GHQを離れたマードックと勘九郎たちは新・戦闘組織を設立し、玄森と正面衝突=大上明久利「極東事変」4・5(ハルタコミックス)

2023年12月21日木曜日

極東事変

t f B! P L

 1945年9月。連合国へ無条件降伏し、アメリカの進駐軍が統治する東京を舞台に、戦時中、中国東北部で兵士の感染予防や衛生体制の研究とともに細菌戦に使用する武器や細菌と人体実験を行っていたといわれる日本陸軍731部隊が作り出した生体兵器「変異体(ヴァリアント)」の本土決戦部隊「奇兵隊」と彼らを殲滅しようとするGHQとGHQに所属するヴァリアント・砕花と帰還兵・近藤勘九郎の戦いを描く、仮想戦後史マンガ『大上明久利「極東事変」(ハルタコミックス』の第4弾から第5弾を解説。


あらすじと注目ポイント


第4巻 GHQを離れたマードック特別参謀は、新たな戦闘部隊を結成する


第4巻の構成は


第十六話 クロスロード

第十七話 バッドトリップ

閑話休題

第十八話 Noehere to R

第十九話 身辺整理

第二十話 代々木上原


となっていて、前巻の終盤で、GHQの治安衛生局の特別参謀・マードックが、「奇兵隊」の柳巴菜をGHQの事務所の門前で狙撃したため、反米感情が激化し、奇兵隊のテロ行為と反米派市民による暴動が頻発する中、マードック参謀が解任されます。形式的には、狙撃の責任をとって、ということになっているのですが、実情は制約の多いGHQの組織から離れ、「奇兵隊」及び首領の玄森の抹殺に専念する組織を密かに結成するためです。


この組織には砕花や勘九郎、治安衛生局のグラハム、アレックスほか主要メンバーも加わることになっていいて、事実上は今までの能力を温存した「治外法権組織」の創設ですね。彼らは「慕鳥」の経営する酒場に拠点を構え、闇市の皆の協力を得ながら、玄森狩りへ乗り出していきます。


一方玄森たちのほうは、ソ連共産党のエージェントもメンバーに組み入れながら、行動をエスカレートしていきます。一般人に、731部隊が使用した薬剤を注射して、新しい「変異体(ヴァリアント)」を生みだしていきます。


この動きに対し、アメリカの戦略情報局が玄森の暗殺に乗り出すのですが、これは逆効果で・・という展開です。


後半部分では、終戦時に立案はされたものの実行されなかった「決号作戦」つまり、日本本土へ上陸してくる連合国軍に玉砕攻撃をしかける作戦の実行を行う前に、連合国側の士気を削ぐため、アメリカ軍の軍属や非武装の民間人の居住する「ワシントンハイツ」への攻撃をしかけた玄森の部下の柳、森山、ソコロフの部隊との戦闘が始まることとなります。


このソコロフからは、終戦処理で後れをとり、北海道占領ができなかったソ連が戦後の国際政治の一環として玄森たちに武器援助などがされていることが告げられ、国内問題かと思われていたこの事件が実は、国際政治の真っただ中にあることがわかってきます。


第5巻 誘拐されたマードック特別参謀の子供たちを奪還せよ


第5巻の構成は


第二十一話 勝者と敗者

第二十二話 Godmother

第二十三話 足掻く者たち

第二十四話 愚連隊此処に在り

第二十五話 死神慕情


となっていて、前半部分では、ワシントンハイツを襲撃した柳巴菜たちを撃退し、最後まで残留していた、ソ連軍から派遣され玄森たちに協力していたロシア人奇兵・ソコロフと勘九郎との一騎打ちが展開されています。


少しネタバレしておくと、この戦闘の結果、ソコロフも退却するわけですが、この隙に柳巴菜の部隊がマードック元特別参謀の息子と娘を略取し、アジトへと連行してきます。


ソコロフの部隊はいわばこの作戦を実行するための囮とされたわけで、この卑劣なやり方に怒るソコロフを玄森は投げ飛ばし、彼へと忠誠を強要します。玄森はアメリカとソ連とのパワーバランスを上手く利用しようとしているのですが、果たしてそううまくいくか、というところですね。


そして、勘九郎たちは、舞島麻衣の力も借りて、玄森たちのアジトの場所を探り出し、二人の子供の奪還作戦に乗り出していきます。


後半部分では、二人の子供を助け出し、千住にあった玄森のアジトをぶっ潰した勘九郎ともと治安政局のメンバーは、逃れた玄森が潜伏している軽井沢へと向かいます。そこで、玄森の残党との戦いが始まるのですが、この戦いで、こちら側の戦力も次々と犠牲になっていくのですが、詳細は原書のほうで。


レビュアーの一言


実は、この紹介記事の投稿時、すでに雑誌連載のほうは終結していて、2024年春にシリーズの単行本最終巻が発刊される予定になっています。


6巻での終了ですので、「打ち切り」の噂もちらほらあるのですが、終戦後、日本の治安が回復するまでの短い期間にぶち込んだフィクションというのが構成が難しかったのか、それとも、戦後はすでに遠ーくなってしまった、ということなのか、あるいはそのどちらも、かもしれません。


ただ、今までタブーのようにマンガの舞台となることのなかった終戦直後の混乱期を、占領政府であるGHQの秘密部隊という形をとって描いたこの作品は貴重なものといえるのではないでしょうか。

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