白髪の団子屋の少年は壬生狼にスカウトされ、抜群の推理力を発揮する=安田剛士「青のミブロ」1・2

2023年7月29日土曜日

幕末

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 幕末の京都、厳しい取り調べと剣技の凄まじさで、攘夷派の浪士や倒幕派の諸藩の藩士を恐れさせた近藤勇、土方歳三率いる「新撰組」で、永倉新八から「三匹の狼」と呼ばれた、歴史の渦の中に消えていった三人の少年隊士「ちるぬ にお」「田中太郎」「二代目・斎藤一」の活躍を描いた幕末新撰組シリーズ『安田剛士「青のミブロ」』の第1弾から第2弾。


あらすじと注目ポイント


第1巻 団子屋の白髪の少年「みお」は壬生狼にスカウトされる


第1巻の構成は


第1話 壬生狼と少年

第2話 灰色で揺れる

第3話 泣いていい世界

第4話 友だち

第5話 魂の在り処


シリーズの冒頭はまだ方歳三と沖田総司が京都市中の団子屋「ちりぬや」を訪れるところから始まります。

時代設定は「文久三年三月」となっているので、清河八郎の献策に基づき将軍・家茂の上洛警固のために募集されて上洛した「浪士隊」が分裂し、近藤勇の試衛館派と芹沢鴨の水戸派が京都へ残って、壬生の八木邸や前川邸を屯所にして「壬生浪士隊」を結成したころですね。

当時はまだ「新撰組」とも名乗っておらず、あのシンボルとなったダンダラ模様の羽織もなく、「悪名」はまだ流布していなかったことですね。


この二人が団子屋に入って出会ったのが、このシリーズの主人公の一人、白髪の少年「ちりぬ みお」です。彼はこの団子屋を妹の「いろは」と一緒に手伝っているのですが、経営者の老女と「いろは」とは三人とも血は繋がっておらず、「みお」は寺に預けられていたところをここの引き取られた、という設定です。


で、この「みお」と「いろは」が帰宅途中に、最近出没していた人さらいに攫われそうになるところを土方と沖田に助けられます。実は、この人さらいを捕縛するために、「みお」たちは囮にされていたのですが、一味の一人を斬ろうとする土方に、「その人は(人さらいとは)違います」と声をかけたことから、その観察眼を土方に着目され、浪士組のメンバーとしてスカウトされることになります。


中盤では、新撰組最初の粛清事件といわれる四条大橋での殿内暗殺事件が起きます。この事件は近藤たちによる犯行という説も有力なのですが、本シリーズでは、酔った上での芹沢の犯行とされています。殿内は江戸から芹沢や近藤ともに上洛した設立当初からのメンバーなのですが、もともとは結城藩士で、浪士の募集側の人間です。


芹沢は屯所に帰ると、隊の下働きをしている「田中太郎」という少年に、四条大橋近くの小路で殿内を斬ったので、遺骸の始末をしてこいと命じます。「みお」が彼に同行すると、太郎は見つけた遺骸を穴だらけにして川に捨てると浮かんでこないと言って、何度も剣で突き刺しています。驚いて止める「みお」に彼は遺骸は「もう人じゃない。肉の塊だ」と叫び、虐げられてきた彼の心のうちを「みお」にぶつけてきて・・という展開です。


ちなみに、ここで「みお」は酔っ払って散策すると思えない、寂しい小路で芹沢が殿内を斬ったことに、なにか秘密を嗅ぎつけています。


第2巻 「みお」の洞察力は、芹沢の隊士粛清の本当の理由をつきとめる


第2巻の構成は


第6話 対峙

第7話 悪魔の証明

第8話 不器用者

第9話 居合

第10話 敵の名前

第11話 確かなこと

第12話 志は一つ

第13話 本音

第14話 余所者


となっていて、太郎が遺骸を川に捨てようとするのを止めた「みお」は、この案件を処理は自分にまかせてほしいと太郎に言います。「みお」は旅装姿にした上で、四条大橋の上まで運んで放置しておくのですが、このおかげで武士の仕業ではなく、旅人狙いの盗人の仕業ということで芹沢たち浪士組に疑いがかかることを防いでいます。


ただ、芹沢の指示に逆らったことには間違いないため、「みお」と「太郎」は芹沢や土方たと浪士組の首脳陣の前に呼び出され尋問されるのですが、ここで「みお」はこの酔った上での狼藉と思われた事件に隠された本当の理由を芹沢に告げるのですが・・という展開です。


今巻の中盤では、浪士組の若い「三匹の狼」の残り一人、斎藤一と出会います。彼は若いながら「居合」の腕がすごく、なにか訳ありのようなのですがこの巻では明らかになっていませんね。


で、彼と市中見廻りをしている「みお」は自分の子供を人質にして、暴れている「船蔵」という男に出くわします。彼は妻が貧しい中で病死したことで錯乱し、開国をした「幕府」や「朝廷」の復讐をしようと刀をかざして「御所」の中へ切り込もうとするのですが、それを止めようと「斎藤一」と「みお」が追いかけます。剣をふりかざす船蔵を「みお」が突進で動きを止め、そこに斎藤一の居合が炸裂し・・という展開です。


ちなみに「船蔵」は武士でも浪人でもなく、後巻では「魚屋」であることが判明しています。


後半部分では、将軍警固の目的で上洛したものの、本隊が江戸へ帰還したために幕府の援助がなくなった浪士組のメンバーは、京都守護職となった会津藩へ支援を陽性するために、会津藩主・松平容保が本陣としている「金戒光明寺」へやってきます。そこで会津藩のお抱えとなることの条件として、会津藩士を連続して襲い眼をくり抜いて殺す五人の犯人を退治するよう依頼されるのですが、という展開です。


ここでは、会津の本陣前で、エゲレス人と日本人のハーフである、京の大店の呉服屋のボンボン・世都と出会うのですが、彼はなにか事件に関連していそうな臭いがプンプンです。


レビュアーの一言


この物語の主人公となる少年隊士3人はいずれも京都出身なのですが、延べで424人とも520人とも言われる新撰組隊士の出身地で一番多いのは、やはり近藤勇や土方歳三、沖田総司たちの試衛館勢のいる武州で63名。芹沢鴨たちの水戸派の常州は15名と少ないのは、芹沢鴨の暗殺によってそれ以後の入隊が途絶えたせいでしょうか。

意外に多いのは「桑名」出身と「唐津」出身で、ともに23名となっています。

「桑名」は会津藩主・松平容保の弟・定敬ですし、「唐津」藩主・小笠原長行は幕末に老中・外国事務総裁となり、戊辰戦争では箱館戦争まで転戦した徹底した佐幕派であったことが関係しているのでしょうか。


ちなみに、京都出身は5番目に多い14名となっています。

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