京の都の世代交代が進み、新九郎の駿河入り間近 = ゆうきまさみ「新九郎奔る!」8

2021年10月3日日曜日

新九郎奔る!

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 戦国時代の「下剋上」の典型として、堀越公方足利政知の息子・茶々丸を攻め滅ぼして「伊豆」を我が物にしたのを皮切りに、関東管領の上杉氏の家臣から小田原城を奪い取り、その後、相模国を領土とし、戦国大名の魁といわれる「北条早雲」の若き頃の姿を描く「新九郎奔る!」シリーズの第8弾。


前巻で京を中心に発生した伝染病(麻疹)によって、義母の「須磨」が死去し、完全にやる気をなくした父に替わって、領国・荏原の領国支配と、京都での義政の子・春王丸仕えに奔走していた新九郎なのですが、本巻では、今まで政治の中心にいた人物たちが世を去るとともに、新九郎のこれからの運命を東国へと導いていく大きな流れが動いていきます。


あらすじと注目ポイント


 構成は

 

第四十五話 文明五年 その1

 第四十六話 文明五年 その2

 第四十七話 文明五年 その3

 第四十八話 富士の裾野にて その1

 第四十九話 富士の裾野にて その2

 第五十話  富士の裾野にて その3

 第五十一話 一矢

 

となっていて前半部分の「文明五年」の章は、このシリーズをこれまでリードしていた幕府の要職にある(あった)人物が相次いで世を去り、世代交代が急激におきています。


まず、第一番目は、伊勢本家で足利義政の育ての親として権勢を振るいながら、将軍・義政を隠居させ、義政の子の春王に将軍位を嗣がせようという陰謀が発覚し(「新九郎が奔る」5参照)、政所執事の職を解かれ、若狭に蟄居していた新九郎の伯父・伊勢貞親が死亡します。この物語では心不全のようですが、死の直前まで、政権に復帰しようとしていたあたりは、根っからの「政治家」といえますね。

新九郎は、この伯父の葬儀に出席するため、上京するのですが、この滞在中に、応仁の乱の東西双方のリーダーであった山名宗全と細川勝元が相次いで死去します。宗全は前巻での切腹未遂の後遺症で寝付いてしまったままあの世にいったのですが、勝元は前日まで元気だったのが、突然の出来事です。

自ら薬を調合するほど健康に気を使っていた勝元の死は、周囲の人にとって驚きだったでしょうが、人為による世代交代が進まない時は、天の意思で強制的に交代が進められるのかもしれんですね、


そして、新九郎は勝元派に属しているので、細川宗家(京兆家)を継ぐ「聡明丸」と面会するのですが、8歳ながらかなりの自信家で変わり者であることがわかります。


少しネタバレしておくと、彼は江戸時代に「戦国三大愚人」とも称された人物で、天狗になろうと修験道に凝り、一生女性を近づけなかたっとされています。ただ、政治的には、将軍をすげ替えて傀儡化し、管領として幕専制体制を構築し、織田信長に先駆けて比叡山を焼き討ちするなどの強権をふるっています。

 

後半部分では、物語の舞台が関東と駿河に移ります。いよいよ、新九郎が「北条早雲」となっていく段階へと移っていくわけですね。


関東では、関東管領と古河公方との抗争で戦死した関東管領の上杉政真の跡目を上杉定正が継いだり、彼を支える太田道灌と露天風呂で出会って歌の話をしたり、堀越公方の足利政知に面会したりと、後になって、新九郎が関東へ移ってから、敵味方として関わる人物が登場してきますが、ここらは同じような名前が出てきて、人間関係も複雑なので、混乱せずに整理しておきましょう。


室町時代があまり人気がないのは、こういう人間関係と、苗字が一緒なのがたくさん出てくる上に敵味方の関係が複雑怪奇だからかもしれません。


さらに、ここでは、姉・伊都が嫁いでいる今川義忠が、旧支配地である遠江を回復するために、現在の領主である斯波氏に執拗に戦いを挑み、戦況的には有利に進めながら、流れ矢で命を落とすところまでが描かれます。


ここでは、彼の死後、駿河の支配権を巡って戦をすることになる義忠の従兄弟である、小鹿新五郎とも出会っています。この時は友情らしき関係も発生しているのですが、この時代、一族郎党の利害が絡むと個人的な好悪は関係なくなるんでしょうね。


レビュアーの一言


今巻では、幼少期から過ごした「京」の都、本来の所領である「荏原」に加えて、駿河、伊豆へと新九郎は訪れています。商人は別として、この当時、名のある、ちゃんとした武家の家長が所領を離れて遠く旅するっていう事例はそう多くはないような気がするのですが・・・。


このあたりが、北条早雲が素浪人から一代で成り上がったといった風評を生んだもとなのかもしれません。

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