幕末の日本に”ヤンキー風”土方歳三、颯爽と登場 = 「ちるらん 新撰組鎮魂歌」1・2

2021年12月3日金曜日

ちるらん

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 幕末史を彩る重要なキャストというと、倒幕側の薩摩勢では、西郷隆盛・大久保利通、長州勢では、高杉晋作・桂小五郎、そして中立派の坂本龍馬といったところに対し、幕府側でファンが多いのは、なんといっても「会津藩預」として、京都にうごめく不逞浪士たちを血祭りにあげていった「新撰組」。


その新撰組の副長・土方歳三をメインキャストに、幕末の京都から戊辰戦争・函館戦争へと続く激動の時代を「ヤンキー漫画」テイストで描くのが「橋本エイジ・梅村真也「ちるらん 新撰組鎮魂歌」」のシリーズです。


あらすじと注目ポイント


第1巻 土方歳三、最強を目指し試衛館入門


第1巻の構成は


第一話 散る華

第二話 辻斬り上等

第三話 最強

第四話 家族・前編

第五話 家族・中編


となっていて、明治45年3月、小樽で元新選組二番隊長・永倉新八のところへ、東京毎日新聞の記者「市川真琴」という女性新聞記者が取材に訪れるところがシリーズの出だしとなります。


彼女は喉首に永倉の刃を突きつけられながら、「鬼の副長とよばれた、土方歳三の真実」を知りたいと告げ、永倉が彼女が新撰組の副長・土方歳三の孫娘ということに気付き、昔語りを始めるという設定になっています。この時点では「母」が誰かとか詳しい生い立ちは明らかになっていませんね。


史実としては、明治になってから、永倉が小樽新聞の記者・吉島力の取材に協力して、「新撰組顛末記」がまとめられ、これが「人斬り集団」として認識されていた新撰組が再評価されるきっかけになったというのがホントのところのようです。


物語のほうは、24歳の土方歳三が、1859年(安政6年)の江戸、道場破りとそのついでに家業の傷薬を売りつけて回っているところから始まります。土方は奉公に出された商家を二度も逃亡し、我流で剣の技を覚え、ほとんどの剣術道場では負け知らずなのですが、天然理心流の試衛館に道場破りに入ったところ、塾長の「近藤勇」にぼこぼこにされ、それがきっかけで「最強」となることを目指して入門する、という流れです。


本シリーズでは、この時点ですでに沖田総司、山南敬介、原田左之助、藤堂平助、永倉新八、斎藤一、井上源三郎といった、後に新撰組の試衛館出身の中心となるメンバーたちはすでに入門しているのですが、その格好が「ヤンキー」っぽい様子で描かれているので、イメージと違って戸惑う人もあるかもしれません。


その一年後、桜田門外の変が起きた後、江戸市中で腕利きの剣士ばかりを襲う木刀使いの辻斬りに土方たちが挑みます。辻斬りの正体は、幕末の四大人斬りの一人として知られる「岡田以蔵」なのですが、この頃は「最強」を目指す脳天気な若手剣士という感じで、彼を精神的に縛る「武市半平太」の拘束もまだそんなに厳しくないのかもしれません。


巻の後半は、斎藤一の物語です。彼が幼馴染の旗本の嫡男・田島龍之助を果し合いで斬り殺してしまい、講武所の剣術教授方の旗本・佐々木只三郎が父親に頼まれ、斎藤一を斬りにやってきます。一説には、斎藤一は小石川で旗本と口論になって斬り殺し、京都の吉田道場に身を隠しているのですが、このあたりのエピソードをふくらませたものと思います。

なぜ、斎藤が幼馴染を斬ることになったかは、原書のほうでお確かめを。


第一巻では町外れの一軒家に拉致され、抵抗せずの佐々木たち旗本の悪童たちにボコられている斎藤を、試衛館のメンバーが救出にかけつけ、乱闘が始まるところまでが描かれます。


第2巻 試衛館グループと芹沢グループは京へ居残る


第2巻の構成は


第六話 家族・後編

第七話 芹沢鴨

第八話 最強vs最強

第九話 漢泣き

第十話 会津の鬼


となっていて、斎藤一を斬りにきた佐々木只三郎と土方歳三の死闘が始まります。


神道精武流免許皆伝で「小太刀日本一」の称される使い手・佐々木只三郎に対し、土方は天然理心流では相討ち狙いの大技とされる「無明剣」で迎え撃ちます。さらに、ここに、沖田総司と塾頭の近藤勇が乱入し、旗本たちと試衛館道場の総力戦が・・といったところに、当時幕府蕃薯調所頭取が勝海舟の割って入り、なんとか両者を引き分けます。本書では、この事件がきっかけで斎藤一は江戸を離れ、京都へ逃れることとなります。


ここで話は文久三年(1863年)2月8日へ飛び、小石川伝通院での浪士隊募集の場面へと移ります。

清河八郎が発案した「浪士組」のメンバーを集める、かつてない幕臣登用の機会なので、江戸や江戸近郊の食い詰め者やすでに試衛館のメンバーは「最凶の悪党集団」と異名をとっているのですが、それを上回る凶悪人物である水戸天狗党崩れの芹沢鴨と出会います。


そしてさらに場面は、一挙に京都到着後、清河八郎の策謀による集められた浪士隊の江戸帰還に同意せず、居残るところへ移ります。


浪士組本体が江戸へ帰った後、少人数となった試衛館グループと芹沢グループを京の人たちが相手にするはずもなく、一挙に試衛館グループの宿舎から資金を持ち出して大宴会をしている芹沢と沖田総司の一騎打ちが始まります。


この場面で、総司が幼い頃、姉と義出中に刀を振り回す手練の狂人に襲われるのですが、逆に相手を斬り捨てさらに、刀を何度も突き通す「鬼子」と呼ばれた過去が回想されます。


この二人の勝負の行方は、後の芹沢鴨暗殺のときまで持ち越されることとなります。


巻の最後半では、佐々木只三郎の斡旋で、会津藩のお抱えとなることを賭けて、会津の武術師範・佐川官兵衛のいる会津藩黒谷本陣へ乗り込むのですが、詳細は次巻以降で。


レビュアーの一言


今シリーズでは、浪士組が上京する場面で、世話役となった近藤勇が、本庄宿で芹沢鴨と宿舎のことでもめたエピソードは割愛されています。このエピソードは、自分が特別扱いされず荒れ狂う「小物」な芹沢鴨を、近藤勇がおさめるという近藤の大物ぶりと人格者なところを強調する話なので、通常「乱暴者」とだけ認識されている芹沢鴨が、このシリーズでは京を征しかねない人物のように描かれているので、あえて場面が飛ばされて

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