浅井の裏切りによって織田勢、あわや全滅。秀吉とセンゴクは凌げるか = 宮下英樹「センゴク 3〜4」

2019年10月14日月曜日

宮下英樹ーセンゴク

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 美濃・斎藤家の落ち武者から国持大名にまで出世したのに、自らの突出によって島津との戦に敗戦して改易。一家離散のどん底から再び国持大名まで出世。さらには徳川二代将軍のときには「秀忠付」に任命されるなど徳川幕府の重鎮となった「仙石久秀」のジェットコースター人生を描く「センゴク」シリーズの第1Seasonの第3巻から第4巻。


前巻では、尾張・美濃を手中にした織田信長が足利義昭を奉じて上洛し室町幕府を復興したのだが、すでに室町幕府の力はどん底まで落ち込んでいるので、後ろ盾の信長が気を許すとたちまちグラグラとし始めます。


第3巻から第4巻までは、そのグラグラの余波と信長の天下統一に向けた動きが反作用となって、信長の妹・お市を嫁にしていて、信長を尊敬していた浅井長政が裏切り、史上最悪の撤退戦となった「金ケ崎の退き口」が始まります。そして、その危機を辛くも逃れ、信長が反撃に転じる「姉川の戦」の前夜までが描かれます。


【構成と注目ポイント】


構成は


第3巻が


VOL.20 六条合戦①

 VOL.21 六条合戦②

 VOL.22 六条合戦始末

 VOL.23 越前進軍

 VOL.24 金ケ崎城陥落

 VOL.25 殿軍決定

 VOL.26 生きる理由

 VOL.27 激闘

 VOL.28 久蔵

 VOL.29 地獄


第4巻が


VOL.30 両雄激突

 VOL.31 殺し間

 VOL.32 織田全軍戦闘態勢

 VOL.33 坂田・長比争奪

 VOL.34 欲望だけで

 VOL.35 謀略前夜

 VOL.36 謀略 

 VOL.37 小谷城焼き討ち

 VOL.38 後詰めの計

 VOL.39 次郎三郎家康


となっていて、まずは、信長の岐阜への帰還を待っていた三好三人衆と斎藤龍興が将軍・足利義昭の御所へ攻めかかります。そこに、当時は、足利家と織田家の両方に臣従している「明智光秀」が登場します。多くの作品では「怜悧」で「繊細」な感じで描かれることが多いのですが、このシリーズでは、


と顔に化粧を施した「妖しげ」な様子で描かれています。


そして、将軍への救援に向かうべきは、本来は織田家の京都治安維持を担当する秀吉軍なのだが、援軍としてやってきた浅井長政の浅井勢がその中心になります。浅井勢には、勇将・山崎新平


がいて敵を蹴散らします。もっとも、秀吉軍はなんの功もあげることができないので、信長から減俸の罰を受けることになります。

 戦い自体は浅井勢の強さで、三好・斎藤勢を蹴散らすことに成功し、その余勢をかって、織田勢は、越前の朝倉義景に向かってその矛先を向けます。朝倉を攻める魂胆は、琵琶湖を中心とする水上交通網を発展させるため、朝倉家の保有する敦賀港を奪い、貿易港として使おうというもの


で、さすが信長らしい先進的な経済ビジョンなのですが、この朝倉攻めが浅井長政の裏切りを呼んでしまいます。

 この時に登場する信長の妹で長政の妻・お市の方は、一般的には信長の天下獲りに翻弄された、楚々とした、おとなしい美女のイメージがあるのですが、本書では、長政を通じて「天下」へ野心のある、バリキャリの悪女っぽく描かれています。


この長政の裏切りによって、命からがらの織田勢の撤退が始まるのですが、この撤退戦「金ケ崎の撤退」の殿軍(しんがり)を秀吉軍が務めることになるのですが、朝倉・浅井勢に味方をどんどん削られていく「消耗戦」で、撤退戦4日目には当初750人いた兵が、あと450人となり、もう少しで全滅というところまで追い詰められます。


で、ここで出会ったのが、同じく殿軍を務めていた明智光秀軍で、彼らもかなり「削られて」いるのですが、

我らの「殺し間」は

敵に完全なる死をもたらす

我が明智の必殺戦法に候

と光秀本人が自負する必殺の戦法の「殺し間」を展開し、襲ってくる朝倉軍を

先駆けがことごとく討たれっ!!

一人残らず殺されましてございまするっ!!

と撃退し、これが「金ヶ崎」からの撤退を成功裡に終えることにつながります。

 この「金ケ崎の退き口」の撤退成功が、秀吉と光秀を織田家有数の武将に格上げさせるのですが、信長の怒りはおさまらず、

撫で斬りにせぃ

と「浅井殲滅」を狙う「姉川の戦」へと展開をしていきます。


この姉川の戦の前に、竹中半兵衛が正式に秀吉の軍に加わったり、徳川家康が織田勢に味方することを決めます。その陰に、センゴクの功績があったかどうかは、原書のほうで確認してください。大功績というわけではないかもしれませんが、全くの役たたずでもありません。


そして第4巻の最後の方で、このシリーズでは今まで、義兄の信長に恐れを抱く「ヘタレ」として描かれていた「浅井長政」が覚醒します。そのキッカケをつくったのは、もちろんお市の方で

わらわを抱くは

天下の覇者のみじゃ・・・

といった風に、長政を完全に操っていますね。


【レビュアーから一言】


「金ケ崎の退き口」のシーンでは、全滅を覚悟した秀吉が、食料を全部拠出して、最後の食事をするのですが、竹槍を使って、しかも立ち上がらないで、両手で槍を握って食え、という命令をします。


竹槍はとても長いので、自分の口に運ぼうとするとポロポロこぼしてしまいます。この食事を成功させる方法ってのが、つまり、向かい合う相手にそれぞれが食わせ合うというもので、チームの結束力を高める「妙手」ですね。秀吉は、諸国放浪中に耳にした「地獄の作法」であるというですが、ここで苦労人の秀吉の偉さがわかります。

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