政、呂不韋、趙太后の三つ巴の戦い、決着 = キングダム38~40「秦国内乱編」

2021年9月23日木曜日

キングダム

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 中国の春秋戦国時代の末期、戦国七雄と呼ばれる七カ国同士の攻防が続く中、中華統一を目指す秦王「嬴政」と、戦争孤児の下僕から、天下一の大将軍を目指す「信」が、ともにその夢の実現を目指していく歴史大スペクタクル「キングダム」シリーズ38弾~第40弾を総解説します。


前巻までで、魏の「著雍」を得て、中原への足がかりを獲得した秦国なのですが、政の実母・趙太后がこの地を含む太原地方で独立を宣言します。さらに、この動きに王位簒奪を狙う呂不韋も行動を始め、秦の首都・咸陽を舞台に三つ巴の内乱が始まります。


あらすじと注目ポイント>政、呂不韋、趙太后の三つ巴の戦い、決着


第37巻(続き)趙大后、秦からの独立を画策する


魏の著雍を陥とし、本格的に中原経営に乗り出そうとする秦の宮廷で、あるハプニングがおきます。今まで鳴りを潜めていた趙大后が宮廷に現れ、”山陽”と”著雍”を後宮勢力で預かり、この地域の復興に出資しようと言い出します。


官僚たちとしては、築城で金のかかる時にありがたい申し出なのですが、ここで趙大后が条件として出してきたのが、自らの愛人「嫪毐」を据えることです。この時点では、嫪毐は宦官として出仕した格好になっているので、彼が大后の愛人であることや、すでに大后との間に二人の子供をなしていることなどは宮中でも誰も知らない状況です。


その後、大后は山陽地方よりもっと北にある「太原」へ兵士と住民たちを集め始め、ついには太原一体を「毐国」として独立させることを宣言します。


第38巻 「加冠の儀」を利用して、反乱軍は函谷関を越える


第38巻の構成は


第405話 新しい国

第406話 別れ

第407話 五千人将

第408話 決着の年

第409話 何もない男

第410話 二つに一つ

第411話 雍に舞う

第412話 加冠の儀

第413話 祖霊の声

第414話 三方ゆずらず

第415話 反乱兵の作り方


となっていて、趙大后によって独立した「毐国」は、当初長続きしないと思われていたのですが、予想に反して、兵や民を集め、官僚体制も整備し、国としての態をだんだんと整えてきます。


これには、優れた政治手腕と実務能力を持つ宦官の「趙高」と、南方の大国・楚の支援があります。楚や他の中原諸国にとっては、勢力を強める「秦」を牽制するタマとしてもってこいの話なので、「毐国」へ資金を流入させ、肥え太らせていく方向に進みます。


この動きに趙大后は危うさを感じ始めているのですが、「嫪毐」は諸国の使者や呂不韋や楚国の息のかかった重臣たちによって、「王号」僭称へと突き進んでいきます。


そして、嫪毐と趙大后の間に隠し子がいることを咸陽の宮中にリークされて後が無くなったことを知り、趙大后は、とうとうクーデターを起こし、王位を簒奪することを決意します。


よいよ、政が成人となり秦国の正式な王となる「加冠の儀」を迎えます。儀式に列席するのは、政の母親である趙大后、相国の呂不韋ほか秦の重臣、そして各国の大使たちなのですが、それとあわせて、趙大后が連れてきた「毐国」の樊於期将軍の軍勢も函谷関を通り、秦国内へ入国しています。この入国には、趙大后が以前作らせた偽造「王印」が効いてますね。


「加冠の儀」のイベントは滞りなく進行していくのですが、趙大后は、隠し子の露見で自分や「毐国」の挙動を警戒してもいいはずの秦王側が無警戒であることを見て、今までの「毐国」独立や、今回の「加冠の儀」にあわせた「毐国」軍の咸陽侵攻の計画を陰で仕組んでいたのが「呂不韋」であることに気づきます。


呂不韋の狙いは、「毐国」軍に秦王宮を蹂躙させ、その後、蒙武軍と「毐国」軍内に仕込んだ樊於期たち呂不韋派によって「毐国」軍を殲滅する作戦ですが、趙大后のほうも咸陽占領後、偽の玉璽によって秦国内から兵を募り、反対勢力を駆逐する計画です。


この二つに勢力に対して、「政」はどう立ち向かうのか、といったところが焦点になってきます。


第39巻 昌平君は呂不韋と決別。政と呂不韋は”言葉”による戦さ開始


第39巻の構成は


第416話 伏兵の場所

第417話 渡河の戦い

第418話 初体験の只中

第419話 立つ男

第420話 袂を分かつ

第421話 二の舞

第422話 守り抜く命

第423話 夢のような国

第425話 正しい感情

第426話 人の本質


となっていて、「毐国」の反乱軍は樊於期軍1万、百年前に秦に糾合された西戎の一族・戎籊王軍1万、行軍中に徴集した兵1万のいわば寄せ集めの兵なのですが、樊於期は徴集兵を無理やり反逆に追い込み、咸陽を目指しています。


秦の国軍のほとんどは外に出ていて、「毐国」の反乱軍に対抗する「政」の軍勢はいないと思われていたのですが、ここで「蕞」を中心とした1万の秦王軍が現れます。この兵が、昌平君からの密命を受け、駆けつけた「信」のもとで反乱軍へ立ち向かっていきます。


しかし、信と「蕞」兵が咸陽に着いたときには、すでに反乱軍は、城内の呂不韋派によって開けられた城門から侵入しています。おいかけるように城内に入り、反乱軍と戦う「信」たちのところへやってきたのは、呂不韋派であった昌平君の配下の近衛兵団・・という展開です。


「加冠の儀」の終了後、咸陽の反乱軍を鎮圧しようと出発しかける昌文君に昌平君が呼応して立ち上がります。呂不韋は、この儀式の後、政から秦国を簒奪するつもりですので、昌平君の裏切りに激高します。しかし、固い決意のもと、昌平君が呂不韋に決別するシーンは、迫力ありますので、ぜひ原書のほうでお読みください。


そして、昌平君と昌文君が、咸陽平定に向かった後、旧王宮の天備宮で、誰がこれから秦を治めていくのがふさわしいか、「政」と「呂不韋」の間で、言葉による戦いが始まります。


呂不韋は、政の掲げる目標「中華統一」に対し、

夢想の中の物語ならば、よしとするが

本気なら

およそ血の通った人間の歩む道ではござらぬぞ

と真っ向から反対し、二人の国家統治論が戦わされていきます。


呂不韋が主張するのは「貨幣」「金」による国家統治を訴えます。秦を最も富んだ国にして、人々の暮らしを豊かにする。それを中国全土に広げる、という国家運営論を展開します。


「衣食足りて礼節を知る」の考えを体現したもので、それなりに聞かせるものがあるのですが、どうも、今までの呂不韋の秦王朝乗っ取りのためにとった暗殺や陰謀の数々を考えると、どうも素直には受け取れない気がします。


基本的に、呂不韋の考えは、今の体制が維持されることが前提となるので、呂不韋の「権力」の継続が根底にあると思うのは邪推でしょうか。


片や、「政」のほうは武力によって「戦争」を無くす、という一見矛盾したものを含んでいるのですが、彼が趙で受けた迫害や、今まで政を助けて斃れた者たちの思いを受け止めた集大成ですね。実際に、「政」こと始皇帝がいなければ、今のヨーロッパ諸国のように分裂したまま現在に至ったのでは、という歴史家もいることは重く考えるべきでしょう。


第40巻 秦の内乱終結。勝利は「政」の頭上に輝くが・・


第40巻の構成は


第427話 決意の言葉

第428話 命懸けの逃避

第429話 将の人望

第430話 救世の音色

第431話 逆転の猛進

第432話 決着の夕暮れ

第433話 謀略の崩壊

第434話 敗北の巨星

第435話 内乱の終着点

第436話 最後の懇願

第437話 親子の繋がり


となっていて、政と呂不韋の統治論の決着は、咸陽をどちらの手勢が制するか、が決め手です。


王宮内に侵入した樊於期軍は、廷臣や宦官、宮女を次々と殺戮していきます。この蛮行の中、政の后の「向」は友人の「陽」とともに、公女を守り、脱出の途を探すのですが、王宮内にも、秦王を裏切り、反乱軍に密告する廷臣、宦官や宮女が続発します。


そして、「向」と公女を害そうと馬を走らせてくる反乱軍の騎兵の前に、友人の宮女「陽」は飛び出し、自分の身を犠牲にして二人を守ろうとするのですが、そこに「信」が飛び込んできて・・という感じで、ヒーローぶりを発揮します。


王宮内の反乱軍は鎮圧し、戦いのポイントは城外に移ります。押しまくってくる戎籊王の軍勢をかろうじて食い止める貂たちのもとへ聞こえてきたのは昌平君の軍勢の到着を知らせる法螺貝の音です。


ここで、昌平君がしかけるのは、寡兵をもって大軍を仕留める「包雷」の陣。左右、後方に兵の壁をつくって敵将の動きを封じ、中央から攻め込む「刃」で敵将を屠る一撃必殺の攻撃です。これに対し、敵方の戎籊の王「ワテギ」は逆転を狙って、主攻の昌平君めがけて逆に突っ込んでいくのですが・・、という筋立てです。まあ、結果のほうは昌平君の矛が一閃して、戎籊王「ワテギ」の首をすっ飛ばすのですが、ここまでに激烈なバトルシーンが展開されているので、原書で味わうことをオススメします。


戎籊王が斃されたことで、烏合の衆であった反乱軍は崩壊、城内の樊於期も逃走していきます。史実では、お尋ね者になった樊於期は、燕へ亡命し、燕の太子・丹の計画した秦王・政の暗殺未遂で重要な「土産」となるのですが、それはまた別のお話ですね。


反乱の終結後、首謀者となった「嫪毐」は、呂不韋の手引で偽宦官となったことを告白し、さらに、趙大后の罪をすべて被って、車裂きの刑により処刑死します。ただ、史書では処刑されたことになっている、大后と嫪毐の間に生まれた二人の子供の運命について、著者は別の解釈を用意しているようです。


レビュアーの一言>戎籊王の遺言は、後の匈奴vs漢の布石?


嫪毐の反乱で、1万人の軍を動員し、最後は秦の昌平君に討ち取られた戎籊王「ワテギ」は、討たれる直前、重臣たちに

この反乱軍は烏合の衆だ

樊於期らが城内に入っている今

儂が討ち取られれば軍全体が瓦解する

その時は、お前達重臣は何としてでも生き残れ

生き残ってこの仇を次の戎籊にしっかりと伝えよ

フフッ、また百年後・・

といった遺言を残しています。


この嫪毐の反乱からほぼ百年後、中国は秦が滅びて漢帝国の時代になっていましたが、匈奴の軍臣単于は、漢の将軍の衛青・霍去病と戦うこととなるので、それを予言したのかもしれません。(この時も、匈奴軍は敗れてしまうのですが・・・)

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