熊野山中での「削り合い」の戦をセンゴクは凌げるか? = 宮下英樹「センゴク権兵衛」3

2019年9月26日木曜日

宮下英樹ーセンゴク権兵衛

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 美濃・斎藤家の落ち武者から国持大名にまで出世したのに、自らの突出によって島津との戦に敗戦して改易。一家離散のどん底から再び国持大名まで出世。さらには徳川二代将軍のときには「秀忠付」に任命されるなど徳川幕府の重鎮となった「仙石久秀」のジェットコースター人生を描く「センゴク」シリーズの第4Seasonの第3巻


前巻で反乱を起こした湯川勢をはじめとする紀州勢の残党と熊野山中で、センゴク・尾藤・藤堂の三隊ががっぷりと組み合って戦を繰り広げるのが第三巻。とはいうものの、山中での戦を得意とする紀州勢によって、どちらかというと平野での戦を得意とするセンゴクたちは苦戦が続くことになり、この巻では、山中の削り削られ、といった消耗戦が続くことになるので、「戦」とはいっても心理戦も交えた、地味な戦が展開されることになります。


【構成と注目ポイント】


構成は


VOL.15 熊野入り

 VOL.16 行軍

 VOL.17 退き口

 VOL.18 三隊

 VOL.19 戦

 VOL.20 朝露

 VOL.21 棋戦

 VOL.22 出馬

 VOL.23 祭礼


となっていて、豊臣政権の持ち始めた秩序の「窮屈さ」に反感をもって、反乱を起こした湯川直春を中心とする紀州勢が熊野に籠もり、豊臣勢を翻弄し始めるところからスタート。


本巻の描写にもあるように、熊野の山中では大軍は仕えず、さらに地理は紀勢勢のほうが精しい状態なので、センゴク、尾藤、藤堂の三隊の連絡も分断されて、窮地に陥ることになります。


で、普通の武将であれば、このまま兵力を削られていって、最後は山中で朽ち果てるという筋書きになるのですが、このシリーズの主人公・センゴクの只者ではないところは、こんな状況になってもまだ戦うことと前に出ることを忘れないところで

こうなりゃ、トコトンやるぞ

一ヶ月でも一年でも山に残るつもりで

となるのは敵方の湯川勢も想像しなかったところでしょうね。


そして、センゴク勢が、紀州勢へ反撃を始める作戦が、碁の作戦を応用した

ここが碁でいう「地」にござる

大将殿はここに陣取りをば

かくして「白石」が散らばり小競り合いしていきやす

一月も戦わばおのずと「黒石」の分布も見えてくるはず

そこから本格的な「棋戦」となりましょう

という「河洛の計」なのですが、センゴクをはじめ部下の中に「碁」がわかるものが皆無というのはセンゴクの家中らしいところです。まあ、このへんは几帳面で口うるさい尾藤隊と合流することで解決するので、ここらは悪口をたたいてはいても、憎みきれない「センゴク」の人徳というやつでしょうか。


このへんは、これから始まっていく「逆転劇」の原動力といえなくもなくて、いつも反目しあっている、藤堂高虎が

くされ縁よ

とセンゴクへ協力をしてくるのもその現れなんでしょう。もっとも、センゴクたちの逆襲で戦力を削らえて消耗をはじめた「紀州勢」も最後の切り札となる湯川直春が直接采配をふるって参戦してくるので、これをしのげるかどうかが、センゴクはじめ豊臣勢の正念場となるようです。


【レビュアーから一言】


湯川勢というのは、もともと鎌倉時代から続いている由緒ある一族のようで、室町幕府全盛時代には「幕府奉公衆」にもなっている。紀州の国人領主の旗頭的な家で、家格から言えば秀吉やセンゴクよりずーっと格式が高いので、このあたり豊臣家の支配を受け入れることができなかった一因があるのかもしれないですね。

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