フィギュアスケートの日本国内の競技人口は約5000人から7600人とアメリカの18万4000人やオランダの3万6000人には遠く及ばないもののオリンピックをはじめ多くの国際大会で輝かしい成績を残しています。
その輝かしい晴れ舞台の出発点である日本選手権の出場を目指すには、5歳ぐらいから練習を始めないといけないと言われている上に、スクールやコーチの費用や遠征費など多額の費用がかかる競技でもあります。しかし、そんな小さな頃からはじめて、多額の費用を使っても、多くの選手は大学生ぐらいで競技生活を終えざるをえない厳しい世界です。
そんな厳しいフィギュアスケートの世界で遅れてやってきた元アイスダンス出身のコーチと落ちこぼれのスケート好きの少女が二人三脚でトップを目指す物語が「メダリスト」です。
今回はその第1巻〜第3巻をレビューします。
あらすじと注目ポイント
第1巻 おちこぼれのスケーター「司」と「いのり」は二人一組でトップを目指す
構成は
score1 氷上の天才
score2 初級バッジテスト
score3 たい焼きとケーキ
となっていて、シリーズの冒頭は、本編の主人公の一人で、ヒロインのコーチ役となる「明浦路司」の競技生活引退の場面から始まります。
彼は中学生の時にフィギュアスケートを始め、フィギュアのシングルで頭角を現すことを目指していたのですが能力の差に気づき断念。その後アイススケートに転向しアイスショーのオーディションに挑戦してフィギュアスケートの世界にしがみついているという状況です。
その彼が名古屋のスケートリンクでタダで入り込もうとしている小学5年生の少女・結束いのりに出会います。彼女は、スケートリンクの管理人の老人に彼が飼っている小鳥の餌として袋いっぱいのミミズを提供することで入場料をタダにしてもらっていると言うのですが・・という滑り出しです。
この少女は少し学習障害があるらしく親からも心配され、同級生からはハブられている状態で、スケートをすることだけが支えとなっているようです。
そして、親にスケートを諦めさせるために連れてこられた「いのり」と、元パートナーのスケート・クラブのアシスタント・コーチになるよう勧誘されている「司」とが、名古屋のスケートリンクで偶然再会します。「いのり」の滑りをみた「司」は彼女の秘められた才能を見抜き、自らコーチとなることを宣言し・・という展開で、ここからオリンピックの頂点を目指す「メダリスト」の物語が始まります。
巻の中程からは、スケートをやらせてもらって喜びにあふれる「いのり」が最初の関門に挑戦します。
それはフィギュアスケートの検定試験である「バッジテスト」で、規定の級に合格したことが大会の出場資格となるテストで、初心者の「初級」からトップ選手となる「7級」まであります。
この「初級」に「いのり」は本格的にはじめて1ヶ月で挑むこととなります。
短期間で受けることとなったテストに「いのり」はガチガチに緊張して、いままでの練習で覚えたこともすっかり抜け落ちてしまうのですが、「ミミズ」によって救われ、見事、初級のバッジテストに合格し・・という展開です。「ミミズ」の意味は原書で確認してくださいね。
さらに、このバッジテストの会場で、「いのり」の目標となる「狼嵜光(かみさきひかる)」に出会います。光は他の子の父兄の陰口に落ち込む「いのり」と一緒にリンクを滑り、「いのり」を元気づけるとともに、新たな目標を与えることとなります。
後半では、初級に合格後の次のステップとして「初級」で出場できる「名港杯」に出場することとなり、その練習会場で、三河弁を喋る、自身満々な少女「三家田涼佳(ミケ)」と彼女のコーチ「那智鞠緒」に出会います。サルコウ2回転をすでにマスターしている「ミケ」は「いのり」の初めてのライバルですね。
短期間で彼女のサルコウに対抗するには、サルコウ2回転のテクニックを速習する作戦と、ベースの練習を重視する作戦と二通りあるのですが、「いのり」の選択は?というのがここの肝ですね。
司の綺麗な滑りに憧れる「いのり」はベースの練習を選択するのですが、これが二回転サルコウに負けない技に繋がって・・という展開です。
第2巻 「いのり」は名港杯で頭角現す
構成は
score4 名港杯 初級女子FS編①
score 5 名港杯 初級女子FS編②
score 6 名港杯 ノービスB女子FS編
score 7 1級バッジテスト
short program4 雪原の獣
となっていて、今巻は「初級」のバッジテスト合格後に出場する「名港杯」がメインとなります。
前巻で基礎に重点を置いた練習の成果でサルコウ2回転の習得は難しくなったのですが、代わりにスピンのレベルがあがり、より加点の高い「フライングシットスピン」を習得した「いのり」だったのですが、いざ本番前の練習では失敗の連続。
極度の緊張とリンクの氷の感触の違いで失敗が続いたのですが、これを見ていた母親の無理をさせないで、勝負させなくていい、という言葉に「いのり」は
お母さん、大丈夫、私・・大丈夫だよ
私はスケートで勝ち負けをやりたいんだ
選手としてメダリストになりたいから
とワンランク成長します。そして、その結果が切り札の「フライングシットスピン」を見事に決めただけでなく、たった1回しか練習していない大技まで・・という結果を生み出すこととなります。
中盤では、「いのり」の最初のライバル「ミケ」の演技が始まります。勝ち気にはやる彼女は自信満々に演技を始めるのですが、サルコウ2回転の連続ジャンプに失敗し、単独ジャンプ止まりになってしまったことから演技が崩れてしまいます。
結果は「いのり」が優勝、「ミケ」は第三位となるのですが、成績以外の成果は「いのり」に「ライバル兼友人」ができたことでしょうか
続く「score 6」では、天才と称される「狼嵜光」の演技の後、彼女の実質のコーチで、伝説のメダリスト「夜鷹純」に出会います。自分たちとの格の差を強調し、「いのり」と「司」を侮る夜鷹に対し、二人は闘志をむき出しにしていますね。
この出来事が影響したのか、「いのり」と「つかさ」は次の「1級」のバッジテストに合格し、そのすぐ後に京都で開催される「西日本小中学生大会」に挑戦することを決めます。
その「1級」のバッジテスト会場で西日本大会でライバルとなる京都の蓮華茶FSCの「鹿本すず」、「大和絵馬」に出会うこととなります。ここで「司」は蓮華茶FSCのアシスタントコーチ「蛇崩遊大」にジャンプのコーチ方法を聞き出そうとしたり、かなりの暴挙にでるのですが、詳しくは原書で。
最後のshort program4では、夜鷹純と狼嵜光が出会ったときのエピソードと夜鷹が彼女のコーチを引き受けることとなった経緯が描かれていますので、これも必見です。
第3巻 「いのり」はスケート靴置き忘れのピンチをどう脱する
構成は
score 8 西の強豪 前編
score 9 西の強豪 中編
score 10 西の強豪 後編
score 11 夜が嫌い
となっていて、西日本小中学校大会編の始まりです。
西日本小中学校大会の会場となる「京都宇治アイスアリーナ」へやってきた「いのり」は会場設備と出場する選手の多さに驚いていますが、ここで、前巻で一級のバッジテストを一緒に「鹿本すず」「大和絵馬」やスター広島FSCの「獅子堂星羅」、「黒澤美豹」、岡山ティナFSCの「小熊梨月」と出会います。
名港杯での優勝をバネにこの大会でも好成績をとると意気込む「いのり」だったのですが、ここで「スケート靴」を電車の中に忘れてしまうというアクシデントがおきます。10駅先の駅の忘れ物預かり所まで「司」が受け取りにでかけるのですが、果たして出場までに間に合うのか、ハラハラの展開が続きます。
そして高得点が続く大会で「いのり」は実力を発揮できるのかが、ポイントになりますね。「いのり」は本番で重心を置き方をかえてスピードを出すテクニックを習得し、フライングシットスピンからブロークンレッグへと続くプログラムを優雅に滑り切ります。
後編では、前巻で出会った「大和絵馬」の過去のエピソードと演技が描かれます。成長が早く、成長痛とそれに伴う怪我に苦労した彼女の努力が実る場面が感動的です。
後半では狼嵜光と同じクラブの「鴗鳥理鳳」が「いのり」が所属するクラブに短期的に入会してきます。彼の父親は鴗鳥慎一郎というかつてのオリンピックの銀メダリストです。理鳳は、自分と狼嵜光と夜鷹純との才能のレベルの差に打ちのめされているようですが、ここで「いのり」の強気がどう作用してくるのかは次巻以降の展開です
レビュアーのひとこと
スケートの起源は旧石器時代から始まっていてスイスやスカンディナヴィア半島やイギリスなどで鹿やマンモスなどの骨を加工した獣骨スケートが見つかっています。当時はソリやスキーなどと並んで物資を運ぶ道具として生まれてきたようです。
さらになぜオランダでスケートが盛んなのか調べてみると、12世紀頃から運河が建設され、17世紀になると都市間をつなぐ交通インフラとして整備されたのですが、これが凍結すると格好のスケートリンクとなり、貴族階級から農民階級にいたるまで幅広い層が楽しむスポーツとなったようです。
さらに、スピードを追及する農民階級に対し、優雅な滑りを追及する貴族階級と、好みも別れ、のちのスピードスケートとフィギュアスケートに分かれるもととなったともいわれています。



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