長州の俊才・吉田稔麿、池田屋事件に斃れる = 「ちるらん 新撰組鎮魂歌」 14~15

2021年12月9日木曜日

ちるらん

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 幕末を彩る「新撰組」を、副長・土方歳三をメインキャストに、幕末の京都から戊辰戦争・函館戦争へと続く激動の時代を「ヤンキー漫画」テイストで描く「橋本エイジ・梅村真也「ちるらん 新撰組鎮魂歌」」のシリーズの第14弾から第15 弾。


前巻までで、新撰組の初代筆頭局長・芹沢鴨たち水戸派グループを凄まじい死闘の末粛清した近藤勇、土方歳三たち試衛館グループは、近藤勇をトップに組織を再編成して大組織となって京都市中の警護の中心となるのですが、ここから倒幕派の中心勢力である長州藩との死闘と、長州藩が京都の御所奪還を目指して暴発するまでが描かれます。


あらすじと注目ポイント


第14巻 池田屋で倒幕派の浪士を殲滅せよ


第14巻の構成は


第五十九話 高杉晋作

第六十話 おもしろき世

第六十一話 決戦前夜

第六十二話 池田屋事変


となっていて、冒頭では前巻の最後半に引き続き、長州藩の麒麟児・高杉晋作と長州藩の手練・入江九一、吉田稔麿が京都所司代の役人と諍いを起こすところから始まります。


もともとの発端は所司代の役人が京の芸姑にちょっかいを出したことなのですが、長州勢によって半死半生にされてしまいます。このあたり、幕府の役人たちは完全な「噛ませ犬」扱いですね。


ここで、騒動を収めるため、土方歳三が登場。入江や吉田と対峙するのですが、この場面では双方の力を見定めるジャブの応酬で止まっています。


この時の京都市中の上京は八月十八日の政変で、長州は都を逐われ薩摩と会津によって治安が守られていたのですが、久坂玄瑞の考案によるこの劣勢を一挙に挽回する秘策、御所と京都市中の焼き討ちと帝の拉致という策を企てることになります。


そして、その陰謀をかぎつけた新選組のメンバーは、その決行準備のために集結している浪士たちを駆逐すべく、その牙城の一つである「池田屋」を襲撃するのですが・・という展開で、この襲撃によって明治維新の到来を数年遅らせた、といわれる「池田屋事件」が開幕します。


この池田屋に踏み込んだのは、近藤勇、沖田総司、永倉新八、藤堂平助といった新選組きっての手練たちによって、池田屋に集まった倒幕浪士の大物たちが次々と血祭りにあげられていきます。ただ、ここで沖田総司の結核が悪化したことと、藤堂平助の「薩摩示現流」恐怖症が勃発して、途中から戦力外になったのが誤算といえば誤算です。


第15巻 禁門の変で久坂玄瑞、志途中で斃れる


第15巻の構成は


第六十三話 吉田稔麿

第六十四話 おはぎの味

第六十五話 禁門の怪物

第六十六話 完全燃焼


となっていて、まず冒頭では、池田屋事件で命を落とすこととなる「吉田稔麿」の半生が描かれています。


彼は吉田松陰門下きっての英才で、もし生きていれば総理大臣に間違いなくなっていた、と長州の志士仲間にいわれていた俊才です。その彼が、一旦は池田屋から脱出しながら、仲間を救うため、再び戻って新選組と斬り結んだ理由は、原書のほうでお読みください。


池田屋に集まっていた志士たちが殲滅され、京都御所焼き討ちに始まる「同時多発革命」を新選組によって潰された久坂玄瑞たちは、この失敗に挫けることなく、二千名の兵士を連れて京都をめざして軍船を進めています。


彼らは、長州の三家老に伏見・鳥羽・西国街道を進軍させて諸藩の兵をひきつけ、この隙に来島又兵衛率いる遊撃隊四百名が御所の蛤御門から乱入して会津兵を釘付けにし、その上で久坂玄瑞の部隊三白が御所へ入り、帝を拉致して長州まで奪い去る、という何層仕立ての作戦を実行します。


会津兵は兵力では勝っているのですが、実戦に鍛えられた長州兵に圧倒され、劣勢にたたされ、このままいけば長州による帝奪還が成功し、明治維新をまたずして倒幕と革命が成功したかも、と思わせたところで、長州勢の前に立ちはだかるのが、薩摩の西郷吉之助(隆盛)ですね。分厚い銃撃隊と、幕末四大人斬りの一人・中村半次郎率いる抜刀隊が、来島率いる長州の遊撃隊を撃破します。


そしてその勢いはとまることなく、帝奪取を目論む久坂隊も撃破し、こんかいの長州の京都復活の野望を粉々に打ち砕くこととなります。


レビュアーの一言


今巻で志半ばで禁門の変で倒れる「久坂玄瑞」はシリーズでは、とんでもない悪辣な陰謀家で、革命を成功させるためには人の生命なんてものは「屁」とも思っていない(事実、彼は土方歳三の恋人となる「琴」を刺客にしたてて、彼女が任務に失敗すると簡単に切り捨てようとしています。)人物と描かれているのですが、史実では吉田松陰、桂小五郎、高杉晋作といった維新の有名人たちから、その才能を称賛されていた人物のようです。


西郷隆盛あたりは「お国の久坂先生が今も生きて居られたら、お互いに参議だなどと云って威張っては居られませんがな」というほどの人物であったようです。


吉田稔麿といい、久坂玄瑞といい、明治維新を迎えるまでに、長州は多くの有能な人物をたくさん失ってしまっていたのがわかりますね。もし、彼らが生存していれば、明治以後の歴史も大きく変わっていたかもしれません。

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