スキピオ率いるローマ軍は反転攻勢。ハンニバルのイベリアの根拠を陥落する=「アド・アストラ」9・10

2024年1月14日日曜日

アド・アストラ

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 紀元前3世紀、地中海をその支配下に収めつつあった強国「共和政ローマ」に反旗を翻し、ローマ史上最大最悪の苦難をもたらした、アフリカ大陸北岸にあったフェニキア国家「カルタゴ」の将軍・ハンニバルと、彼を斃し、ローマを滅亡の危機から救った救国の武将「スキピオ」の戦いを描いたローマ戦国史『カガノミハチ「アド・アストラ」(ヤングジャンプコミックスDIGITAL)』シリーズの第9弾から第10弾。

前回では、猛将マルケルスのもとで修行を積んでいたスキピオがその頭角を見せ始め、ガイウスの仇敵であったマハルバルを斃すなど、ハンニバルの側近たちが次々と欠けていったのですが、今回は、ローマのカルタゴ攻撃の障害となっていたシラクサの攻略を果たすとともに、カルタゴのヨーロッパでの根拠地であったイベリアの攻略にスキピオが乗り出していきます。


あらすじと注目ポイント


第9巻 シラクサ攻略に成功したスキピオはイベリアのハンニバルの根拠地攻略へ向う

第9巻の構成は

第52話 天才数学者の最期
第53話 戦況刻々
第54話 第一歩
第55話 新指揮官
第56話 満月
第57話 変わりゆく男

となっていて、前半部分は前巻に引き続き、シラクサでの戦況が描かれます。マケドニアの使節・ダミッポスになりすまして潜入し、アルキメデスの邸宅へ入り込んだスキピオだったのですが、ハンニバルによって送り込まれたヒポクラテスとエピキデスによって見抜かれ、追手がかかります。しかし、先王の意思に反してローマに自ら発明したものを使ってローマに対抗することになったことを悔やんでいるアルキメデスの助けでなんとか脱出することに成功します。

ここで、アルキメデスから教えられたシラクサの弱点をマルケルスに問い詰められるところで、今までローマ軍を苦しめてきたアルキメデスの助命をめぐって喧嘩騒ぎになるのですが、詳しくは原書のほうでどうぞ。

ただ、残念ながら、シラクサに突入したローマ兵によってアルキメデスは殺害されることになるのは付け加えておきますね。

そしてイタリア半島のほうでは、ローマの同盟都市でありながらローマに反旗を翻したカプアの包囲が続く中、ハンニバルはローマへの侵攻を始めます。ローマの貴族や市民に直接恐怖を与え、カプア包囲を解かせようという作戦なのですが、ここはファビウスの鉄の統治の前に阻まれます。

この当時からローマ人(イタリア人)は軟弱っぽい印象を持たれていたようですが、なかには剛腕の政治家も出現したというのが「ローマ」の強さなんでしょうね。そして、ハンニバル軍が退いた後のカプアの運命は、多くの読者の想像するとおりです。ただ、この時期、ローマ兵に蹂躙されたものの以後の歴史でもイタリアで重要な位置を占めていたことは間違いありません。

中盤では、舞台がイベリア半島に転じます。ハンニバルの本拠地であったイベリアで、残留軍のアルプス超えを食い止めていたローマ遠征軍がハンニバルの弟「ハッシュ」によるイベリア傭兵の抱き込み戦略の成功と東ヌミディアの王子・マシニッサの参戦によっいぇ父とおじが戦死してしまいます。

さらに、ハッシュをいったんは追い詰めながら逃げられた、父スキピオの後任の「ネロ」の失策を受けて、若年ながらイベリアの執政官代理として、イベリアの軍事を取り仕切ることとなります。

そして、イベリアに赴任したスキピオは、ハンニバルの根拠地「カルタゴ・ノヴァ」攻略に乗り出していくのですが、ここで、スキピオの戦略家としての才能が大発揮されています。満月の夜に仕掛けた彼の作戦については原書のほうでお確かめください。


第10巻 猛将・マルケスス、ハンニバルの謀略の前に斃れる

第10巻の構成は

第58話 油断
第59話 ローマの剣マルケルス
第60話 餌
第61話 ハッシュの策
第62話 思惑違い
第63話 ネロの復讐

となっていて、イベリアの根拠地「カルタゴ・ノヴァ」がスキピオによって陥落させられたという情報を聞き、ハンニバルは戦局を一挙に変えるため、ローマ軍の総帥・マルケルスの謀殺を計画します。このハンニバルの謀みに対して、マルケルスのほうは無防備にも、小部隊を率いて両陣営の中間地点にある丘の実地見分に出かけるという不用心な行動にでてしまいます。

見分に出る前にスキピオのイベリアでの戦績を聞いたところでもあり、さらにこれまでハンニバルと互角に戦ってきた、という自負もあったための「油断」がでたといわざるをえませんね。

当然、この好機を見逃すハンニバルではなく、ヌミディア騎兵の奇襲を仕掛けてきます。自らを取り巻く敵兵をものともせず、ハンニバルを仕留めて一発逆転を図るため、単身で敵陣へ乗り込むマルケルスだったのですが、多勢に無勢ということで、ヌミディア騎兵の放つ投槍にハリネズミのようになって斃されてしまいます。

中盤は、イベリアでのスキピオvsカルタゴ勢の戦いが中心になります。カルタゴ・ノヴァを陥としたスキピオはその勢いで、カルタゴ軍の主力であるハッシュの軍を追っていきます。スキピオは本拠地を陥とされたハッシュ軍は、ハンニバル本軍と合流するためアルプス越えを狙っていると推測するのですが、ハッシュ軍はアルプスとは反対側のイベリアの西へあるバエクラへと軍をすすめていきます。

これはカルタゴ軍の別勢力である「マゴ」軍や「ジスコーネ」軍との合流を目指していると踏んだスキピオは、バエクラの砦にハッシュたちカルタゴ軍とマシニッサ率いる東ヌミディア軍を包囲するのですが、実はハッシュはここのスキピオたちローマ軍をひきつけておいた上で、別の進路、アルプス越えをすることを考えていて・・という展開です。

ローマ軍を見事に欺いたと見えたハッシュ軍だったのですが、実はこのアルプス越えこそが、スキピオが「ネロ」と約束した策略で、と策略の打ち合いが続いていきます。


レビュアーの一言

ここまでハンニバルのうってくる作戦はことごとくローマ軍を翻弄し、第二次ポエニ戦争はカルタゴ軍優位に進んできたのですが、今回のスキピオによるイベリア侵攻によって、風向きがローマ側に吹いてきたような感じがします。

この原因は、カルタゴの主力がイベリアや北アフリカに駐在していて、本国の政敵の邪魔によって傭兵しか戦力補充できないハンニバル軍の脆弱さがでたといえるのですが、多くの兵士を失っても失っても兵員を補充してくるローマ軍のしぶとさも大きく影響していると思われます。

このあたりは、第8巻でシラクサの先王がアルキメデスにローマを敵にまわすなと忠告し、その理由として「ローマ人は世界で一番負けず嫌いな連中だ。絶対に負けを認めない」といったローマ人の意気地がでているような気がします。


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