浅井軍の猛将を、捨て身の攻撃で打ち倒せ = 宮下英樹「センゴク 5」

2019年10月14日月曜日

宮下英樹ーセンゴク

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 美濃・斎藤家の落ち武者から国持大名にまで出世したのに、自らの突出によって島津との戦に敗戦して改易。一家離散のどん底から再び国持大名まで出世。さらには徳川二代将軍のときには「秀忠付」に任命されるなど徳川幕府の重鎮となった「仙石久秀」のジェットコースター人生を描く「センゴク」シリーズの第1Seasonの第5巻。


前巻で朝倉攻めを始めた織田信長に対し、野心に燃える信長の妹・お市の方に煽られて、尊敬する義兄・信長に反旗を翻した浅井長政であったのだが、その浅井・朝倉連合軍とオ度・徳川連合軍が激突する「姉川の合戦」が描かれるのが本巻。


【構成と注目ポイント】


構成は


VOL.40 母喰鳥の計

 VOL.41 静かな進軍

 VOL.42 突撃

 VOL.43 山崎心平馬上槍

 VOL.44 日本の矢

 VOL.45 ゴン兄ィの仇

 VOL.46 見してくれ

 VOL.47 センゴクvs山崎

 VOL.48 断末魔

 VOL.49 姉川合戦始末


となっていて、通説では、滋賀県北部を流れる姉川をはさんで浅井・朝倉軍1万8千、織田・徳川軍2万8千が戦ったもので、浅井軍の先鋒・磯野員昌が織田軍十三段構えの十一段まで破り、信長の面前まで迫られるが徳川軍の活躍によって窮地を逃れた、というのですが、筆者は

だが、この通説、この戦い方は

戦国期の合戦の常識が、なに一つ守られていない

最も信憑性の高いとされる「信長公記」での姉川合戦の章にはかような記述はなく

戦場を歩いてみた実感としても違和感が残る

と「浅井・朝倉軍の奇襲説」を論評しています。


この筆者の与する説によれば、山崎新平が「母喰鳥(ふくろう)の計」という奇計を講じて、浅井長政が信長の攻めに怯えて小谷城への退却を偽装します。これにまんまと騙された信長は、浅井・朝倉軍は横山城救援を諦めて完全撤退したと思いこんで小谷城の支城・横山城に攻めかかります。織田軍は完全に山崎新平の企みに騙されるのですが、勘の鋭い徳川家康と理詰めの竹中半兵衛が不信を抱き、信長本隊とは別行動をとります。

 そして、後ろを全く警戒せずにいる織田軍の背後に浅井軍本体が忍び寄り、奇襲をかけ、織田軍は一挙に混乱に陥ります。で、混乱する織田軍本体を浅井軍の猛攻から守るのが木下藤吉郎隊とセンゴクの弟分の坂井政尚隊なのですが、浅井軍の先駆け大将・山崎新平の猛烈な攻撃にどんどん削られていきます。とうとう山崎新平は、織田信長の居場所をつきとめ、そちらに向かって攻め込もうとするのですが、坂井久蔵とセンゴクが二騎で立ち向かいます。

 しかし、歴戦の勇士・山崎にこの二人が叶うはずもなく、久蔵もセンゴクも山崎の剛弓に射抜かれ落馬。


さらにセンゴクが射殺されたと思い込んだ久蔵が山崎新平に切りかかるのですが、無残にも首をとばされ、無念の戦死をとげてしまいます。


しかし、ここからセンゴクの大逆転劇が開始です。

 久蔵の仇をうつために、再び馬に乗り、力を振り絞って馬上槍の攻撃をしかけます。この馬上槍の攻撃は戦国武将にとって修練の必要な「華」の攻撃であるのですが、槍を振り回す反動で馬の制御を失うため、先に手を出すとそれ以後の馬を統御できない捨て身の攻撃でもあります。このあたりの欠点を周知している山崎新平は、腕で権兵衛の槍の攻撃を受け止め、「はず槍」(弓の両端に槍の刃がついていて、弓としても槍としても使える武器)で逆襲。センゴクは山崎の槍で久蔵のように首をとばされるのか・・、と思われるのですが、馬上での奇跡の大回転で攻撃をよけて反撃し、返り討ちにします。


そして、このセンゴクが浅井軍の猛将・山崎新平を討ち取ったことは、あっという間に陣中全部に伝わり、結果として、徳川・織田連合軍は辛くも九死に一生を得ることとなります。ここで、信長軍をとことん痛めつけられなかったのが後の浅井家滅亡の原因ともなります。そして、山崎新平という武将一人の力に頼らざるをえなかった浅井軍の弱点でもありますね。


【レビュアーから一言】


センゴクと坂井久蔵の活躍も見事なのですが、ここでもう一つ目を見張るべきなのは、センゴクと久蔵が戦死したと誤解した藤吉郎が

いまから山崎隊に突撃をかける

と彼らの敵討ちを山崎隊にしかけるところでしょう。山崎隊の強さを考えれば、まさに全滅覚悟なのですが、一兵卒のセンゴクのために、こうまでする、というところが、羽柴隊のこれからの大躍進を暗示しているようであります。

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