根来の里滅ぶ。妙算はセンゴクと根来、どちらを選ぶ? = 宮下英樹「センゴク権兵衛」2

2019年9月26日木曜日

宮下英樹ーセンゴク権兵衛

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美濃・斎藤家の落ち武者から国持大名にまで出世したのに、自らの突出によって島津との戦に敗戦して改易。一家離散のどん底から再び国持大名まで出世。さらには徳川二代将軍のときには「秀忠付」に任命されるなど徳川幕府の重鎮となった「仙石久秀」のジェットコースター人生を描く「センゴク」シリーズの第4Seasonの第2巻。


前巻で、豊臣秀吉の天下統一の重要な局面となる「西国平定」の第一歩となる「紀州攻め」が開始される。本巻は紀州攻めの中でも、「妙算」の根拠地である根来での戦と雑賀衆の滅亡を描いた「根来破滅因縁編」の後半部分と、意外と簡単に平定できると油断した「紀州攻め」が最後の最後になって、大反撃をくらい、泥沼線のような様相を見せてくる発端が描かれるのが今巻である。


【構成と注目ポイント】


構成は


Vol.7 千石堀城

 Vol.8 芽頃攻め

 Vol.9 焼働き

 Vol.10 神の子

 Vol.11 お守り

 Vol.12 穴熊

 Vol.14 地獄


となっていて、まずは10万の軍勢をもって攻めかかるが、信長が紀州を攻めたときと同様、ゲリラ戦が得意で、女性や子供に至るまですべて兵士となりうる相手に苦戦が強いられる。そこで、秀吉が出した決定が

かくいう「厄介な敵」に対しては

他の手立てが思い浮かばん

ということで、いわゆる「殲滅戦」を選択します。


このあたりは、信長の比叡山攻めや現代の戦争と同様に、宗教を背景にしたゲリラ線が得意な相手に、物量の豊富な軍勢がやることは昔も今も変わらないようですね。そして、豊臣軍の猛攻をうけた根来・雑賀の指導陣がやったことは

集会すれど話はまとまらず

覚鑁上人の土像の前でクジを引こうとした

しかし既に土像は消失していた

上人像にも見放されたと思った指導者層も散り散りに逃げたという

とのことで、ここらは国が滅びる時はどこの指導陣も同じふるまいをするようで寂しくはなりますね。


そして、紀州攻めを

合戦も銭も統治も

暮らしも文化も宗教も

何もかも一新して世をパァッと明るくするんじゃ

というように、新しい国造りの第一歩と考えている秀吉が、根来・雑賀の里へ下した処分は里を焼き尽くす「焼亡作戦」なのですが、この決断をする秀吉の心中は、弟の秀長だけが

然れども

天下に君臨するには畏怖も示さねばならぬ

ということだと見抜いているようですね。


もっとも、根来・雑賀の残党たちも、里が焼かれることを黙ってみていたわけではなくて、最後の大逆転を狙って秀吉の狙撃による暗殺を企てます。たしかに、ここで秀吉が狙撃されて倒れていれば、その後の豊臣政権はなかったわけで、このへんは攻め口としては間違いないのですが、残党の古老たちが

先代孫市が根来・雑賀を破滅に導いたんじゃ

神の子、孫市殿

根来に来て里を救ってくだされ

といった風に、腕は立つがまだ幼い子供に頼らなけれればならなかったところに雑賀の弱体化を感じてしまいます。

この「ニ代目孫市」と「妙算」との関係は、原書で確認してほしいのですが、この暗殺未遂と、秀吉暗殺の犯人として、女性の鉄砲うちが名乗り出た後に焼身自殺するのが原因で、妙算がセンゴク陣営を離脱することになります。この女性の鉄砲打ちと妙算との関係は原書で確認してくださいね。


こうして根来を焼滅させ、雑賀も有力者を味方に引き入れて、紀州征伐ももうすぐ片がつくよね、と豊臣勢が安心しているところに、土豪の一人・湯川直春が反乱を起こす。秀吉のほうは

根来はのうなって

雑賀も壊滅間近じゃというのに

一土豪が何しようちゅうんじゃ

といった感じで、侮ってかかります。このへんの侮りが大火傷のもととなるのは、戦争だけでなくビジネスの場面でもよくあること。

もともとは「湯川勢」のもとに、秀吉軍に追い詰められた紀州勢8000人が集合しているという情報を取り漏らしていたことが原因にあって、情報戦の遅れが重大な結果を招くというのは古今東西変わらないようですね。


【レビュアーから一言】


この湯川勢が反乱を決意した理由が、

彼奴ぁ、何でもかんでも秤にかけて統制する

人様にまで、あやつは「甲」、こやつは「乙」

挙句にゃ、生き方まで決められちまう

ということで、「不自由な極楽か自由な地獄か、選べ」と湯川勢の頭領・湯川直春が言うところが、なにやら最近の「フリーランス」や「組織」に関係する議論を彷彿とさせています。

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