昌平君の「三本の柱」発動。秦軍、韓へ侵攻開始 = 原泰久「キングダム」74〜75(ヤングジャンプコミックス)

2025年10月24日金曜日

キングダム

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 中国戦国時代の末期、中華統一を目指す秦王「政」と戦争孤児の下僕からはいあがり、天下の大将軍をめざす「信」の属する秦国と周辺諸国の武将たちとの戦いを描く中華大スペクタクル「原泰久 「キングダム」(ヤングジャンプコミックス)の第74巻〜第75巻。


番吾の戦で、李牧率いる趙軍の前に大敗北を喫し、中華統一の夢も砕けたかと思われたのですが、再起を誓った昌平君の提案する「三つの柱」に基づき、秦国全国の戸籍づくりと軍団の再編成など起死回生の道のりが始まります。


構成と注目ポイント


第74巻 「三本の柱」が発動し、韓の西の要所・南陽城陥落




構成は


第802話 大将軍の軍勢

第803話 三本目の柱

第804話 異様な新兵器

第805話 電光石火

第806話 三つの選択

第807話 南陽城

第808話 旗

第809話 六将の責任

第810話 南陽の民

第811話 刃の意味

第812話 法の下


となっていて、今巻は昌平君の発案した「三つの柱」の一番目である「戸籍の編成」から始まります。


秦国の「戸籍」そのものは、秦王政より6代前の25代国王「孝公」(政は31代国王)に仕えた商鞅の時に編成されているはずなのですが、時代を経るに連れてその中身が粗くなっている上に、その後の秦の領土の現状に合わなくなっていたと推測されます。秦は版図を中華へと広げていたほか、西域までも広げていたので、それそれの地を治める領主たちの中央政府に納める税金や兵役を少なくしたい意向によって過小に把握されていたと思われます。


巻の前半では、それぞれの土地の領主や住民の抵抗にあいながら、戸籍編成をする李斯や昌平君たち文官の能力が試される時といえます。


本書では戸籍の編成により成年男子の数を正確に把握し、兵の動員数を正確に把握する点が強調されているのですが、現地を調査することによって、田畑の様子や産業の様子も詳しく把握できるので、税収面でも正確な徴収(つまりは増税なんですがね)にも役立てることができ、戦費の捻出もできるわけですね。


そして、その戸籍編成が最終局面に至るころ、「二本目の柱」「三本目の柱」が発動します。まずは「二本目の柱」の「軍の再編成」です。

先の敗戦で戦力を大幅に失った王翦軍に代わり、玉鳳、楽華、飛信隊へ「一本目の柱」で動員した兵力を増強し、信たちを昇進させます。


さらに再編成された軍を使って、七雄の一つ「韓」攻略です。しかもその期限はその後の趙、魏攻略を見据えて「2年」の期限付き、しかも兵の損耗を最小限にという条件つきです。

さて、この難題に対し、新たに将軍になった羌瘣は策があると言い放つのですが・・といった展開です。


巻の中盤からはいよいよ「韓」侵攻が始まります。まずは、韓の首都・新鄭の西に位置する要地「南陽」です。この南陽攻撃には「信」の飛信隊6万がまず先鋒を務め、その後方に今回の「韓」侵攻軍の主力「騰」軍10万です。これを迎えうつのが南陽城の城兵7万です。韓王府では韓の序列第二番目の将・博王谷の軍を救援に向かわせることを考えるのですが、そこへさらに10万の秦兵が続いているという報がはいり、焦った韓王府は・・という筋立てです。


後半は、騰の偽装工作に踊らされて、韓が南陽城を無血開城した後の、秦による南陽統治の姿が描かれます。


秦が蝶に敗北後、中華統一を諦めないことを天下に示し、その復活戦として占領する初めての城です。

城下の住民も、南陽城の城主ほかの官僚たち、韓王府に人々も、こういう場合の通例として、城主たちの処刑、住民たちへの暴行略奪を想定していたのですが、今回の侵攻軍の主将・騰のとった統治策はそれとは真逆のものでした。


彼は城主・龍安の命を助けたばかりか、城南統治に参画させます。さらに、信たち飛信隊と住民たちとのぎくしゃくした夕食会での「信」の暗殺未遂事件が、思いもよらず両者の心を近づける結果を生み・・・という展開です。


第75巻 秦軍、南陽城から出撃。英呈平原で秦と韓の主力軍激突




第75巻の構成は


第813話 南陽の姿

第814話 秦の使者

第815話 列国の注目

第816話 副将の檄

第817話 拮抗を崩す

第818話 最後尾の騰

第819話 戦地の会談

第820話 騰の話

第821話 怪力の戦士

第822話 魏趙の凶星

第823話 洛亜完の視界


となっていて、前巻で南陽城征服後、秦軍はいよいよ韓の首府・新鄭へ向けて進軍します。

南陽の無血開城から半年後の出動なのですが、これほど時間をかけたのは騰なりの戦略があったようですが、詳細は後の巻で明らかになっていきます。


相手となる「韓」の戦略は、新鄭城内から韓の第一将・洛亜完と第二将・博王谷は9万の軍を率いて出城、城外の王都圏の7万の軍とともに決戦の地・英呈平原へ進軍。その間に韓国内の諸城から集まってくる軍(想定5万)と合流し、秦軍16万を迎え撃つ、という戦略です。


ところが、進軍する直前、韓国内からの諸城の派遣軍を出し渋る動きが明らかになってきます。この陰には騰の謀が隠れているのですが、それは本書の方でご確認を。


そして、秦のリベンジ中華統一戦となる英呈平原での秦軍16万と韓軍19万とが激突します。

中華統一の大義を掲げる秦軍と、他国からの侵略から祖国を防衛しようという韓軍との戦いの開始です。

その勝敗を分けるのは、秦と韓の今まで中華戦国時代を生き抜いてきた、それぞれの国の歴史の激突そのもので・・という展開です。

この巻は、英呈平原での戦闘シーンが後半の中心になるので、原書でその迫力ある場面を堪能してください。


なお、戦闘の途中に、この後の韓攻略の決め手となる、韓の寧姫と騰将軍との秘密会談があるので、そこも注目です。


レビュアーのひとこと


第74巻の後半では、南陽城を統治するために、剛京長官が秦本国から派遣されてくるのですが、秦の高級文官らしく、旧城主の龍安の処刑を主張したり、犯罪に巻き込まれて警官の処罰などガリガリの「法家」らしいやり方を進めていきます。

儒家思想に基づく韓のやり方とは真逆のものなのですが、最後の方で住民の女性を暴行し、その父親を殺害した兵士の裁判でその真意が明らかになるシーンがあります。そこで、彼は

「法の下に、韓人か秦人、一般人か武人か、など一切関係ない。等しく平等なのだ」

と発言しています。

秦による中華統一では、風俗も、歴史も、生活環境も異なる国々の住民を円滑に、かつ公平に「統治」をすることが何よりも重要になるのですが、そこでは「儒家思想」ではなく「法家思想」が必要だったのだな、と思わせる場面でありますね。

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