河合継之助の守ろうとした長岡、新政府軍に屈す = 「ちるらん 新撰組鎮魂歌」29~31

2021年12月16日木曜日

ちるらん

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 幕末を彩る「新撰組」を、副長・土方歳三をメインキャストに、幕末の京都から戊辰戦争・函館戦争へと続く激動の時代を「ヤンキー漫画」テイストで描く「橋本エイジ・梅村真也「ちるらん 新撰組鎮魂歌」」のシリーズの第29弾から第31弾。


前巻までで、鳥羽伏見の敗戦による徳川幕府瓦解後、大鳥圭介の率いる伝習隊に合流した土方歳三ほかの新選組なのですが、今回は、戊辰戦争の中でも一、二を争うと激戦といわれる「長岡戦争」を河井継之助とともに新政府軍と戦います。


あらすじと注目ポイント


第29巻 河合継之助、新政府軍との決戦を決断。動かしたのは土方歳三


第29巻の構成は


第百十九話 ヘソ曲がり

第百二十話 河合継之助の決断

第百二十一話 会津の精神

第百二十二話 長岡の力


となっていて、宇都宮城攻防戦最終番の薩摩の薬丸示現流の遣い手・野津七次との戦闘で、彼に足を斬られ大けがを負った土方はほぼ二カ月間、戦場へ出ることが不可能になります。


ここで、彼に代わって新選組の指揮を頼まれたのが斎藤一なのですが、持ち前の性格から「めんどくさいことはやらない主義」とうそぶいて引き受けようとはしません、これを説得したのが、新政府による会津藩攻撃を前にした松平容保で、やはり、新選組の猛者の説得には、この殿さまがでてこないといけないようです。


そして、会津藩内の白川小峰城で、斎藤一の指揮する新選組は新政府軍との緒戦を迎えるのですが、新政府軍の指揮をとるのは、名将・大山弥助の師匠格の伊地知正治。彼は弥助砲五門を揃えて城への集中砲撃を続け、会津藩士たちの士気を削ぐ作戦にでます。新型砲による爆撃は、故郷の人や建物を吹き飛ばし、会津兵の反撃の動きもないので、会津節の心も折れてしまったと伊地知たち薩摩軍は確信するのですが。実はこれが新選組と会津藩のしかけたフェイク。斎藤一たちの奇襲攻撃をきっかけに、佐川官兵衛率いる会津軍が城からうって出て、薩摩兵を蹴散らしていきます。


ただ、これに対して無理に抵抗しないのが伊地知の名将たるところで、不利とみるや全軍を撤退させ、無駄な兵力の損傷を防ぐところはさすがです。


この白川口の攻防では、ひとまず薩摩軍を退けたのですが、大軍を擁する新政府軍に対し劣勢であることは間違いなく、いつまで持ちこたえることができるかは時間の問題です。このため、佐川官兵衛と土方歳三は、現時点で独立中立を宣言している長岡藩へ幕府側に味方するよう説得に赴くこととなります。


佐川官兵衛の熱気あふれる説得に対し、藩の執政・河合継之助は首を縦にふろうとはしないのですが、土方歳三のある言葉に反応し・・という展開です。土方がどんな言葉で説得したかは、原書のほうで確認をしてくださいね。


第30巻 討死を覚悟した長岡藩主親子をガドリング銃で救出せよ


第30巻の構成は


第百二十三話 奇兵隊

第百二十四話 ガドリングの咆哮

第百二十五話 天才の共鳴

第百二十六話 遠き手


となっていて、前巻の最後半で会津軍に味方することを決断した、河合継之助がたてた作戦は、長岡攻めのため、今の新潟県中越地方の「小千谷」の集結し始めている新政府軍2万の兵のうち、日本最強ともいわれる長州の陸戦部隊・奇兵隊を殲滅する、という作戦です。

会津藩・長岡藩を中心とする奥羽同盟軍・五千の兵でこの作戦を敢行しようというのですから、相当無茶な話なのですが、継之助には勝算があるようです。


まず、同盟軍は全兵力で新政府軍の守備の薄い小千谷近くの「榎峠」と「朝日山」を奪います。ここは長岡を攻めるうえでは入口の位置にあたる拠点であるため、長州の時山直八率いる奇兵隊を含む新政府軍1万余の軍勢が朝日山攻略に向かい、その兵力と銃砲の能力差で優勢に戦闘を進めるのですが、奇兵隊が山頂から同盟軍を背後から突く作戦を実行したあたりから、河合継之助の罠にはまっていきます。


同盟軍側の桑名の立見鑑三郎の指揮する雷神隊をけちらそうとして、崖近くの袋地におびき出され、背後から河合継之助の長岡藩軍が襲いかかります。そして奇兵隊殲滅の仕上げをするのは、やはり土方歳三ですね。彼と無名ながら奇兵隊きっての槍遣い・時山直八との一騎打ちは原書のほうで。


そして、この朝日山での奇兵隊壊滅でショックを受けている新政府軍を追撃するため、増水している信濃川を渡河しての新政府軍の小千谷本陣攻撃を計画するのですが、これを阻んだのが、河合継之助と土方歳三が連合したことに危機感を覚えた大村益次郎です。彼は江戸にいながら、長岡攻撃の指示を出し、河合と土方の動きに先んじて長岡城攻撃をしかけてきます。


城を枕に討死を覚悟し、河合継之助には自由に戦わそうとする長岡藩主牧野忠訓・忠恭親子を救出するため、継之助は、日本に数機しかないガドリング銃を武器に長岡城を包囲する山形狂介率いる新政府軍へ攻撃をしかけていきます。この攻撃によって藩主たちを脱出させることに成功するのですが、そこまでの激しいバトルは圧巻です。


この戦いによって長岡城は陥落し、城の奪還を目指して攻撃をしかけてくる同盟軍に対し、新政府軍は防御に専念し、戦線は一挙に膠着していきます。そんななか、長岡で一揆が発生し長岡藩軍が鎮圧に追われているとの報せが入ると、

ワタシの最悪の予感があたっていれば

間に合わないかもしれませんが

と大村益次郎と大山弥助の顔色が一変するのですが・・という展開です。


第31巻 河合継之助の長岡城、大村益次郎の遠隔指揮に敗れる


第31巻の構成は


第百二十七話 道なき道

第百二十八話 最後の月

第百二十九話 見果てぬ夢

第百三十話  3人の約束


となっていて、前巻の最後で長岡藩に一揆が起き、河合ら長岡藩兵がその鎮圧にかかりきりになっているという情報が新政府に入るのですが、実はこれが河合らの策略であることがわかります。


新政府軍の参謀・大村益次郎は、北東を八丁堀という深い沼地、西を信濃川の囲まれた長岡城という要害を根拠地にして、北側の街道を固め、城の攻撃に疲弊した長岡藩兵軍を、3万に増強した新政府軍で一挙に壊滅するという作戦を立てているのですが、実は「魔物が棲む底なし沼」と地元でも噂の八丁沼には歩いて渡れる浅地があるという誤情報をまいて新政府軍を撹乱していたのですね。


守りに入っている上に、油断している新政府軍に対し、長岡藩600余の藩兵が奇襲攻撃をかけていきます。この背景には、幕末期に長岡藩士の禄高を統一するなど長岡藩の一体化を図り、兵備を増強して一大強国につくりあげた河井継之助の「藩政改革」が基礎にあり、まさにこの戦いは長岡藩の住民の「国土防衛戦」の様相になっているようです。


この奇襲攻撃により、新政府軍を指揮する山形狂介は城を放棄、信濃川西騎士まで退却をせまられます。


しかし、この朗報の直後、城下に残った奇兵隊の残党により河合継之助が狙撃され負傷。さらに、長岡の一揆の情報に危機感を感じた大村益次郎の献策で、急遽、西郷隆盛が大軍を率いて出撃、この報に動揺した新発田藩が新政府軍に寝返り、戦況は新政府軍有利に転じ始めます。


反抗に転じる山形狂介たち新政府の北陸征討軍が長岡城攻撃を始めるなか、河合たちの決断は・・というところで詳細は原書のほうで。


ちなみに、最後半には、河合継之助の若い頃のエピソードも載っていて、この幕末の大軍師が長岡の地にかけた理由が描かれています。


レビュアーの一言


今回の主人公となる長岡藩は幕末の頃はまだ藩政改革もできておらず、目立たない藩であったといっていいのですが、戊辰戦争が開始後、一気にアームストロング砲やガドリング砲、シャープ銃などの最新鋭の銃で武装し、一大強国となっていっています。

これには、藩士の石高の統一などの藩政改革を断行し、新政府へなびこうとする「恭順派」をおさえたり、江戸藩邸の家宝の売却や米の転売で巨額の軍資金を捻出した河合継之助の功績が大きいのですが、7万4千石の小国を、新政府の大軍との戦乱に巻き込んだことについては、当時の住民の中にも怨みに思う人は多かったらしく、継之助の墓石を鞭打つ人のエピソードが司馬遼太郎さんの短編「英雄児」に書かれています。彼の評価については賛否いろいろあることがわかります。


ちなみに河井継之助を主人公とした初の映画が、2022年に公開される、役所広司さんを主役に据えた「峠 最後のサムライ」ですね。これも原作は司馬遼太郎さんです。

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