戦争を「数学」で阻止しようとした男の物語、ここに完結=三田紀房「アルキメデスの大戦」37〜38(ヤングマガジンコミックス)

2023年12月23日土曜日

アルキメデスの大戦

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 第二次世界大戦へと進んでいく日本の運命を変えるため、その象徴となる「戦艦大和建造」の運命を変えようと、海軍に入り、内部から太平洋戦争をとめようとする天才数学者の姿を描いたシリーズ『三田紀房「アルキメデスの大戦」(ヤングマガジンコミックス)』シリーズの第37弾~第38弾。


前巻までで自身が構想したものとはかなり違う形で真珠湾攻撃が展開され、部下を失った悲しみと日本の戦争が敗北を向かっていくのを憂慮する「櫂」だったのですが、このタームでは、太平洋戦争のターニングポイントとなるミッドウェー海戦へと進んでいきます。


あらすじと注目ポイント


第37巻 櫂の提言も虚しく、ミッドウェー海戦は世紀の大敗北


第37巻の構成は


第359話 不安の連続

第360話 悪い予感

第361話 元気でまた

第362話 祈り

第363話 飛んで火に入る

第364話 兵装転換

第365話 ミートボール

第366話 命あるかぎり

第367話 1945年

第368話 取り調べ


となっていて、前半部分は、日本海軍の暗号情報を沈没した潜水艦から手に入れたアメリカ軍は、日本海軍の狙いがミッドウェー島だと推測し、総力をあげ迎撃する体制を整えていきます。


一方、日本海軍のほうはミッドウェーへの侵攻とあわせてアリューシャン列島への陽動作戦を計画しています。これは空母戦力の分散を招き、そんなに兵力の余裕のない日本海軍にとって得策ではないと思われるのですが、真珠湾攻撃の成功で慢心している軍人たちには櫂の忠告も全く通じないようです。


ただ、アリューシャン列島への侵攻案はかつて陸軍と海軍との会合の中で、アメリカを牽制する作戦として櫂が提案したものであったはずで、ここらにアイデアマンとして海軍内で一目置かれていた彼の才能が悪い結果を招いてしまっているように思えます。


そして、アメリカ軍への侮りと慢心、それらに起因すると思われる数々の作戦展開上のミスがおきたミッドウェー海戦の結末とその後の戦況については原書の中盤部分で。


後半部分では、戦況を最後まで見届けることを誓った櫂の述懐から場面がとんで、一挙に終戦を迎えています。


櫂は、戦犯として巣鴨拘置所に留置、いわゆる「巣鴨プリズン」の一人となっています。そして、彼は戦争を企画した首謀者の一人としてGHQから尋問を受けることとなり・・という展開です。


第38巻 GHQから厳しい尋問を受ける「櫂」の運命は


第38巻の構成は


第369話 自責

第370話 第三種軍装

第371話 ある女性

第372話 あなたが帰ってくるまで

第373話 玉砕

第374話 これから

第375話 武士道

第376話 大和

第377話 東條英機

第378話 アルキメデスの大戦


となっていて、冒頭では開戦時、ルーズベルト大統領と単独で会見したことや、真珠湾攻撃の際、空母「赤城」に乗船して最前線で作戦に参加したことが災いして、櫂は戦争の主導者として厳しい尋問を受けています。


自分は戦争を止めようとしたことを主張する櫂なのですが、それが聞き入れられるわけもなく、絞首刑を覚悟した彼は死刑となる前に、いままでの経過を思い出し、一冊のノートへ記していきます。


さらに、アメリカ軍側に正式記録として残すために、アメリカ軍兵士を大量に戦死させた張本人として彼を敵視うるデビット・クロス陸軍少佐の尋問にも積極的に応じていきます。


ここからは、駆け足でミッドウェー海戦以後の櫂の人生が回顧されるのでチェックしておきましょうね。


さらにここでは、櫂の恋人であった芸者の「ヒサ」や彼がアメリカへの留学を取りやめ、海軍へ入るきっかけとなった「鏡子」の様子などが明らかになっています。


そして全てを記録し、語った櫂は処刑の日を待つのですが、ここで第二次大戦後の国際情勢が彼を別の運命へと導いていきます。


ソ連に主導による共産勢力が中国や朝鮮半島で優勢となってきて、アメリカのアジア支配が計画していたようには進んでいきません。


このため、マッカーサーは、日本人というものを理解するために「櫂」と対面で会います。そして、それがアメリカの本国政府の計画する日本の植民地化や領土化の構想を白紙にすることに繋がり・・という展開です。


マッカーサーの意向は通常なら、櫂が受け入れるはずもないのですが、最終盤での東條英機からの櫂への「頼み」が彼を翻意させたものと思われます。


レビュアーの一言


第38巻のマッカーサーとの面談の際に、櫂は戦艦「大和」が日本の象徴で史上最大最強と位置づけ、それが連合国との決戦の最終兵器として本土に残されることなく、沖縄戦へ片道燃料で送り出された意味を「美しく哀れに散ることで、日本という国を真っ白な無の世界に戻したかった」とした」上で

「大和」は日本国民に魁し

壮烈な轟沈を遂げることで 

改めて皆に「敗戦」の事実をつきつけた

と位置づけています。


このあたりが、このシリーズで徹底的に「大和」にこだわってきた理由があるのでしょうね。


この巻で2015年から続いてきたシリーズも終幕となるのですが、太平洋戦争の「新たな解釈」と位置づけられる作品となるのではないでしょうか。 

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