秦・趙激突!番吾の戦いの結末は = 原泰久「キングダム」72・73(ヤングジャンプコミックス)

2025年10月1日水曜日

キングダム

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 中国戦国時代の末期、中華統一を目指す秦王「政」と戦争孤児の下僕からはいあがり、天下の大将軍をめざす「信」の属する秦国と周辺諸国の武将たちとの戦いを描く中華大スペクタクル「原泰久 「キングダム」(ヤングジャンプコミックス)の第72巻〜第73巻。


肥下の戦いで趙の宰相・李牧の作戦により六大将軍の一人桓騎を失うなど大敗北から一年後、新たに大軍を編成し、王翦を総大将として趙の北部へ攻め込んだ秦軍25万と、周到な策をこうじて迎え撃つ李牧と謎の精強軍・青歌をひきいる司馬尚の趙軍30万が激突した「番吾の戦い」が決着します。


あらすじと注目ポイント


第72巻 秦と趙の主力軍激突。その中で李牧の知略が冴え渡る




第72巻の構成は


第780話 中央軍の攻防

第781話 二傑の加勢

第782話 総大将の進路

第783話 子供じみた手

第784話 青歌の強さ

第785話 大女

第786話 覚悟の必要

第787話 狼血の契り

第788話 王翦の想定

第789話 最後の壁

第790話 青歌の血


となっていて、冒頭では、第71巻で趙左翼を叩くため前進したところに出てきた李牧の軍に誘い出され、主戦場から飛信隊3万が離脱した状態で、秦中央軍は趙中央軍と激突します。兵力差は秦中央軍12万、趙中央軍10万と秦軍が2万上回っているのですが、趙左翼軍が7万控えているので、混戦となれば秦にとってあまりよくないことになりそうな予感がします。


中央軍同士の激突は、まず亜光軍と楽彰vsカン・サロ軍、ジ・アガvs倉央軍の戦いから始まります。


カン・サロ、ジ・アガともに今回の戦いで李牧が秘密兵器として繰り出した「青歌」軍の二大将軍なのですが、秦軍はその詳細を把握しておらず、苦戦を強いられます。この二人に立ち向かったのが、今まで王翦軍の後方遊軍としてその力を隠していた田里弥軍です。


双方とも強兵であり、一歩も譲らない形で拮抗した戦いが続くのですが、ここで登場するのが青歌軍を率いる司馬尚の軍勢です。司馬尚軍は拮抗する戦いに介入するかと思いきや、戦闘の隙間を縫って前進していきます。司馬尚の狙いは実は秦軍の総大将である王翦で、という展開です。


この王翦めがけて突っ込んでいく司馬尚と一歩もひかず彼を待ち受ける王翦を軸に、秦、趙双方の軍の猛者たちが戦いを繰り広げます。とりわけ、王翦軍の猛将・倉央の恋人の女将・糸凌とジ・アガとの死闘は見ものです。

途中、倉央と糸凌のなれそめのエピソードやカン・サロとジ・アガとの義兄弟の血盟のエピソードがありますので、これは本書のほうで確認してくださいね。


秦軍左翼のほうでは、楊端和+山の民軍が、趙の舜水樹、馬南慈率いる趙右翼軍9万と戦闘を開始します。激突の中でメラ族のキタリが主戦場を突っ切って「番吾」の城へと向かいます。趙右翼軍の意表を突く戦い方なのですが、これは李牧の想定の内のようですね。


そして、信の率いる飛信隊は、草原の真ん中に築かれた土塁の砦に逃げ込んだ李牧の軍を包囲し、砦攻めを開始します。守りが堅いといっても小さな城なので、飛信隊の猛撃には耐え切れず、門が破られてしまいます。李巻たちを捕らえるため、砦内に突入した「信」たちだったのですが・・・、といったところで李牧の仕掛けた罠にまんまとひっかかったことに気づき、急いで本体へ戻ろうとするのですが・・。


巻の終わりのあたりでは、王翦めがけて突撃してきた司馬尚だったのですが、倉央や亜光が駆けつけてきたことで一転して不利になるところで、司馬尚の檄で青歌兵の士気が再び上がっていきます。


第73巻 秦軍、大敗北。それは秦国に大変化をもたらす




第73巻の構成は


第791話 他人の戦争

第792話 脱出の責任

第793話 本物の殿(しんがり)

第794話 根を残す

第795話 勝つために

第796話 一縷の望み

第797話 砕け散る

第798話 愛する女

第799話 戦争の輪

第800話 三つの柱

第801話 復活の一歩


となっていて、今巻では第71巻、第72巻で語られてきた「番吾の戦い」の結末と戦後処理が語られます。


まず冒頭のところでは、李牧と青歌、司馬尚とが出会った際の回想の後、いよいよ王翦へ司馬昭率いる青歌軍が攻めかかります。王翦を守る親衛隊も次々と討たれ、王翦の首も危なくなったところで、瀕死の重傷を負いながらもかけつけた王翦軍の主力であった亜光、田里弥の犠牲のもとに王翦は脱出を図ります。


ただ、司馬尚の本軍とは離れたとはいっても趙軍の兵士に取り囲まれ、これまでか、と思われたところで、現れたのは王翦の息子・王賁の部下・亜花錦で・・という展開で、今回も曲者の亜花錦がいい働きをしています。


そして戦況のほうは王翦の脱出によって王翦軍は総崩れ。「信」「楊端和」「王賁」たちも残兵をまとめながら戦場からの脱出を図っていくこととなります。


今回の戦いでも唯一に近い戦果は、「肥下の戦い」で捕虜になっていた「壁」が番吾の城を攻めたメラ族のキタリたちによって救出されたことでしょう。秦軍がこのまま退却していたとすれば、「壁」たち肥下の戦で捕虜になって人々趙で獄死していたでしょうから、独断で番吾の城を攻めたキタリの働きは見事です。


後半からは、「肥下の戦い」と「番吾の戦い」の二戦で敗北し、20万の兵を失い、中華統一に赤信号が灯った「秦」国内の情勢が中心となるのですが、その前に、ジ・アガとの戦闘で命を落としたと思われていた倉央軍の女性将軍・糸凌のその後と彼女を弔うために秦軍を離脱し、青歌軍へ投じた倉央の純愛エピソードが語られます。このエピソードに深く関連するのが、青歌軍の猛将のカン・サロです。少しネタバレすると彼は倉央と糸凌を処刑せず秦へ送還するのですが、ここらはいずれやってくる秦の趙攻撃の伏線となっているのでしょうか


さて、二大敗戦を受けた秦国の行く末ですが、あくまでも中華統一の志を失わない秦王「政」が頼みとするのは、やはり軍師・昌平君です。通常のやり方では到底復活できない秦国の状況を大逆転させる方策として、彼は「三つの柱」を立てます。その内容は・・というところで、詳細は原書のほうで。少しネタバレしておくと、現在では当たり前のようなことですが、交通の不便な当時としては画期的ながらも実現が相当難しい対策ですね。


さらに付け加えておくと、秦国を二度も破り、国民からの人気も高くなっている「李牧」をよく思わない勢力というのは当然出てくるわけで、ここらが後の秦と趙との再戦の際に勝敗を分ける鍵となりそうです。


レビュアーからのひとこと


今回、秦が破れる原因となったのが「青歌」の軍勢なのですが、この国は趙国内と国境付近にあり、衛と近いためたびたび攻め込まれているという地理関係の設定のようです。さらに、青歌と李牧の縁は彼が失脚中に訪れて協力を依頼したことに始まっていて、その際の住民との話を見ると、戦乱を避けた流民たちが作り上げた半独立国のようです。


ただ、「青歌」が実在したかとなるとそこは「?」で、架空の国の可能性が高いようですね。


では「司馬尚」は、となるとこれは司馬遷の史記「趙世家」に「悼襄王七年、秦の軍が趙へ攻めてきた。趙の大将李牧と将軍司馬尚が兵をひきいて迎え撃ったが、李牧は殺され、司馬尚は職を免ぜられて・・」とあって実在した人物には間違いないようですが、その経歴や出身地などは明らかになっていません。当時は超国内で知らない人はいなかったと思われるのですが、亡国の悲しさなのか、記録や伝承は失われてしまったのでしょうね。


まあ、今回の秦と趙との戦いは、軍事的には趙の大勝利で終わったのですが、これがそれぞれの国に何をもたらしたか、が次のステージの決め手となるようです。

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