豊臣秀長没し、利休刑死。そしてセンゴクは小諸へ = 宮下英樹「センゴク権兵衛 22」

2021年2月19日金曜日

宮下英樹ーセンゴク権兵衛

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 美濃・斎藤家の落ち武者から国持大名にまで出世したのに、自らの突出によって島津との戦に敗戦して改易。一家離散のどん底から再び国持大名まで出世。さらには徳川二代将軍のときには「秀忠付」に任命されるなど徳川幕府の重鎮となった「仙石久秀」のジェットコースター人生を描く「センゴク」シリーズの第4Season『宮下英樹「センゴク権兵衛」』の第22巻。


前巻までで、北条攻めでの功績で「信州小諸」に封じられて、ようやく大名への復帰を果たしたセンゴクと、天下を掌握し、名実ともに天下人となった秀吉政権が確立したのもつかの間、政権の永続させ、子孫に引き継ぎたい秀吉の「妄執」と、政権内部の対立の芽が育ち始めるのが本巻です。


構成と注目ポイント


構成は


vol.183 礼儀

vol.184 言伝

vol.185 齟齬

vol.186 新天地

vol.187 天下の宰相

vol.188 政権構想

vol.189 真心

vol.190 天下一とは

vol.191 不穏


となっていて、まずは、「信州小諸」の大名として復活した、センゴクと彼の家臣たちの移封の準備のところから始まります。


センゴク、小諸城主になる


長い浪人生活の末にやっと大名になったので、沸き立つセンゴクの一族郎党なのですが、この小諸の地は、「依田氏」が代々治めていた地域で、センゴクたちが今まで拠点として歌守護大名が没落し、振興の戦国大名がしのぎを削っていた西国とは風土も住民の気性も違う地で、新参者のセンゴクたちがすんなりと受け入れられるかどうかは全くの未知数というところです。ここで、センゴクがとった作戦は、相手の懐に入り込む作戦なのですが、さてうまくいきますかどうか、というところですね。


今巻では、先巻で秀吉がセンゴクを小諸へ配置した理由でもある、「真田」と「徳川」の抑えの役割を機能させる必要はでてきておらず、策士の「真田昌幸」の影はまだ見えないようです。


豊臣秀長没す、秀吉政権に陰りが


一方、秀吉政権のほうは、長い間、秀吉政権の縁の下で支えてきた、秀吉の弟の「小一郎秀長」の病が重くなっているとともに、千利休との感情的な不和が拡大していっています。利休は、秀吉への謀反心はもってはいないのですが、「美意識」の根本のところで、秀吉とはあわないところがあちこちにでてきます。

秀吉が飾った野菊を、意識せずに取り除いた「茶会事件」がその象徴なのですが、秀吉と利休の対立は、筆者としては戦国武将と室町以来の芸術家の「美意識」の不和ととらえられているようで、ここには埋めがたい溝があったということかと思います。


秀長の病状悪化は、秀吉政権の主導権の争いにも拍車をかけます。英長亡き後、秀吉の補佐となる「宰相」をだれにしていくかで、自分の子孫に天下を伝えていきた秀吉の思いをうける石田三成ほかの奉行衆と、信長以来の大大名として勢威を維持する徳川家康との対立が密かに進行していくという感じです。

ここに、「遅れてきた戦国大名」伊達政宗が自分が操縦しやすい人物の宰相就任を画策したりして秀吉と奉行衆の間をかき回してくるので、なおさら混沌ととしてきます。

今のところ、すでに天下への野心を秘めていたであろう「家康」の姿は明確にはでてきていません。本書では、この時期、家康は、若い頃の激情ぶりを内面に押し込んで秀吉政権に参画している形で描かれているので、密かに爪を継いでいる状態でしょうか。


利休へ三成たちが牙をむく


そして、いよいよ、秀吉の命を受けた奉行衆たちが、利休に対して牙をむいて襲いかかり・・・というところで詳細は原書のほうで。


ただ、利休は秀吉と単純に対立していたのではなく、サポートしようと思ってはいたが、秀吉のことがどうにも虫が好かなかった故に行動に売りせなかった、というのが作者の新解釈であり、利休と秀吉の関係の難しさでもありますね。


レビュアーから一言


今巻では、秀長の病状を見舞いながら、自分の政権構想についてこようとしない彼に落胆する一方で、ともに歩んできた道がいつか別れてしまっていたことに気づいたり、病没する秀長の弔問に行くことのできない自分自身を、茶々に激しく非難させることで、彼を無理やり政争の場に引き出してきた後悔をなんとかしたり、と徒手空拳から「天下人」となった「秀吉」の孤独が鮮明に描かれています。

千利休が、茶会の席で、秀吉の「相応しき友」として、センゴクの姿を見ているのですが、この「茶杓一さじの友」を大事にすべきだ、と述懐するのですが、「天下」の権力に魅入られた秀吉には、無理なことだったか

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