すめめもも「亡国のマルグリッド」(プリンセスコミックス)3〜4
中世ヨーロッパの架空の王国・ルナリアの王女として生まれながら、故国ルナリアは隣国のロレンディアに攻め滅ぼされため、幼女の頃から身分を隠して亡命生活を送らざるを得なかった「マルグリット」を主人公としたヨーロピアンロマン・「亡国のマルグリット」シリーズの第3巻〜第4巻
あらすじと注目ポイント
第3巻 亡国の王女・マルグリッドはルナリオへ希少鉱物探しの旅に出る
領主館から脱出する際に怪盗ジルベールと行動をともにしていたため、その一味と疑われ、マルグリッドの勤める酒場の王国兵士が乗り込んできます、首飾りすり替え事件の被疑者として連行されそうになるマルグリッドを酒場の客や店主が必死に抵抗するのですが、突如、王妃の近衛隊が国軍の捜索活動を中止させます。ここには王妃の判断が働いているのですが、真珠盗難事件の犯人追及を強行に主張するリビニス伯を理詰めでいなすあたり、有力貴族の傀儡とは思えない側面が垣間見えます。
まあ、この事件の掘り出し物といえるのは「怪盗ジルベール」の正体が酒場の店主・エステルであることと、なぜ捕まらずの怪盗稼業をやっていられるかが明らかになることですね。少しネタバレしておくと、この怪盗騒ぎは「ラグノー」市政府ぐるみだったてなところです。
巻の中程からは、真珠すり替え事件の容疑者として厳しい取り調べにあって、手先に怪我をし、金細工が不自由になった親方・プレナスの希望でルナリオへ鉱物探しに行くこととなり、親方の護衛としてルネ、レオ、マルグリットの三人が同行します。
そして鉱石や金属を扱う大きな市が開かれる「バルル」という町に立ち寄ったところ、第1巻でルネたちを襲撃したならず者に再び出会うことになります。ここで彼らの危機を救ったのはルネやレオの古くからの知り合いらしい「ジュリー」という少女。彼女はどこかの貴族のお嬢様らしいのですが、かなり剣の腕の立つ人物です。彼女はマルグリッドにかなりの警戒心を抱いているようですね。
事件のほうは、市場で取引されている鉱石になにか秘密があるらしく、ならず者たちに、親方とマルグリッドが拉致されてしまいます。二人はレオたちの突入で救出されるのですが、ここでならず者たちのバックにいるのがリビネス伯であることが明らかになります。
そしてその命令を受けたならず者たちは親方とルネやマルグリッドたちを亡き者にしようと襲ってくるのですが、その危機を救ったのはマルグリッドの育ての親・クリストフと元従者のヤンです。彼らがルナリオ行きの護衛についてもらうこととなり、その点では安心感が増すのですが・・という展開です。
第4巻 亡国の王女・マルグリッドは、故郷ルナリオの偽りの繁栄に気づく
前巻で金細工の親方の護衛としてルナリオに向かっていたルネたちだったのですが、途中のパルルの町でルネの命が狙われます。どうやら王位継承が絡んでいるようですが、ここで、王位継承権を持つルネの叔父のアメティス伯が宿屋へ訪ねてきます。訪問目的は自分の居城のエミルフォン城へ立ち寄ってほしいとのことですが、裏の目的がありそうですね。
こうした数々の不穏要素をはらみながらマルグリッドたちはルナリアへ到着します。ルナリアは想像に反して穏やかで建物や宿屋も増えていて荒れ果てた風情はありません。どうやらこの地の特産である毛織物の取引が盛んで町も賑やかになっているようですね。
ただ、毛織物をつくっているおばさんの納入の手伝いをしているうちに、毛織物の質が悪化している上に買取値段も他の産地に比べ安価に設定されていることがわかってきます。どうやらロレンディアの毛織物業者がよその地で羊毛を仕入れて原料供給して、ルナリア産だとして高価で売り出しているようですね。マルグリッドはその業者のところへ乗り込むのですが、そこにロレンディア王妃襲撃事件の犯人で、元ルナリア王国の騎士「ジャン・アルジャン」が雇われていて・・・という展開です。
実は悪徳商人の手先と思われていた男は、旧ルナリア王国で古くから商売をしてきた商人で、あくどいロレンディア国の商人のやり口を探ろうと潜入調査をしていたことがわかります。この動きが何に結びついていくかは後巻で明らかのなっていきます。
一方、王宮では王妃襲撃事件をきっかけに次期国王問題が再燃しています。王国統治に興味のなさそうなルネ王子に代わり、前国王の弟アメティス伯の襲封の案が持ち上がっているようです。
この動きに呼応して王妃襲撃事件の犯人捜査が本格的に始まるとともに、マルグリットたちのルナリア入にあわせてリビネス伯の勢力が動き始めます。
マルグリットたちは市場で希少鉱物を売っていた少年の導きで坑道に忍び込むのですが、そこでみつけたのは大量の金塊で・・という展開です。この潜入では少年の命という犠牲が出てしまうのですが、これをきっかけに鉱山経営の首魁探しと鉱山の奪取の計画がスターとしていきます。
レビュアーのひとこと
前巻の後半と今巻の前半でおきたルナリオの真珠の首飾りすり替え・盗難事件ですが、首飾りのまつわる事件としては、マリーアントワネット王妃の首飾り事件が有名ですね。
この事件はフランスの旧王朝であるヴァロア朝の末裔を称する「ラ・モット伯爵夫人」が王室御用達のベーマー宝石商から160万リーブルの首飾り(この首飾りはルイ15世の寵姫ル・バリュー夫人のために製作されたものだったのですが、ルイ15世が死去し、契約が立ち消えになったのですが、あまりの高額であったため他へ売ることもできず、宝石商も持て余していた代物です)をロアン枢機卿に買わせます。ロアン枢機卿は大変な浪費家でマリー・アントワネットには嫌われていたのですが、なんとかして取り入って登用され、最終的には宰相となることを目論んでいた人物です。ラ・モット伯爵夫人はこれにつけこんで、ロアン枢機卿に買わせた首飾りをマリー・アントワネットに献上するといって騙し取った事件です。
マリー・アントワネット王妃はこの事件に関しては名前を使われた被害者だったのですが、アントワネットとラ・モットが愛人関係にあったとかのデマも流布した上に、この事件の黒幕はアントワネットであったと風評も飛び交い、事件後、ルイ16世がロアン枢機卿を罷免・左遷したことへの批判とともに、フランス革命の引き金の一つとなったといわれる事件です。
そうしてみると、首飾りすり替え・盗難事件は、自らの冷酷な「氷の王妃」という悪評を高め、市民の反感を買うだけだと政治判断して、これ以後の捜査を中止させたロレンディア王妃の判断は卓見であったといえるかもしれません。


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