなり高麗船の警戒心が落ちていて小舟の接近を容易に許してしまいます。


ところが、この小舟に乗っていたのは、天草の本渡島の地頭・大蔵氏の惣領娘である「大蔵太子」の率いる天草勢。「大蔵太子」は天草にある本渡諏訪神社の伝承では、地元水軍を率いて、蒙古軍へ立ち向かった女武将らしいです。


彼女たちが高麗船へ攻撃を仕掛けるのに呼応して、朽木迅三郎も姿を表し、天草勢に合流することとなります。


レビュアーから一言


「鎌倉時代」というのは、一族の独立性が高かったせいなのか、それぞれの武功争いも厳しく、ともすると味方同士で足の引っ張りあいをして、全体の勝利を逃してしまうようなところもあったようです。

今回も、蒙古軍に博多の赤坂山を占拠されたので、直ちに奪還しようとする少弐経資(証少弐景資の兄)に対し、その地の足場が悪いので、騎馬が使えず武功が立てられないと友軍の武将たちが反対し、即座の反撃を断念しています。こういうチームワークの悪さが、蒙古軍に遅れをとった原因でもあるのですが、案外に現代日本にも通じるところがあるかもしれません。

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