落語の一門・阿良川流の真打ち昇進を決める審査会で、審査委員長を勤める大御所から「破門」を言い渡され、それをきっかけに落語を辞めた父親の仇をうつため、その娘「桜咲朱音(おうさきあかね)」が、大看板の落語家となることを決心し、女性としては珍しい落語家の階段を登っていく噺家版サクセスストーリーとなる『末永裕樹・馬上鷹将「あかね噺」(ジャンプコミックス)』シリーズの第14弾〜第15弾。
前巻までで、「あかね」は二ツ目に昇進を決め、さらに兄弟子の「阿良川まいける」が真打ち昇進を認められたのですが、いよいよ本巻から、父・阿良川志ん太が破門された阿良川一門の秘密へと迫っていきます。
あらすじと注目ポイント
第14巻 二ツ目昇進を控え、「あかね」は師匠の「引き算の芸」を学ぶ
第14巻の構成は
第百十七席 様になったな
第百十八席 任せたぞ
第百十九席 一端の落語家
第百二十席 歩む道
第百二十一席 師匠のおかげ
第百二十二席 志ぐま一門らしさ
第百二十三席 志ぐまの高座
第百二十四席 想像の余地
第百二十五席 ”引き算”の芸
となっていて、冒頭は「まいける」の真打ち昇進を祝っての志ぐま一門あげての祝賀会から始まります。真打ち昇進の基準が厳しく、また「志ん太」の破門騒動以来真打ちがでていなかった志ぐま一門ですので、その喜びようは半端ないですね。
そして、「まいける」の昇進を契機に、志ん太破門のもともとの原因である、阿良川一生と阿良川志ぐまの確執や阿良川一門の創設の理由の発端らしき「志ぐまの芸」という名前のない演目を若手真打ちのホープ。柏家禄郎が調べ始めめるのですが、これにまつわる展開は次巻以降で明らかになっていきます。
「あかね」のほうは「二ツ目」昇進披露に備えて、志ぐま師匠から渋谷で開かれる独演会の前座を任されます。この独演会は志ぐま支障が30年間にわたって開催しているものなのですが、ここで「あかね」に志ぐま師匠が「あかね」に伝えたいものは・・という展開です。師匠の期待を背負った「あかね」の高座と、「”泣き”の志ぐま」と呼ばれた人情噺の名手・阿良川志ぐまの高座の様子は原書のほうで。
第15巻 「あかね」は未完の「志ぐまの芸」を教わるが、まだ霧の中
第15巻の構成は
第百二十六席 打ち上げ
第百二十七席 ムチャブリ
第百二十八席 いよいよ
第百二十九席 落語ですか?
第百三十席 ぐちゃぐちゃ
第百三十一席 解体
第百三十二席 思い出す
第百三十三席 明日がある
第百三十四席 何でもある
となっていて冒頭は、志ぐま師匠の独演会の打ち上げの場面から始まります。この席で「あかね」は師匠に「芝浜」の噺の稽古をつけてくれ、と依頼するのですが、ここで師匠の口から、父・志ん太の破門の原因が「先代志ぐまの”芝浜”(志ぐまの芸)」であることと志ぐまと一生の確執であるらしいことを教わります。それを聞いた「あかね」は「志ぐまの芸」を教わることを決意します。そして、師匠が語る「志ぐまの芸」は未完であることはもとより、「コレ、落語ですか?と「あかね」が疑問をもつような噺で・・という展開です。ここではまだ「志ぐまの芸」の本質は語られないので気長にいきましょう。
さらに、師匠からは「三つの噺を十八番と呼べる迄極めろ」と教えられるのですが、その意味を伝えるまでに師匠は倒れてしまい、さらには喉頭がんで声を失ってしまう危機に陥ります。
こうなると、一門を率いる噺家が真打ち昇進を決めたばかりの「まいける」だけとなるのですが、阿良川一門が下した決断は、「志ぐま」一門を解散させ、二ツ目以下の弟子を一門の師匠にバラバラに預けるというもの。そして、「あかね」を預かることとなったのは、父を破門に追い込んだ張本人の「阿良川一生」です。
この対応に納得のいかない「あかね」ほかの弟子達なのですが、病室に訪れた「蘭彩歌うらら」や阿良川一生や「あかね」たちを前に
志ぐま君はどう思うかしら
片や自分の所為で弟子たちが無為に時間を浪費する
方や自分が不在でも弟子たちの指導体制を整える
ねぇ、どっち。”気働き”が出来ているのは?
と問いかけます。「あかね」はなおも納得できないと食い下がります。それに対し、うららから語られ始めたのは、「志ぐま」と「一生」がまだ若かった1964年頃の新宿。二人の様子と先代の阿良川志ぐま(当時は柏家生禄)との出会いと弟子入りの経緯が語られます。
レビュアーのひとこと
「志ぐまの芸」の骨格となるのは落語の「芝浜」は、大酒飲みで怠け者の魚屋が、朝方の芝の浜で大金の入った財布を拾って仲間と大酒を飲むのですが、翌朝、女房からそれは夢だと告げられ改心。それから死に物狂いで働き、三年後に表通りに店を構えることができたのだが、そこで女房から三年前に財布を拾ったのは真実だったと告げられるのだが、女房の嘘に感謝する、という人情噺です。
この噺は、三遊亭圓朝の寄席の客席から三つの題をもらい、それを絡めて噺を即席でつくる「三題噺」がもとで、その日のテーマが「酔漢」「財布」「芝浜」だったという説が有力とされています。ただ、圓朝以前に同様の噺があるとか、結末が違っていた、という疑問も出されています。
「芝浜」には二代目快楽亭ブラックや三遊亭白鳥、立川談笑のこれを基にした新作落語もつくられているので、初代志ぐまの「志ぐまの芸「「志ぐまの芝浜」も。人情噺「芝浜」の改作、新作なのかもしれませんが、それにしては仕掛けが大掛かりな気がします。
0 件のコメント:
コメントを投稿