登山の素人三人娘の山岳ストーリーが始まる=空木哲生「山を渡る」1・2(ハルタコミックス)

2022年5月7日土曜日

アウトドア

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 運動苦手のインドア娘やゲーム好きなオタクなリケジョ、そして山岳小説にロマンを抱く文学少女といった、およそ「山登り」とは縁のなさそうな三人の女子学生が、なんの間違いが大学入学と同時に「三多摩大学山岳部」に迷いこみ、ゴリラ女子と異名をとる女性部長や冒険を追い求める男子部員2人やOBたちに導かれながら、「登山ガール」に目覚めていく、山岳コミックシリーズ『空木哲生「山を渡る」(ハルタコミックス)』の第1弾と第2弾。


あらすじと注目ポイント


第1巻 登山素人三人娘は、三多摩大学山岳部に絡み取られてしまった


第1巻の構成は


第1話 確保

第2話 体験入部

第3話 三種の神器

第4話 山岳部の安全支点

第5話 未踏の山


となっていて、このシリーズの主要キャストとなるのが、新1年生部員の三人娘。


小さい頃から体が弱く、運動は避けてきたインドア娘・南部真菜

ゲームオタクで、運動することに意味を見いだせないリケジョ・入間聡子

植村直己の著書に山男のロマンを感じて、それを実体験したがっている文学少女・加賀直美


の三人です。


一方、山岳部員のほうは、


脅威の登攀能力をほこり、ゴリラ女と異名をとる山岳部2年・黒木世都子

壊れたメガネと怖い顔がトレードマークながら、実は女性に優しい山岳部3年・金田貞雄(よしお)

クールに山を攻める山岳部3年 草場透


というメンバー


彼らがド素人の三人娘を入部させたのは、これ以上部員が減ると歴史ある「山岳部」が廃部になってしまう危機を迎えているのと、三人の故郷がそれぞれ、秋田、長野。北海道で今後の登山にあたっての無料のベースキャンプが確保できる、という邪な理由です。


ただ、理由は邪であっても後輩の素人部員のフォローはそれは山男・山女の務めとしてきっちりしていて、登山に必要な「三種の神器」(これが何かは本書のほうで読んくださいね」の調達から、初心者の第一関門である東京都の「高尾山」登山など、初歩からの行き届いたレクチャーが始まります。

しかも、体力がなくて運動に自信のない三人娘にゴリラ女・黒木から優しい励ましがされます。また金田の「頭をもっとあげてみろ!」というキツイ言葉も、根性論ではなくて、下を向かず、頭を上げて登れば肺に空気が入りやすく、しかも垂れた頭部は支えるのにエネルギーが使うので疲れやすい、という理論だったものですので、ご承知を。このあたりは真奈ちゃんがしっかり消化してますね。


巻の後半部分では、経費をおさえるため、先輩たちが部室に残していったヤッケや登山靴などを修理したり、自分になじませながら、山の道具を「育てていく」、真菜、イリマー、加賀っちの三人娘の楽しそうなシーンがオススメです。


第2巻 登山素人三人娘は、三種の神器を得て、最初の無謀登山へ向かう


第2巻の構成は


第6話 登ってみたい(前編)

第7話 登ってみたい(後編)

第8話 基礎体力

第9話 ホームマウンテン

第10話 いつものジャンケン

第11話 川を遡れ


となっていて、前半では、前巻で「高尾山」登山で妙な自信をつけてしまった、三人娘が山の魅力にとりつかれ、彼女たちだけで「大山」への登山行へでかけます


「大山」は神奈川県のほぼ中央に位置している1200メートル超の山で、道もしっかりしていて初心者向けの山と言われていますね。麓にある「大山阿夫利神社」へ参る一行の騒動をテーマにした、落語の「大山詣り」で有名ですね。西日本の鳥取県にも「大山」という同じ漢字名の標高1700m超の単独峰があるのですが、こちらは「だいせん」と呼ばれています。


で、彼女たちの装備は、登山部に残されていた使い込まれたレインウェアやピッケル、登山靴という出で立ちなので、他の登山客も山小屋の人も見逃してしまうのですが、登山開始が遅かったため、下山時には日が暮れてしまい、ヘッドランプもない彼女たちはあやうく遭難しかけてしまいます。ただ、この苦い経験で、すっかり「山の魅力」に取り憑かれてしまったようですね。


そして、山岳部の正式メンバーとなった三人娘と黒木・金田・草場の先輩山岳部員の6名は、新人の「通過儀礼」として、「丹沢山系」の丹沢表尾根コースへと向かいます。本書によれば、このルートは山の基本を一通りマスターできる上に、「ガレ場」とか「クサリ場」といった危険ポイントもしっかり用意されている初級者には理想的なトレーニングとなる登山ルートのようです。


ここで、三人娘がどんな経験をしていったのかは、本書のほうでお確かめください。登山後、結構「いい顔」してますね。


レビュアーの一言


登山素人三人娘の山岳デビューとレベルアップが注目されるスタートなのですが、これをレクチャーする、黒木世都子山岳部主将のクライマーとしての腕は見事なものです。

第一弾、第二弾の随所に彼らの、厳しいオーバハングへの攻めが出てきますので、本格の登山マンガファンはそのあたりをお楽しみくださいね。

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