シェイクスピアは喜劇に手を出すが、これが恋の始まりー「七人のシェイクスピア(Part2) 10 」(ヤングマガジンコミックス)

2020年6月3日水曜日

7人のシェイクスピア

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 大英帝国が絶頂を迎えたエリザベス一世の時代に、イギリス・ルネッサンスの本場ロンドンで、劇作家として世に出現。以後、演劇の世界に大きな影響を及ぼし続けている「シェイクスピア」の半生記と彼の創作の秘密を描く「七人のシェイクスピア」Part2の第10 巻。


前巻で女王とリーを面会させるという危険な橋を渡って、劇場の封鎖を解いてもらったシェイクピアたちなのですが、劇場戦争で、ここから巻き返しを図るためのジャンヌ・ダルクの芝居の上演や、新分野への展開を模索し始めるのが本巻。                                   


【構成と注目ポイント】


構成は


第86話 すさまじい奴ら

第87話 更新

第88話 ウィリアム・ケンプ

第89話 ランバート家の醜女

第90話 心の喜び

第91話 恋の骨折り損

第92話 Love is aDevil①

第93話 Love is aDevil②

第94話 朝日が顔を出すまで①


となっていて、「ヘンリー六世」第一部の重要なパーツとなるジャンヌ・ダルクによって無念の戦死を遂げるトールボット親子や魔力を失ったジャンヌ・ダルクを捕らえ、イングランド軍の反撃が始まる流れや、魔女といわれながら、純真無垢な様子をみせるジャンヌは観客に大ウケですし、フランスからマーガレット・アンジューを王妃として迎えるところでエンディングから「ヘンリー六世第二部」につなげる展開は興行的にも成功しそうです。


観劇に来ていた女王の拍手ももらって、前途洋々というところですね。


さらに、ここで満足しないのがここでワースとカスバートの一座の企画マンたちで、新分野「喜劇」の上演に向けて、役者のリクルートを始めます。


狙いをつけたのはサセックス伯一座のウィリアム・ケンプ。


彼が移籍の条件とした、劇にあう「勝手に体が動いちゃうような最高」の音楽の創作を、シェイクスピア・チームの作曲家・アンが見事にこなし、ストレンジ卿一座は強力な喜劇役者を獲得することになりますね。


アンの作曲には、若い頃、才能がありながら、その容貌で音楽を習わせてもらえなかった恨みがこもっているのかもしれません。


そして、観客に大ウケするケンプの演技や、ストレンジ卿スタンリーも喜劇が好きということに意を強くして、シェイクスピアは自らも喜劇の作劇にかかります。もともと、最初にロンドンに出てきた時の売り込みは喜劇だったのですが、これが全く相手にされなかったことの「敵討ち」ということなのかもしれません。


そして彼の書いた喜劇は、フランス王ファーディナンドと彼の3人の友人のところへ、外国から王女と王女の侍女3人がやってきての恋愛コメディーなのですが、上演にあたってトラブルになりそうなのは、エリザベス女王が「フランス嫌い」なこと。

うっかり発表して逆鱗にふれてしまうと元も子もないので、この脚本のチェックを、女王のお気に入りの侍女・ジョウン・ブラントに頼むことにするのですが、これが二人の恋心を刺激してしまいます。ジョアンは家族とバースに行くスケジュールまで調整し・・・

そういうことであれば仕方ありません

独り、ここに残りましょう

ということなのですが、詳細は本書のほうで。


実はジョウンの姉が元宮廷の女王付きの侍女であったのですが、合唱隊の歌手と恋仲になって妊娠。これが女王の耳の入って、ジョウンの姉は宮廷から追放。歌手のほうは捕まって投獄、といった処分を受けているようです。このジョウンの生家である「ブラント」家は王室の命令で探索とかいろんな汚れ仕事(ジョウンの叔父はカトリック神父の始末もしているようで・・)も担当している、闇の一族っぽいのですが、スキャンダルが二度も重なると、そうそう許してはもらえない、というところでしょう。


【レビュアーからひと言】


今巻で、劇中でも火あぶりにされる「ジャンヌ・ダルク」ですが、イングランドを手ひどく痛めつけた敵国・フランスの人間であるせいか、シェイクスピアは「魔女」扱いしたひどい書き方をしています。


当時、ジャンヌ・ダルクを有罪にした裁判(かなりイングランド寄りのものだったらしいですが)では、神の声を聞いたと主張したことが「異端」とされただけでなく、ズボンをはいて「女性の礼節に背(そむ)」いたことや、髪を短く切って「女性の貞淑さに背」いたことも糾弾されたようなので、当時の女性観も影響しているのかもしれません。

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