「メシ」づくりで駆逐艦の戦いを支えた海軍兵の物語が始まる=池田邦彦・萩原玲二「艦隊のシェフ」1・2(モーニングKC)

2023年8月28日月曜日

戦記もの

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 第二次世界大戦中の激戦が繰り広げられた太平洋。アメリカの海軍との戦いの最前線にいた駆逐艦「幸風」を舞台に、兵士のために艦橋の真下で「メシ」をつくることで「戦」を支えた飯炊き兵の物語『池田邦彦・萩原玲二「艦隊のシェフ」(モーニングKC)』シリーズの第1弾と第2弾。


あらすじと注目ポイント


第1巻 駆逐艦「幸風」の「烹炊」物語始まる


第1巻の構成は


第一糧食 銀シャリと駆逐艦

第二糧食 負けじ魂のチキンカレー

第三糧食 柱島で朝食を

第四糧食 煮魚の味

第五糧食 トンボ釣りとチキンライス

第六糧食 缶詰の思い出

第七糧食 上海風勝負飯


となっていて、シリーズは敵機によって撃沈された空母「蒼龍」で主計兵をしていた「湊谷加津夫」が駆逐艦「幸風」に救出され、そのまま、幸風に配属されるところから始まります。


このとき、蒼龍とあわせて「赤城」「加賀」「飛龍」といった空母も撃沈されているので、時期的には真珠湾攻撃以来意気軒昂だった日本海軍が大敗を喫した戦役で、日本軍がアメリカ軍の守勢に立つ原因となった「ミッドウェー海戦」の時ですね。


「空母」でも主計兵、いわゆる飯炊き兵をやっていた加津夫なのですが、空母と違って、艦も小さく、乗員間もアットホームな駆逐艦勤務に馴染んでいく姿が描かれていきます。話の途中にでてくる海軍レシピも、時代風味があっていい味だしてます。


そして賀津夫たちが、直接戦闘に参加しないとはいっても、最前線にいる駆逐艦なので、着艦に失敗して落ち込む飛行兵を元気づけるたチキンライスの彩りに置かれたグリーンピースの数を奇数にしたり、(「トンボ釣りとチキンライス」)とか、米軍の本土空襲で負った怪我が元で死んだ妹のあとを追って次の戦闘で玉砕しようと考えている指揮官に部下への責任を「鮭缶」で思い出させたり(「缶詰の思い出」)と後方から、兵士たちの激励も任務となってくるのですが、その詳細は原書のほうで。


第2巻 幸風は太平洋戦争最悪の戦い「ガダルカナル戦」へ駆り出される


第2巻の構成は


第八糧食 馴染みの味噌汁

第九糧食 爆雷とシマアジ茶漬け

第十糧食 ブリキ缶のフーカデン

第十一糧食 額の傷と昆布締めと

第十二糧食 米国式必勝献立

第十三糧食 ラバウル風海老のマヨネーズ和え

第十四糧食 最後の上海風焼売


となっていて、冒頭では前巻の最後で敵潜水艦の魚雷攻撃を受けたもののなんとか逃れた駆逐艦「幸風」は、ガダルカナルの飛行場奪還に向かう陸軍の上陸部隊を乗せて現地へ向かっています。


太平洋戦争の戦史に詳しい人ならご存知のように、連合国軍との激しい消耗戦が繰り広げられた結果、戦死者だけでなく、食料補給が不能となり多くの餓死者を出した戦役です。本巻でもそれを予感するかのように、派遣部隊の隊長が士気を鼓舞する「何かいいもの」をつくってくれるよういらしてくるのですが、賀津夫たちがつくったのは乗船させている部隊が旭川の歩兵連隊であることから思いついた、日本人のソウルフードともいえるあるもので・・という献立です。


戦況の悪化は乗員にも現れていて、重巡洋艦「加古」の元乗組員など、撃沈された艦艇の乗員が追加配備されてきます。彼らは自分たちだけが意味残ったという後悔から、なかなか「幸風」へ馴染もうとしないのですが・・といった筋立てです。(「ブリキ缶のフーカデン」)


そして後半部分では、日本軍の一大拠点となっていた「ラバウル」や「トラック泊地」でのエピソードが語られます。

現地の女性との恋をなくなく諦めた「夢のQ作」の話(「ラバウル風海老のマヨネーズ和え」)や賀津夫の上司である海原の隠された過去が垣間見えるエピソード(「最後の上海風焼売」)が収録されています。


レビュアーの一言


このシリーズの舞台となる駆逐艦「幸風」は架空の艦艇なのですが、モデルは16回以上、重要な海戦に参加し、その間、戦果をあげつつも大きな損傷もなく終戦を迎え「奇跡の駆逐艦」と呼ばれた「雪風」がモデルといわれています。


駆逐艦というのは、水雷襲撃から潜水艦に対する警戒・攻撃・偵察、船団の護衛など多岐にわたり任務を担わされた高速・機動性・耐久性に優れた軍艦です。軽量ながら、まさに最前線で酷使された艦艇といえます。

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