ドラキュラ伯爵のモデルとなった串刺し公・ヴラド三世、登場=大窪晶与「ヴラド・ドラクラ」1・2

2024年2月11日日曜日

ヴラド・ドラクラ

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 15世紀の中頃、現在のルーマニア南部にあったワラキア公国で、周辺のハンガリーなどの大国の向こうをはって、当時ヨーロッパ・オリエント地域で最強国であったオスマン帝国に対抗し、その果断さと残虐さで「串刺し公」と呼ばれ、吸血鬼ドラキュラのモデルとなった「ヴラド三世」の即位から没落までを描いた東ヨーロッパ戦国物語のシリーズ「ヴラド・ドラクラ」の第1弾から第2弾。

あらすじと注目ポイント

第1巻 串刺し公・ヴラド三世は、貴族の反乱を血まみれで鎮圧する

第1巻の構成は

#1 傀儡
#2 空席
#3 真価
#4 決議
#5 狼煙

となっていて、シリーズ冒頭は1456年9月、現在の南ルーマニア、当時のワラキア公国でハンガリーとオリエントの超大国、オスマン・トルコへ対抗する防衛協定の締結直後、そのオスマン・トルコから多額の貢納金を要求する使者が到着するところから始まります。

この要求に対し、実質的にワラキア公国を牛耳っていた地主貴族(ポイエリ)たちは、ハンガリーから救援が来ることを頼み、拒否するようこの物語の主人公であるワリキア公「ヴラド3世」に強要しようとするのですが、彼はこれを拒否し、オスマン・トルコの要求を呑んでいます。

当然、貴族たちは猛反発し、国の3分の1の領土を有する地主貴族の有力者「アルブ」に頼み込んで、これを取り下げさせようとうるのですが・・という筋立てです。

少し解説しておくと、当時、ワラキアは当時の大国ハンガリーとオスマン・トルコに挟まれ、両国の思惑やそれを利用して勢力を拡大しようとする貴族たちによって国王が暗殺されたり、追放されたりして平均在位期間3年という短さで交代しています。このため、国王の権威と権力は失墜していて、貴族たちの賛同なくしては国政も進められないし、下手をすると王位から追放されてしまうという情勢です。

しかし、若い頃、オスマン・トルコに人質として暮らし、現在のスルタン「メフメト2世」の怖さを知っているヴラドはこの拒絶を理由にしてオスマン・トルコが侵攻してくるのを阻止しようとし、あえてアルブのもとを訪ねて・・という展開です。

ここらあたりまでは、地主貴族たちの圧迫の前に何もできない、弱小国王の姿が描かれているのですが、ここから中盤にかけては、貴族たちに侮らせておいて、有力貴族の相続争いに密かに絡んで、味方となる人物に家を継がせたり、暗殺された父・ヴラド2世の腹心を復権させたり、さらには貴族や外国商人に搾取されていた自国商人を味方につけたり、と自勢力を拡大させていっています。

そして、勢力が充実したところで打った手が、親友・ステファンを彼の母国モルダヴィア公国の公座へ復帰させるために出兵を利用した誘導で、これに反対し兵を上げた貴族たちの粛清へと乗り出していきます。

ここで注目しておくのは、投降した貴族に、それまで味方だった貴族の首を斬らせ、それを反対派貴族の陣へ投げ込んで降伏を迫るというやり方です。ここらから恐怖でもって貴族たちを従わせた「串刺し公」の発端が見え始めているようです。


15世紀の中頃、現在のルーマニア南部にあったワラキア公国で、周辺のハンガリーなどの大国の向こうをはって、当時ヨーロッパ・オリエント地域で最強国であったオスマン帝国に対抗し、その果断さと残虐さで「串刺し公」と呼ばれ、吸血鬼ドラキュラのモデルとなった「ヴラド三世」の即位から没落までを描いた東ヨーロッパ戦国物語のシリーズ「ヴラド・ドラクラ」の第1弾から第2弾。


あらすじと注目ポイント


第1巻 串刺し公・ヴラド三世は、貴族の反乱を血まみれで鎮圧する

第1巻の構成は

#1 傀儡
#2 空席
#3 真価
#4 決議
#5 狼煙

となっていて、シリーズ冒頭は1456年9月、現在の南ルーマニア、当時のワラキア公国でハンガリーとオリエントの超大国、オスマン・トルコへ対抗する防衛協定の締結直後、そのオスマン・トルコから多額の貢納金を要求する使者が到着するところから始まります。

この要求に対し、実質的にワラキア公国を牛耳っていた地主貴族(ポイエリ)たちは、ハンガリーから救援が来ることを頼み、拒否するようこの物語の主人公であるワリキア公「ヴラド3世」に強要しようとするのですが、彼はこれを拒否し、オスマン・トルコの要求を呑んでいます。

当然、貴族たちは猛反発し、国の3分の1の領土を有する地主貴族の有力者「アルブ」に頼み込んで、これを取り下げさせようとうるのですが・・という筋立てです。

少し解説しておくと、当時、ワラキアは当時の大国ハンガリーとオスマン・トルコに挟まれ、両国の思惑やそれを利用して勢力を拡大しようとする貴族たちによって国王が暗殺されたり、追放されたりして平均在位期間3年という短さで交代しています。このため、国王の権威と権力は失墜していて、貴族たちの賛同なくしては国政も進められないし、下手をすると王位から追放されてしまうという情勢です。

しかし、若い頃、オスマン・トルコに人質として暮らし、現在のスルタン「メフメト2世」の怖さを知っているヴラドはこの拒絶を理由にしてオスマン・トルコが侵攻してくるのを阻止しようとし、あえてアルブのもとを訪ねて・・という展開です。

ここらあたりまでは、地主貴族たちの圧迫の前に何もできない、弱小国王の姿が描かれているのですが、ここから中盤にかけては、貴族たちに侮らせておいて、有力貴族の相続争いに密かに絡んで、味方となる人物に家を継がせたり、暗殺された父・ヴラド2世の腹心を復権させたり、さらには貴族や外国商人に搾取されていた自国商人を味方につけたり、と自勢力を拡大させていっています。

そして、勢力が充実したところで打った手が、親友・ステファンを彼の母国モルダヴィア公国の公座へ復帰させるために出兵を利用した誘導で、これに反対し兵を上げた貴族たちの粛清へと乗り出していきます。

ここで注目しておくのは、投降した貴族に、それまで味方だった貴族の首を斬らせ、それを反対派貴族の陣へ投げ込んで降伏を迫るというやり方です。ここらから恐怖でもって貴族たちを従わせた「串刺し公」の発端が見え始めているようです。


第2巻 串刺し公・ヴラド三世は門閥貴族を大量処刑する

第2巻の構成は

#6 襲撃
#7 政敵
#8 策略
#9 帰趨
#10 排斥
#11 訣別

となっていて、反対派貴族の重鎮・アルブが倒れて療養に入ったため、勢いを失いつつある地主貴族勢力なのですが、このチャンスを利用して、ヴラドは近衛兵を解体し、死刑執行人や自警団、元盗賊などを集めた公親衛隊を組織して、直属兵づくりを始めます。発想の源はオスマン・トルコの「イェニチェリ」のようで、貴族の伝統、ヨーロッパの伝統にこだわらなかった彼の姿がみてとれますね。

しかし、ヴラドが自勢力を拡大していくのを良しとする地主貴族たち反・君公派であるはずもなく、ハンガリー領である南トランシルヴァニアでのヴラド軍にみせかけての村の焼き討ちと強奪、さらに前君公の息子「ダン・ダネスティ」を擁立しての公座奪還とヴラド三世を追い落とすための手を打ってきます。おまけに、「ダン・ダネスティ」擁立にはハンガリー王が絡んでいるだけに厄介ですね。

この動きを掴んだヴラドはハンガリー王と対立を深めているハンガリーの有力貴族フニャディに接近して、ハンガリー国内を二分させて動きを封じるとともに、国内に潜入して蜂起を狙うダネスティ派に圧迫を加えるのですが、これはヴラドたちの側近たちへのテロ行為を生むことになります。

そして、側近たちを殺害され、意気消沈していると見せかけたヴラドは油断しているコドレアたち地主貴族の反・君公派を公室評議会に集まっているところを見計らって一挙に捕縛。そして、反逆者として処刑を開始します。自分たちを処刑すれば、国が立ち行かなくなるとなおも言い立てる彼らを待っていたのは、当時、一般人への見せしめ刑として行われていた極刑による処刑で・・ということで、「串刺し公」の公式デビューです。


レビュアーの一言

反対派貴族や一族を処刑して串刺しにして見せしめとしたりして、その残虐性のほうが強調されるヴラド三世なのですが、脆弱な権力基盤にもかかわらず、反対派を切り崩し、勢力を拡大していく冷徹さは見事です。

これは幼少期にはオスマン・トルコに人質に出されて数年間を過ごし、父と兄が暗殺された後、ワラキア公となっていた別家のヴラディスラフ2世を追放して公座を取り戻すも、2ヶ月で再度奪還されて祖国を追放されて亡命生活を余儀なくさせられる、といった徳川家康ばりの苦難人生が生み出したもののように感じます。

さらに、「串刺し」という残虐な処刑法を見せつけて反対派貴族や人々を恐怖で支配したやり方は、比叡山の焼き討ちや長島の一向一揆の「根切り」で「第六天魔王」と呼ばれた織田信長も彷彿とさせます。


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