落語の一門・阿良川流の真打ち昇進を決める審査会で、審査委員長を勤める大御所から「破門」を言い渡され、それをきっかけに落語を辞めた父親の仇をうつため、その娘「桜咲朱音(おうさきあかね)」が、大看板の落語家となることを決心し、女性としては珍しい落語家の階段を登っていく噺家版サクセスストーリーとなる『末永裕樹・馬上鷹将「あかね噺」(ジャンプコミックス)』シリーズの第12弾。
前巻で「今昔亭ちょう朝」に稽古をつけてもらい、「あさ顔」の二ツ目披露会の前座に出演した「あかね」なのですが、この高座で二ツ目昇進の推薦を阿良川泰全からかち取れるのかが試されます。
あらすじと注目ポイント
第12巻の構成は
第九十九席 もう一つの効 果
第百席 落語ヴァース
第百一席 だからだよ
第百二席 怒髪天
第百三席 緊緩
第百四席 あの日の約束
第百五席 口出し無用
第百六席 今日の主役
第百七席 昔の名
となっていて、「今昔亭あさ顔」の二ツ目披露で、快調に「たぬ賽」の演目をかける「あかね」の姿から始まります。「あかね」の芸にお客さんがついてきていて、「あかね」の噺は「たぬ賽」から「まんじゅうこわい」「狸札」と転がっていくのですが、調子に乗りすぎて持ち時間をオーバーして、前座の役割を逸脱する怖れがでてきています。
それを元の噺に戻してくれたのは、やはり、「あかね」がその背中を見て育った父・志ん太で・・という展開です。
そして、「あかね」の次を勤めるのが、阿良川四天王の一人で、「あかね」が二ツ目昇進の推薦をもらいたがっている阿良川泰全です。「怒髪天」という異名をとる泰全は、噺をしながら師匠・全生のもとで理不尽な要求を、「ちょう朝」「志ん太」「泰全」の三人で耐えてきた修行生活を振り返ります。
そして、師匠・全生の「あかね」への邪魔立てを意識しながら、泰全の出した「二ツ目昇進の推薦」の行方は・・というところが前半から中盤にかけての肝となります。
最後のところでは、落語協会の会長・柏家三禄と「あかね」の師匠・阿良川志ぐまがひさびさに酒を酌み交わしているところが描かれます。
阿良川一門はもともと柏家が本家だったようなのですが、いまのように落語協会と溝を深めてしまったのは、阿良川一門の重鎮・阿良川一生と、先代の志ぐまとの因縁が関係しているようです。さらに、これからの展開に重要なキーワードとなる「志ぐまの芸」という言葉もでてくるのですが、詳しい展開は次巻以降となります。
レビュアーのひとこと
「あかね」が属する「阿良川一門」なのですが、実際の落語界には実在していません。レビュアーは、古典落語に通じ、それを現代的な評価を加えたり、「笑点」などのメディア活動も盛んに行ったほか、型破りの政治家としても活躍した、故・立川談志師匠の立川流がモデルとなっているのではないか、と推測しています。落語協会とは異なった「真打ち」ルールをも独立系の落語流派といっていいですね。
立川一門には真打ちの「立川志の輔」「立川談春」「立川志らく」など個性あふれる噺家を生み出している感じです。
一方、「あかね」の師匠・阿良川志ぐまや柏家三禄が属していた(いる)「柏家」のモデルは立川談志が二位ツ目の時は「柳家小ゑん」を名乗っていたことを考えると、江戸から続く「名跡」の中でも「林家」ではなく、落語協会で最大派閥である「柳家」ではないかと思われます。「柳家」も五代目小さんといった名手をはじめとして、古典落語から新作・創作まで幅広い噺家をかかえる大流派です。
0 件のコメント:
コメントを投稿