中世ヨーロッパの架空の王国・ルナリアの王女として生まれながら、故国ルナリアは隣国のロレンディアに攻め滅ぼされため、幼女の頃から身分を隠して亡命生活を送らざるを得なかった「マルグリット」を主人公としたヨーロピアンロマン・「亡国のマルグリット」シリーズの第5巻〜第6巻
第5巻 亡国の王女・マルグリッドはクーデターの旗頭となることを決意し、ルネ王子は叔父の野望の有無を確認する
前巻の最後でルネ王子を王都へ連れ帰るよう命じられてやってきたジュリーの兄でロレンディア王国の有力貴族トパジウス家のジョエルの要請を断り、ルネは叔父アメティス伯の誘いをうけてエミルフォン城へ立ち寄ることとします。アメティス伯は、バルルの地でなにか秘密の品を仕入れている他、国王として推戴する勢力もあり、その居城では使用人が変死したり、城から毒液が川に流されているという風評があったり、ときな臭い人物です。
エミスフォン城に招待されたルネたちだったのですが、城では行動に制限されることもなく自由に過ごすことを許されます。ただ一つ立入禁止の場所があって、そこは城から橋でつながっている森なのですが、鉄格子の門には鍵がかけられ通行ができない状態になっています。
そして夜更けにこの橋を渡っていくアメティス伯の姿を見かけます。彼には毒薬をつくっているという噂もあり、ルネとレオは橋をわたって森の中にある館に潜入するのですが、そこで明かされたのは「錬金術の研究室」で・・という展開です。
ここでアメティス伯の嗜好が明らかになってきます。彼は「金」をつくることを目的としていて、金鉱石を買付けしたと疑われて激怒します。どうもこの王家は国の統治より自らの嗜好に邁進するほうが王族ばかりのようですね。アメティス伯と直に対面して彼に王位を狙う意図はないことを確認します。
一方、マルグリッドは金鉱山の秘密を暴くための作戦を練り始めます。しかし、相手はロレンディア王国で威勢をはるルビニス伯であるため、慎重にならざるをえません。ここで味方となったくるのがルビニス伯家を毛嫌いする同じく王国の支配階級のトパジウス家出身のお嬢様「ジュリー」です。彼女と情報をすべて共有することを条件に共闘体制をとることとなります。
そして彼女は、ルビニス伯がこの金鉱山をルナリアのロレンディア併合前から取得・開発していて、この利権を確保することがルナリアで王宮で騙し撃ちし併合した理由であることを知ります。そして、将来的なルナリアの毛織物の独占も。
マルグリッドはルビナス伯の専横に対抗するため、自分が旗頭となってクーデター活動を開始することを誓います。
後半ではロレンディアの王位を継ぐことを決意したルネ王子とルナリア立て直しの旗頭となることを決意したマルグリッドの間に溝ができることがおきるのですが詳細は原書のほうで。
第6巻 マルグリッドはクーデターの盟主となる
前巻の終わりで、居酒屋に乗り込んできた王国軍との諍いの中で、偶然マルグリッドの持っていた指輪の紋章を確認したルネは彼女が旧ルナリア王国の正当な後継王女であることを知ります。自分がルナリアを併合したロレンディアの王子だと知られたときの彼女の反応を考えて懊悩する姿が描かれます。
そして、マルグリッドには理由を喋らずに、ラグノーの町を離れることを告げます。彼はマルグリッドに指輪を贈り、お別れにキスをして旅立つのですが、彼女との再会はほぼ1年後のこととなります。
王都に帰還したルネは王妃の執務に同席し、施策決定のあちこちに助言を始めます。かなり的確な意見なので廷臣たちの多くは感嘆の声をあげるのですが、実質的に王宮の施策を牛耳っているルビニス泊は面白くなさそうです。
一方、マルグリッドのほうは、ルナリア立て直しのため、まずルナリオ特産の毛織物産業の創設に取り組みます。山奥の村で羊毛の買取をし、それを麓の織物業者におろして質のルナリオ産の毛織物をつくろうと考えるのですが、金鉱山も国内で毛織物を扱う業者もすべてルビニス伯家の支配下にあることを知り、本格的にルビニスから支配権を取り返す活動をすることを決意します。
ここで起きるのが金鉱山から運び出された金塊の盗難事件です。事態を重く見たルビニス伯は配下の「ユークレイス」を現地へ派遣します。彼は酷薄で知られ、ルナリア併合の際に国王と王妃や廷臣たちを虐殺した張本人ですね。
金塊を盗んだのはマグリットたちではなく、ルナリア義勇団を名乗るルナリア出身の若者たちで、彼らを仲間にひきいれることに成功します。人数を揃えることに成功したマルグリッドたちは金甲山襲撃の日を、1ヶ月後に開催される、ルナリオの人々にとって特別な存在である「月」に感謝を捧げる昇月祭の日と定めます。
そしてまず金鉱山にいるユークレイスたちに金輸送の馬車を再び襲う集団がいると誤情報を流します。この情報に基づいて鉱山にいる兵士のほとんどを輸送馬車の護送に駆り出した隙を狙って、義勇団の若者や元騎士のジャン・アルジュたちが鉱山にこもるリビナス伯の軍勢に攻めかけで追い出し、さらにそこで働いていたルナリア人の鉱夫たちも味方につけ、鉱山を制圧することに成功します。
しかし、鉱山の異常にユークレイスたちが気づくのは時間の問題で、兵士を送り込んで鉱山に攻めかかることは間違いありません。そこで、マルグリッドたちは鉱山へ援軍を送るための秘策を繰り出します。
それは「昇月祭」へ潜入し、現在、ルナリオを治めている叔父に援軍派遣を要請するというものですが、リビナス伯に協力することによってルナリオ統治を認められている彼が金鉱山の存在や援軍派遣を承知するはずがありません。
そこで、マルグリットは領主館に集まった民衆の前で王女の装束で現れ、ルナリオの後継王女であることを明らかにするのですが・・・という展開です。
レビュアーのひとこと
第5巻でアメティス伯が傾倒している「錬金術」ですが、古代ギリシアに始まり、中世アラビアでイスラム教が広がっていく過程で各地の様々な文献を吸収して発展し、さらにそれが中世ヨーロッパに伝わり、ルネサンス期に最盛期を迎えるという経過を辿っています。
この物語はおそらく中世真っ只中という感じなので、13世紀にヒ素を発見したといわれるアルベルトゥス・マグヌスのあたりかなと想像しています。アメティス伯は様々な物質から「金」を生成することを夢見て研究を続けているのですが、この当時、マグヌスがその著書「鉱物書」において自分は錬金術を行ったが、金や銀に似たものができるにすぎないとして、金生成に疑問を呈していて、仮にアメティス伯がこの書物を読んでいたら、研究の方向性や、国の統治への意欲も変わっていたかもしれません。


0 件のコメント:
コメントを投稿