美濃・斎藤家の落ち武者から国持大名にまで出世したのに、自らの突出によって島津との戦に敗戦して改易。一家離散のどん底から再び国持大名まで出世。さらには徳川二代将軍のときには「秀忠付」に任命されるなど徳川幕府の重鎮となった「仙石久秀」のジェットコースター人生を描く「センゴク」シリーズの第4Seasonの第10巻。
「センゴク」こと仙石久秀の急転直下の人生のクライマックスとなる、戸次川の戦の後半戦がこの巻では語られる。
前半戦では、島津軍の「野伏の計」にひっかかってあわや全軍壊滅するか、といった危機を迎えるのだが、長宗我部信親の捨て身の奮闘と、かれを助けようとあがくセンゴクの娘婿・田宮四郎のひらめきで、一転、島津勢を押し返したあたりまでが前巻で語られたのだが、この反撃が、家久のモードチェンジの引き金となってしまう。
かつて龍造寺隆信を敗死させ、最近では大友宗麟の大軍を退け、宗麟をあわやというところまで追い詰めた「家久」の戦術に、センゴクたちの運命やいかに、というところですね。
【構成と注目ポイント】
構成は
VOL.73 神降り
VOL.74 猛攻
VOL.75 蹂躙
VOL.76 卑怯は背負わず
VOL.77 退くか殴るか
VOL.78 卑怯者であれ
VOL.79 本能
VOL.80 薄雪
となっていて、センゴク・長曾我部軍の猛反撃で、島津家久が神がかりになるところからスタート。
このシリーズでは「神降り」と表現しているのだが、その状態になると、敵将の場所が察知できるのだが、味方の犠牲がどれほどでようと、敵を殲滅してしまうまでおさまらないという因果な現象のようで、前巻で家臣が、味方の軍勢が優勢なので、神降りはやめてくれ、と頼んだはずですね。
そして、家久の指揮によって攻めかかる島津軍は、命を捨てて攻めてくる「死兵」で、センゴク・長宗我部軍は、これに対抗できるはずもなく押しまくられていきます。
冷静な長宗我部元親は
貴殿も嗅ぎ取ったであろう
敵将、只事にあらず
とセンゴクに退却を勧めるのですが、「戦」の中で自分を見失っているセンゴクは退却を「良し」としません。この決断が、今回は「凶」とでます。十河存保は討ち死にし、十河勢は壊滅、そして、包囲された長宗我部信親軍救援のために向かった、センゴクの娘婿の「某」こと田宮四郎も戦死してしまいます。
島津家久は
家久の野郎、先の合戦なんざ考えとらんっ
今ァここで全大将の首を獲るつもりじゃッ
というつもりですね。
彼の登場以来あちこち検索したのですが、歴史的な人物としては全くヒットしなかったわけですね。
そして、この「戸次川の戦」での最も大きな損失が、名将の素質にあふれていた長宗我部信親の戦死でしょう。味方の退却するようにとの懇願を振り切って、前線に残る決断をした信親は、父親の元親へ
父上が生き残るべきだ
私は大名に向いておらぬ
という言葉を遺して、戦いに倒れます。味方を犠牲にして生き延びることを己に許すことのできなかった「情の深さ」が災いとなります。おそらく、長宗我部信親が、江戸中期あたりに生をうけていれば、名君となったのだろうな、と推察できますね。
そして、信親がこの時に戦死したことで、家督を相続する可能性のほとんどなかった三男坊の盛親に、後に長宗我部家当主の座が転がり込んでくることになります。
「豊臣はいずれ高転びする」と父から教わっていた信親がそのまま家督を継いでいれば、関ヶ原とかの行方も違ったものになっていたかもしれませんね。
さらに、十河勢、信親勢を殲滅した島津軍は、センゴク・長宗我部元親勢へと攻めかかってきます。この時、何を血迷ったのかセンゴクは敵陣に向かって、単騎で突進。
ここらは「無謀」といわざるをえないのですが、センゴクに今まで付き従ってきた部下たちは彼を追って島津勢へ向かっていきます。そこに、冷静な戦巧者の長宗我部元親も呼応し、
車懸かりに渦を形成した家久本陣は
まさに渦の目が手薄な状態にあった
といった風に、手薄になっていた家久本体へ向かって攻めこむ状態となるのですから、センゴクの野生の勘も大したもの。敵を追うのと、家久を守ろうとする島津軍が密集し、同士討ちを避けるためお互いに牽制しあう隙をついて、センゴク。長宗我部軍はからくも脱出に成功。
ただ、娘婿の田宮四郎や長宗我部信親など、多くの武将や部下を犠牲にして、センゴクが生き延びることとなり、これが彼を当分の間、苦しめることとなるのですが、それは次巻以降で。
【レビュアーから一言】
豊臣家をはじめとした諸国の政治的な周辺情勢や、敵方の調略といった戦略的なやりとりも描かれるシーンも多い、この「センゴク」シリーズなのだが、今巻は、ほとんどが家久軍とセンゴク・長宗我部軍との戦闘シーン一色。
それほど、この「戸次川の戦」がセンゴクや長宗我部にとって、家の浮沈を左右した大きな出来事であったことを表しているんでしょうな。そして、両家の盛衰に大きく関係した島津家久自体も、精神面など無事ではすまなくなるわけで、次巻以降に様々な思いをつなげていく、「戸次川の戦」の章であります。
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