戦国の名家・朝倉家は、織田の猛襲の前に崩れ落ちる = 宮下英樹「センゴク 11、12」

2019年10月24日木曜日

宮下英樹ーセンゴク

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 美濃・斎藤家の落ち武者から国持大名にまで出世したのに、自らの突出によって島津との戦に敗戦して改易。一家離散のどん底から再び国持大名まで出世。さらには徳川二代将軍のときには「秀忠付」に任命されるなど徳川幕府の重鎮となった「仙石久秀」のジェットコースター人生を描く「センゴク」シリーズの第1Seasonの第11巻と第12巻。


第1Seasonでは、稲葉山城落城から浅井家滅亡までが描かれるのだが、当初、蜜月状態だった浅井家と織田家が敵対する原因となった、越前の名門・朝倉家の瓦解が描かれる。


【構成と注目ポイント】


構成は、11巻が


VOL.100 さまよえる武田軍団

VOL.101 東美濃攻略

VOL.102 捨てる

VOL.103 上京焼き討ち

VOL.104 お屋形

VOL.105 武田軍撤退

VOL.106 越前一乗谷

VOL.107 筆頭家老

VOL.108 山本山城

VOL.109 調略


第12巻が


VOL.110 信長電撃

VOL.112 王手飛車取り

VOL.113 柳ケ瀬峠

VOL.114 朝倉反撃

VOL.115 最後の謀略

VOL.116 義景一乗谷帰還

VOL.117 突撃命令

VOL.118 一乗谷に栄華を

VOL.119 義景の最期


となっていて、三方ヶ原の戦の途中で、人事不省となった信玄と混乱する武田軍の様子がまず描かれる。意識の戻らない信玄の前で、これからの方針を協議する重臣たちなのだが、カリスマを突然失った集団がすぐさま結論をだせるはずもなく、武田軍の弱点が突然露呈しています。


ここで倒れたまま、信玄は世を去るわけですが、後継の指名もないまま死んでいったことが、武田の衰亡の原因には間違いなく、武田家を、信玄を宗主とするカリスマ国家に仕上げたツケを払わされたということでしょう。


一方、戦国最強の武田軍団の侵略を、幸運にも食い止めることができた、織田信長に強烈な意識の変化をもたらします。その発現は、本拠地の「岐阜を捨てる」ということで、ここで今まで「土地」というものに立脚しながら、それに縛られてきた「戦国の統治」形態からの脱却を、信長軍が一番に成し遂げることとなります。

 このへんは、藤吉郎、竹中半兵衛はじめ織田家の重臣や謀臣も急には気づかないところで、「戦」で功績をたてることだけを考えているセンゴクの

弾正忠様曰くっ

一切を捨て無の者になるべしっ

といった態度が一番、信長の気持ちに沿っていたのかもしれません。


ここで物語は武田から離れ、朝倉家の衰亡に移ります。信長包囲網を突如放棄して、越前へ帰還する朝倉義景なのですが、斎藤龍興と鳥居兵庫が手を結ぶなど、家中が割れる要素はすでに仕込まれています。


さらに、義景と従兄弟の筆頭家老・景鏡が、朝倉家の家督を密かに狙っているのだから、この家の将来性はかなり危ういと言わざるをえないでしょう。まあ、ここまで追い詰められて、酒と女に溺れていた義景のもとに、朝倉勢の多くの家臣が

我も鳥居兵庫の言に従わん

いざ弾正忠と戦うべしっ

とやっと覚醒したのがせめてものことなのだが、ちょっと遅すぎましたね。


そして12巻では、鳥居兵庫に朝倉勢の指揮権が移り、これで朝倉勢の反撃が始まるか、と思いきや、朝倉家随一の勇将で守旧派の山崎吉家たちが口出しをしてきて、

この二人謀議を謀り

朝倉家をのっとらんとする疑いあり

と主張し、統一的な指揮ができない状況になります。


 こういう存亡の危機に、守旧派が口を出してくると碌なことはないのですが、朝倉家の場合も同じですね。しかも、守旧派が主張する撤退策に従った朝倉勢を、織田信長本人が家臣にさきがけて追撃をしていて、このあたりにも主将の質の違いと勢いの違いが現れています。


この勢いのまま、織田勢が朝倉の本拠・一乗谷に攻め込み、戦国の名家・朝倉家は滅亡へ向かい、鎌倉から続いていた越前朝倉家も最期を迎えます。


拠点の一乗谷は京都文化の中心となり、豊かな戦国大名として独立を守っていたのですが、それがいつの間にか時代から取り残されていくことになったのだと推測します。このへんは伝統ある組織は他山の石とせねばなりませんね。


ここで、センゴクの活躍や、お蝶はどうなるのか、といったあたりは原書で確認してください。


【レビュアーから一言】


この織田の朝倉攻めの時に、これまで数々の陰謀をめぐらし、信長を苦しめてきた斎藤龍興が織田勢の足軽の槍や弓矢を受け

下郎どもが・・

頭が高い・・

かつての美濃国主であるぞ・・

という言葉を残し戦死します。


当初は石山本願寺に逃れて、次の策を練るつもりだったのですが、一乗谷に遺した「お猪」など、愛した女性を救おうと引き返し、織田の雑兵たちに討たれてしまいます。このあたりは、流浪の間も付き従う女性を大事にしていた龍興らしくて、ある意味、当時のフェミニストの鏡であったのかもしれません。

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