幕府が倒壊する中、近藤勇と沖田総司、逝く = 「ちるらん 新撰組鎮魂歌」25 ~26

2021年12月14日火曜日

ちるらん

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 幕末を彩る「新撰組」を、副長・土方歳三をメインキャストに、幕末の京都から戊辰戦争・函館戦争へと続く激動の時代を「ヤンキー漫画」テイストで描く「橋本エイジ・梅村真也「ちるらん 新撰組鎮魂歌」」のシリーズの第25弾から第26 弾。


前巻で徳川慶喜が二条城から脱出した後の鳥羽伏見の戦いで、新政府軍に敗北を喫して、六番組隊長・井上源三郎を失い、また江戸へ幕府艦隊で帰還する途中に、イギリスの「亡霊の騎士団」との戦争で山崎烝が斃れたのですが、今巻ではさらに新選組の主柱である近藤勇と沖田総司を失うこととなります。


あたすじと注目ポイント


第25巻 近藤勇は「新選組解散」を決断する


第25巻の構成は


第百三話 もじゃもじゃ頭

第百四話 新たな夢

第百五話 決別

第百六話 解散


となっていて、幕府艦隊にのって5年ぶりに江戸へ帰還した近藤勇たちは、鳥羽伏見の戦いで、彼らとともに戦った佐々木忠三郎も命を失ったことを知ります。


彼は富ノ森で旧幕府軍とともに薩長の2500の軍と戦っていたのですが、淀藩が裏切った後、新選組と会津の別撰組を逃すために自らを犠牲にします。もとは会津の下級藩士の三男で、剣術の腕を見込まれた御家人の養子となり、さらに幕府講武所の剣術教授に抜擢された彼の「幕臣」としての「意地」の見せ方であったような気がします。


鳥羽伏見での勝利の後、東山道・東海道を勝利者として進軍してくる新政府軍に対し、江戸では小栗上野介忠順、大鳥圭介、榎本武楊、勝海舟の4人が集まってこれからの幕府を論ずる評定の場に、近藤勇、土方歳三、永倉新八たちも呼ばれています。


すでに隠居を表明し、蟄居している徳川慶喜の全権委任を受けて、4人が話し合うのですが、主戦派の小栗上野介、和平派の勝海舟の主張の溝は埋まらずそれぞれが自ら信じる道を進むこととなりますね。


そして、四者会談の後、近藤たち新選組は「甲陽鎮撫隊」と名前を変え、東山道を進んでくる新政府軍の進撃を止めるために甲府城へと進軍していきます。


しかし、甲府城へ着く前に、新政府軍に甲府城は陥落し、さらに甲州・柏尾の戦で、圧倒的火力と、坂本龍馬の敵討ちに燃える土佐勢を中心とした新政府軍に打ち破られます。その後、江戸へ戻った近藤たちは、勝海舟と西郷吉之助の二者会談による「江戸城無血開城」、すなわち徳川の全面降伏の報せを耳にすることになるのですが、そこで近藤の下した決断は・・という展開です。


第26巻 近藤勇、板橋で刑死。そして、沖田総司は結核で逝く。


第26巻の構成は


第百七話 夢のつづき

第百五話 誠を尽くす

第百六話 黒猫

第百七話 変貌


となっていて、徳川幕府瓦解後、会津藩に合流するため、北東へと転戦する旧・新選組は、千葉の流山で新政府の東山道軍の新式歩兵部隊に包囲されてしまいます。


本シリーズではここで、近藤勇は土方歳三たちと最後の酒盛りをもち、土方たちを酔いつぶした後、新政府軍に出頭します。


ここで名乗ったのが「新選組局長・近藤勇」ではなく「大久保大和」と名乗ったことが、命を惜しんだ助命とも解釈され、近藤勇の最期について悪評が生まれている原因でもあるのですが、このシリーズでは新選組隊士が生き延びる道をできるだけ多く増やすための行動と解釈されているのですが、詳細は原書のほうで。


そして、千駄ヶ谷池尻端の植木職人・平五郎の家の離れに匿われていた沖田総司は、結核の悪化と、近藤勇が板橋の刑場で斬首されたという情報を知り、生き続ける気力も尽きたのか、近藤の後を追うこととなります。


一方、近藤勇と別離した土方歳三は、わずか30名ほどになった新選組の残党を引き連れて会津目指して逃れていくのですが、途中、江戸城開城後、城から武器弾薬や金を奪って出奔した大鳥圭介率いる旧幕府の伝習隊に合流します。この出会いが土方を新たなステップに導くのですが詳細は次巻のレビューで。


レビュアーの一言


江戸城での四者会談の中で、榎本武楊の「新日本国を創る」という選択肢は、土方歳三の度肝を抜くものであったのは間違いないですね。


実際、江戸城開城後、榎本武楊は開陽丸ほかの幕府艦隊を乗っ取って品川沖から脱走し、蝦夷地目指して出航しています。


この当時、徳川と薩長という二大勢力の意識はあったとは思いますが、それとはまったく別の「第三極をつくる」という発想は、中国の三国時代のように奇をてらったものではないのですが、「白黒」つけたがる日本人的価値観の中では予想外のものであったに違いありません。この榎本との出会いが、土方のこれからの動きを決めていくことになるのですが、榎本の「蝦夷共和国」が実現していれば、東アジアの歴史も随分変わったものになったに違いありません。

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