落語の一門・阿良川流の真打ち昇進を決める審査会で、審査委員長を勤める大御所から「破門」を言い渡され、それをきっかけに落語を辞めた父親の仇をうつため、その娘「桜咲朱音(おうさきあかね)」が、大看板の落語家となることを決心し、女性としては珍しい落語家の階段を登っていく噺家版サクセスストーリーとなる『末永裕樹・馬上鷹将「あかね噺」(ジャンプコミックス)』シリーズの第11弾。
前巻で阿良川泰全からの「二ツ目」推薦をかちとるため、今昔亭ちょう朝の協力を得ることに成功した「あかね」はいよいよ正念場となる、「今昔亭あさ顔」のお披露目会の高座に挑んでいくのが本巻です。
あらすじと注目ポイント
第11巻の構成は
第九十席 この風は心地いい
第九十一席 用事があるんで
第九十二席 十八番
第九十三席 私の言葉
第九十四席 事件だよ
第九十五席 久しぶり
第九十六席 たかが落語だ
第九十七席 微笑ましい
第九十八席 芸と仁
となっていて、「今昔亭ちょう朝」に稽古をつけてもらう代わりに、ちょう朝の弟子・朝がおの二ツ目披露会の練習会を札止めにするよう課題をだされた「あかね」と「からし」だったのですが、「あかね」の狸のコスプレと「からし」のマーケティングで練習会は盛況になっています。そのせいもあって「朝がお」から「あかね」に二ツ目披露会の開口一番の前座の依頼が入ります。その高座へあがるのは「ちょう朝」のほかは「阿良川泰全」です。二人の師匠との顔合わせで、ちょう朝は泰全に「あかね」の二ツ目昇進の推薦をしてくれるよう頼むのですが、彼は阿良川一門の四天王になってから誰にも二ツ目の推薦を出していないという難関です。さらに泰全の師匠格で四天王の一人・阿良川全生からの邪魔も入ります。
それをクリアするために、ちょう朝が「あかね」に稽古をつけるのは「たぬ賽」です。彼はこの噺が「あかね」の十八番になると断言するのですが・・という展開なのですが、「ちょう朝」から自分の実力の半分も出せていない、と指摘が入ります。その原因は「あかね」の芸が「足りすぎているから」。
不足しているなら修練をふやせばよいのでしょうが、「足りすぎ」の場合は何かを引くしかない。そこでちょい朝は披露目会までの2ヶ月間、「江戸弁」で高座にあがることを禁じます。落語で使う言葉や節回しの中心ともいえる「江戸弁」を禁じられて、「あかね」はどう「たぬ賽」を演じるか、てのがこのタームの肝ですね。さらに、この披露目会には、東京の落語家のほとんどが所属する「落語連盟」とそのアウトサイダー的な独自路線を進む「阿良川一門」とが久々に同席するという訳ありの会でもあるようです。
しかし、ここで阿良川泰全が高座に遅れるとの連絡が入ります。となると、「あかね」の高座を見ての「二ツ目」の推薦はなし、ということに。高座におくれるために近くの公園で暇をつぶす泰全の前に現れたのは、「あかね」の父の「阿良川志ん太」で、今はコンクリート会社に勤務している「桜崎徹」です。彼は泰全に、自分が破門されたときの経緯を語り合うのですが・・。ということで、「志ん太」たちの破門騒動の隠された一面が明らかになります。
そして、披露目会は始まる中、「あかね」は父と泰全、そして落語協会の大物たちの前でどんな高座をかけるのか・・といった展開です。
レビュアーのひとこと
今巻で「あかね」が高座にかけるのが「たぬ賽」という動物噺なのですが、落語には狸以外にも非常に多くの「動物」が登場します。狸の噺では、上方の「豆狸(まめだ)」「狸茶屋」、狐は「王子の狐」、上方の「天神山」「狐芝居」「吉野狐」、馬は「馬大家」「馬の田楽」、猿は「猿後家」「写経猿」「猿の夢」、牛は「牛ほめ」、犬なら「元犬」など、このほかカラスや猫、魚類でいえば「目黒のサンマ」のサンマなど枚挙に暇がありません。。
落語が絶頂期を迎えていた江戸時代や明治時代は、現代より人が自然に近く、動物も身近にいたことが影響しているのかもしれません。その理屈でいけば、自然と人の距離が開いている現代は、「動物噺」にとっては一種の危機にあるのかもしれませんね。
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