オリンピック出場を目指していた女子柔道選手・黒沢心が心機一転、大手出版社・興都館の青年マンガ雑誌「バイブス」の編集部員となり、一癖も二癖もある編集者たちに揉まれながら、変人やナイーブなマンガ家たちを担当しながら編集者として成長していく、編集者のお仕事系マンガのシリーズ「重版出来!」の第20弾。月刊スピリッツで2012年11月号から2023年8月号まで11年間続いてきたマンガ編集者を描いたシリーズの最終巻です。
前巻までで週刊バイブスの7言語に対応した同時配信を実現するために、今まで編集者生活で培ってきた人脈を総動員する主人公「黒澤心」の姿と周辺に出没するストーカーに怯える、かつての人気漫画家・牛露田獏の娘・アユと彼女に密かに恋する人気漫画家の中田伯が描かれていたのですが、今回は最終巻とあってそれらの総決算がされていきます。
あらすじと注目ポイント
最終巻の第20巻の構成は
第百十四刷 気をつけて!
第百十五刷 珈琲時間!
第百十六刷 恋!
第百十七刷 ひとりでみんなで!
第百十八刷 自在!
最終話 重版出来!
となっていて、冒頭は週刊バイブスの編集部を訪ねてきた牛露田アユと黒澤とアユの回りに出没するストーカー兼クレーマーの話題から始まります。決まった曜日の決まった時間帯に店にやってくる中年のストーカー兼クレーマーなのですが、どうやらアユの住んでいる団地にも出没氏はじめたようで、さらに恐怖心をかきたてられるアユを黒沢と中田伯の固いガードが始まり・・という展開です。
このタームの最後では、アユにつきまとう中年男の勝手な「教育心」が明らかになるのですが、それを呼び込んだ理由が、アユちゃんの素直さというところで怒りを増幅させる人も多いかもしれません。
ついでに言っておくと、ここで元オリンピック柔道候補選手だった黒沢の強さが発揮されています。
中盤では、人気はあっても賞と無縁だった漫画家「高畑一寸」がヨーロッパの有名なアート系の賞を受賞することになり、その記念パーティーを週刊ヴバイブスが主体となって実施することとなり、黒沢がその担当となるのですが、賞の受賞で沸き立つ編集部と高畑なのですが、その陰で高畑の憧れのアイドルが「新たな挑戦」へ飛び立とうとしていています。
1年間、芸能界を離れてしまので、忘れ去られることを心配する所属事務所や仕事仲間から引き止められる彼女なのですが、果たしてその決断は・・という筋立てです。
この挑戦は、7言語対応の同時配信の成功に安堵する黒沢を新たな挑戦、字が認識できない読字障害・ディスレシアの少女の「マンガを自分ひとりの力で読みたい」という願いをかなえようと奮闘が始まります。
そして最終タームでは、アユのストーカーを捕まえたことから、父親への拘りから脱出することのできた人気マンガ家・中田伯は、人嫌いだったころは考えてもいなかった「新刊のサイン会」を開催するのですが、それは彼だけでなく、黒沢たちの新たな出発も意味していて・・ということで、人気シリーズ「重版出来」のエンディングを噛み締めてくださいね。
レビュアーの一言
漫画原作のテレビドラマ化をめぐって不幸な出来事がおき、マンガ制作側と映像制作側との関係性が問われているときに、マンガ編集部ものの最終話レビューか、という気もするのですが、マンガ家と編集者の関係、マンガ家とファンと編集者の関係、そして、マンガ家+編集者とアニメ製作者の関係というマンガ関連の諸問題についての「マンガ家」側の視点を知りたいむきにはうってつけのシリーズだと思います。
マンガ製作という閉じられた世界の「中の人」のドタバタ活劇としてスタートしたシリーズなのですが、最後のほうでは泣かせるヒューマンドラマに仕上がっています。
さらに少しネタバレしておくとアユちゃんのお父さんは失踪したままですし、中田くんの恋も未完結です。アユちゃんが大学進学を果たした後か、夢をかなえて編集者になったあたりでは何か変化があるのか、と期待させるところです。原作者と脚本家との騒動が収まったあとに、アユちゃんがもう少し大きくなってからの「後日譚」が出るといいな、と思うところです。
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