落語の一門・阿良川流の真打ち昇進を決める審査会で、審査委員長を勤める大御所から「破門」を言い渡され、それをきっかけに落語を辞めた父親の仇をうつため、その娘「桜咲朱音(おうさきあかね)」が、大看板の落語家となることを決心し、女性としては珍しい落語家の階段を登っていく噺家版サクセスストーリーとなる『末永裕樹・馬上鷹将「あかね噺」(ジャンプコミックス)』シリーズの第21弾。
前巻で阿良川一生と椿家正明の二重の枷を背負いながら、ライバルの「阿良川ひかる」と「三明亭からし」を破って優勝した「あかね」が、「死神」の稽古の許可を椿家正明にもらい、さらに阿良川一生から新しい課題を課せられるのが本巻です。
あらすじと注目ポイント
第21巻の構成は
第百七十八席 濾し澄ます
第百七十九席 っつしゃあ!!
第百八十席 測りたかった
第百八十一席 特需
第百八十二席 労い
第百八十三席 手札と時間
第百八十四席 集客力
第百八十五席 寒さ
第百八十六席 己れ派
第百八十七席 待たせた分
となっていて、冒頭では、瑞雲大賞での「あかね」の「吝い屋」の演目が再現されています。
椿家正明は
作品性を高めるとは
濾し澄ますこと
己すら俯瞰し、技芸を研ぎ澄ます
時に表現者としての我すら捨て去り、噺に徹する
雑味を抜く全ては、噺の良さを引き出す為
と評論した後に、彼女の噺を「言に違わぬですか」「・・・貴女自身も極意を掴んだようですね」と評価しています。「あかね」が作品派として脱皮した瞬間ですね。
大会も終わり降壇したところで、緊張の糸がきれたのか倒れてしまった「あかね」だったのですが、椿家正明から「死神」の稽古をつけてもらえることになります。
そして、会場を出た所で待ち構えていたのは、阿良川ひかると三明亭からしたちで・・ということで、ここでライバルたちと「あかね」の帰国歓迎会と祝勝会と残念会が開催されるのですが、詳細は原書のほうでどうぞ。
中盤では、瑞雲大賞に優勝し、一躍人気の出た「あかね」の姿が描かれます。
居酒屋「海」で開催した凱旋独演会や池袋の寄席での独演会もほぼ札止め状態です。
そして、優勝の報告を阿良川一生に報告に行くのですが、そこで待っていたのは、(一応)兄弟子の阿良川魁生です。彼から、高級ブティックに連れて行かれて着替えさせられた後、上階のレストランに連れて行かれての、阿良川一生、阿良川魁生、阿良川あかね、三人でのフルコース料理のお祝いの会が開かれます。
そして、一生から「あかね」に出された新たな課題は・・という展開です。
レビュアーのひとこと
今回、噺に没入して「作品派」となることができた「あかね」なのですが、これは演劇でいうところの「憑依型」なのかな、と思いました。
「憑依型」とは役に没入し、自分を変える、あるいは自分を消し去り、役やキャラクターを自分の「乗り移らせる」ように表現するスタイルで、松田優作さんやロバート・デ・ニーロ、阿部寛さんや菅田将暉さん、松山ケンイチさんなどが代表格としてあげられています。
一方同じような役への関わり方として、憑依型の対極にあると思われるのが、自分と役とを切り離し、自分の個性を出しながら役を冷静にコントロールして演じる「操縦型(技術型・分離型)です。
「あかね噺」のキャラクターでいえば、阿良川魁生がこれにあたるのでしょうか。
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