冒頭では
白楼国の中興の祖
伯陽帝の治世において活躍した
晧茉莉花という
官吏の一生を記した「茉莉花官吏伝」
に始まり、その「茉莉花官吏伝」の綴じ本を抱えて「科挙」に臨む女性たちの姿から始まります。
「カメラアイ」と抜群の記憶力をもつ少女・茉莉花が、女性官僚として国を動かすまでに成長していく、異世界宮廷サクセスストーリーが「茉莉花官吏伝〜後宮女官、気まぐれ皇帝に見初められ〜」。その第1巻から第3巻をレビューしましょう。
構成と注目ポイント
第1巻 宮女・茉莉花はカメラアイの才能を見出され、科挙に挑戦させられる
本編の舞台は架空の大陸の東側を支配していた「天庚国」が4つに別れたうちの西端にある「白楼国」の宮廷からスタートします。
宮廷の片隅の坊で月餅を食べているところを女官長に呼び出され、どこにしまったのかわからなくなっている茶器や敷布の在処を即座に言い当てる、この物語の主人公・晧茉莉花という女官の姿があります。彼女は平民あがりで最初は雑用係の宮女として出仕し、女官長に見出されて「女官」へ出世している、という設定です。
茉莉花、国王に才能を見出される
彼女は、名門貴族「黎家」の子息・天河の見合いの練習相手に急遽抜擢されたのですが、そこで天河の代わりにやってきた若き国王・伯陽に出会います。実は、伯陽帝は、甥が3歳に成長するまでの期限付きの国王なのですが、その間に国の中枢を担う若き才能の発掘をしていたところ、抜群の記憶力、今でいう「カメラアイ」をもつ茉莉花の噂を聞いてテストにやってきた、という仕掛けです。
この出会いの場面で、一瞬見かけたひったくり犯の風貌を正確に覚えていて、逮捕に貢献します。
これがきっかけで、その「カメラアイ」と抜群の記憶力を買われて、伯陽帝にスカウトされ、当時は珍しかった女性官吏としての一歩を踏み出します。
茉莉花、成績ふるわず
第一巻では、記憶力は抜群ながら、実技となるとからっきしで周囲に失望されてきたため、目立たないように暮らしてきた茉莉花が、彼女の才能を国政で使いたい国王に無理やり白楼国の最高学府「太学」に入学させられ、いやいや通学しているせいか、学試ではビリから三番目という成績です。彼女としては、課題となる書籍は一度読んだだけで記憶しているもののテスト慣れしていないせいか、成績の方はビリから三番目という状況です。すごい記憶力で最初は周囲の人の期待を集めるのですが、実技が伴わないため、結局を失望されるという経験を繰り返してきた茉莉花は自分が官吏になる将来が想像できず、太学を退学したいと思うほど追い詰められます。
この巻の後半では、そんな彼女があるきっかけで「本気を出す」ことを決意までになる茉莉花が描かれます。
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第2巻 茉莉花は、伯陽帝とともに母国を守る交渉に出席する
第2巻では、国王に見出され、国の最高学府「太学」に入学したものの、いやいや通学しているせいか、ビリから三番目と成績がふるわなかった茉莉花が、とあるきっかけで目覚め、さらには3カ国の外交交渉の場面で活躍していきます。
茉莉花、覚醒し成績優秀者に躍り出る
前巻で、平民から名門・鉦家の養子になり科挙に合格して高級官僚となることを義務付けられている「鉦春雪」に甘さを指摘された茉莉花だったのですが、国王の真意を知り、一念発起。かつて科挙でトップ(状元)合格をしたことのある秀才官僚・芳子星に勉強方法を教わることとなります。
いままで、単純にあらゆる情報を「一瞬で覚えていた」だけの彼女の膨大な記憶量が、このトレーニングによって道筋がつき、その才能が開花していくこととなります。その結果が1ヶ月後、学試で現れ、という筋立てです。
茉莉花、三カ国の外交交渉に出席する
第2巻の中程からは、叔父の禁軍将軍・仁耀の見舞いに行った帰りに、伯陽帝が行方不明となり、茉莉花も、太学の同級生・ 鉦春雪とともに捜索に協力することとなります。もちろん彼女の捜索行は本隊の捜索で手の回らないところを調べるプラスアルファ的なものだったのですが、これが意外にもヒットすることとなります。
後半部分では、茉莉花と鉦春雪が伯陽帝の発見・合流後、帝の本来の目的であった黒槐国と采青国との交渉の仲裁役の会合にお付きの文官として出席することになります。両国はまだ若い伯陽帝の力量を見極めるとともに、隙あれば難癖をつけて侵略活動を始めようという魂胆らしく、両国は裏では手を結んでいる気配があります。女性官吏に扮した茉莉花と書記官に扮した鉦春雪が会談をかきまわし、黒槐国と采青国の交渉官の仕草や行動からその合図を見抜き、それを逆用して両国間に不信感を呼び起こして、白楼国への侵略の糸を挫くよう行動を始めます。
官吏の正装に身を包んだ茉莉花がとった作戦は・・という展開です。
茉莉花は、科挙試験に見事合格する
物語の後半では、三カ国交渉で見事、母国の危機を救った茉莉花ですが、今度は官吏となる目的が見いだせず悩んでいます。その悩みが解決できたのは先輩女性官吏に会い、彼女に女性官吏を目指す「素朴な」理由を打ち明けたおかげなのですが、その様子は本書のほうでご確認を。
そして、科挙に「榜眼」(第二席)の成績で合格した茉莉花は尚書省の各部をめぐる研修に参加するのですが、白楼国の南に位置する赤奏国の国王に偶然会うのですが、巻き込まれるトラブルは次巻で。
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第3巻 茉莉花は両国を揺るがすクーデーターの尻尾をつかむ
前巻の最後で科挙試験に探花(第二席)の成績で合格し、新人研修を受けていた茉莉花なのですが、今巻では、白楼国を訪問してきた赤奏国の若い皇帝に偶然出会い、両国を巻き込む陰謀に巻き込まれていきます。
茉莉花は、わがままな赤奏国の国王に気にいられる
科挙合格者の研修で今度は礼部で研修する予定だった茉莉花なのですが、突然、兵部に所属替えされ、兵部の先輩文官・韋玉霞とともに赤奏国の皇帝のお世話係に任命されます。それまで世話をしていた黎天河の厳重な警護が気に入らず、女性官吏と交代してくれという赤奏国皇帝の要望によるものです。
ただ、一緒にお世話係となった韋玉霞は実家が反皇后派で現在主流派である皇后派から圧迫されている上に、女性であることで不遇をかこっていると思っていて、現体制に不満をもっています。ここがなにかの火種となりそうな雰囲気です。
そして、あくまで性別にこだわらない世話をしようとする玉霞に対し、茉莉花はその逆に女性であることを強調したお世話を始めるのですが、その意図は・・という展開です。
玉霞を理詰めで説得して、女性らしい世話に導く茉莉花の論法が見事です。
白楼国と赤奏国を巻き込む陰謀が明らかになる
後半では、突然、白楼国にやってきた赤奏国の皇帝の意図が明らかになります。
赤奏国の皇帝・暁月は、半年前に皇帝位を継いだ後、4カ国の統一を目指す統一派の官吏たちを追放し、追放された者は残る三国に逃げ込んだのですが、そのうち白楼国に逃げてきた一派が、白楼国の現体制に不満をもつ反皇后派と結び付き、前巻で伯陽帝の暗殺を企んだ「仁陽」を推戴して両国でクーデターをおこそうとしていたのを、伯陽帝と協力して叩き潰そうという計画です。
そして、伯陽帝の陽動作戦によって炙りだされた宮廷内の反皇后派の一人は、茉莉花とともに赤奏国皇帝のお世話係をした韋玉霞です。彼女が反皇后派の他のメンバーとやりとりをしている暗号を見つけた茉莉花は・・、という展開です。
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レビュアーのひとこと
異世界宮廷ものの定番となっているのが、後宮の后か薬師・女官なのですが、そこを一歩はずした職業「官吏」にスポットライトをあてたのが、本書「茉莉花官吏伝」です。
仕事の範囲や権限からみると、宮廷の官吏のほうが格段に広い上に、活動の範囲も自国だけでなく他国にも延長するので、物語的にもスケールが大きくなることが期待できるシリーズの開幕です。
「平民」の出で、宮中の女官となった「茉莉花」の生い立ちはまだ明らかになっていないので、後巻で明らかになっていくかも期待です。







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